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甲陽軍鑑 / 品第十二

大塲北條あたりの百姓どもに物をかし給へば後は伊豆半國の侍百姓共、宗雲公へ出入を仕り、物をかり候故、朔日·十五日の禮に參り、其間にも切々參る者にはかし錢を指置き給ふに付て、我ましに宗雲公の御屋敷のあたりに家を作り、皆被官に成り、右の六人のあらき·山中·ため·あら川·ありたけ·大道寺も宗雲の被官に成、此衆を首として宗雲公共に七手に作り、伊豆一國をおさめ給ひ、たへて久敷き北條をつがんとて、三島の明神へ願を立て給ふ、

新字:大塲北条あたりの百姓どもに物をかし給へば後は伊豆半国の侍百姓共、宗雲公へ出入を仕り、物をかり候故、朔日·十五日の礼に参り、其間にも切々参る者にはかし銭を指置き給ふに付て、我ましに宗雲公の御屋敷のあたりに家を作り、皆被官に成り、右の六人のあらき·山中·ため·あら川·ありたけ·大道寺も宗雲の被官に成、此衆を首として宗雲公共に七手に作り、伊豆一国をおさめ給ひ、たへて久敷き北条をつがんとて、三島の明神へ願を立て給ふ、

書き下し

大塲北条あたりの百姓どもに物をかし給へば後は伊豆半国の侍百姓共、宗雲公へ出入を仕り、物をかり候故、朔日·十五日の礼に参り、其間にも切々参る者にはかし銭を指置き給ふに付て、我ましに宗雲公の御屋敷のあたりに家を作り、皆被官に成り、右の六人のあらき·山中·ため·あら川·ありたけ·大道寺も宗雲の被官に成、此衆を首として宗雲公共に七手に作り、伊豆一国をおさめ給ひ、たへて久敷き北条をつがんとて、三島の明神へ願を立て給ふ、

現代語訳

大場・北条あたりの百姓どもに物を貸されたところ、後には伊豆半国の侍・百姓どもが宗雲公のもとへ出入りし、物を借りたので、朔日・十五日の礼に参った。その間にもしきりに参る者には貸した銭をそのままにしておかれたので、我先にと宗雲公の御屋敷のあたりに家を作り、皆被官となった。先の六人のあらき・山中・ため・あら川・ありたけ・大道寺も宗雲の被官となり、この衆を頭として宗雲公ともに七手に編成し、伊豆一国を治められた。そして絶えて久しい北条の名跡を継ごうと、三島明神へ願を立てられた。

解説

宗雲は刀ではなく貸し付けで人を集めた。物を貸し、よく通う者には返済を求めず、やがて人々は自ら屋敷の周りに家を建てて被官になる。同志の六人も被官となり、七手の組織が伊豆一国を治める。恩を先に施して人を引き寄せ、そのうえで組織の形に整える手順が見える。信頼は命令より先に、日々の小さな施しから積み上がるという話である。力で従わせるより、得をさせて寄せるほうが根が深い。

この章句が説くこと

宗雲恩家臣人望伊豆組織

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