導師導古典を学びたいすべての人に

講孟余話 / 盡心上 第十八章

人之有德慧術知、恒存乎疢疾、獨孤臣孽子、其操心也危、其慮患也深、故達、此章、告子下篇第十五章ト合セ考フヘシ、疢疾ハ即チ苦其心志、労其筋骨、餓其体膚、空乏其身、行拂乱其所爲ノ謂ナリ、德慧術知ハ動心忍性曾益其所不能、及ヒ能改、後作、後喩ノ處也、其操心也危、其慮患也深、故達、危深達ノ三字服膺シテ其味ヲ覚フヘシ、此章獨リ孤子孽子読テ益々勵ムコトヲ知ルヘキノミナラス、寵臣愛子読テ益々愼ムコトヲ知ルヘシ

新字:人之有徳慧術知、恒存乎疢疾、独孤臣孽子、其操心也危、其慮患也深、故達、此章、告子下篇第十五章ト合セ考フヘシ、疢疾ハ即チ苦其心志、労其筋骨、餓其体膚、空乏其身、行払乱其所為ノ謂ナリ、徳慧術知ハ動心忍性曽益其所不能、及ヒ能改、後作、後喩ノ処也、其操心也危、其慮患也深、故達、危深達ノ三字服膺シテ其味ヲ覚フヘシ、此章独リ孤子孽子読テ益々励ムコトヲ知ルヘキノミナラス、寵臣愛子読テ益々慎ムコトヲ知ルヘシ

書き下し

「人の徳慧術知ある者は、恒に疢疾に存す。独り孤臣孽子は、其の心を操るや危く、其の患を慮るや深し、故に達す」。此の章、告子下篇第十五章と合せ考ふべし。疢疾は即ち「其の心志を苦しめ、其の筋骨を労し、其の体膚を餓ゑしめ、其の身を空乏にし、行ひ其の為す所を払乱す」の謂なり。徳慧術知は「心を動かし性を忍び、其の能くせざる所を曾益す」、及び「能く改め」「後に作る」「後に喩る」の処なり。「其の心を操るや危く、其の患を慮るや深し、故に達す」、危・深・達の三字、服膺して其の味を覚ゆべし。此の章独り孤臣孽子読みて益々励むことを知るべきのみならず、寵臣愛子読みて益々慎むことを知るべし。

現代語訳

「人が徳と知恵、技と見識を備えているのは、いつも苦難の中にあったからである。ただ孤立した臣や、日陰の子だけが、心を保つのに常に危うさを覚え、災いを深く考えるので、物事に通達する」。この章は告子下篇第十五章と合わせて考えるとよい。苦難とは「その心を苦しめ、筋骨を疲れさせ、体を飢えさせ、身を窮乏させ、行おうとすることをことごとく狂わせる」ことである。徳と知恵、技と見識とは、「心を揺さぶり本性を耐え忍ばせて、できなかったことをできるようにさせる」、また「改めることができ」「後に奮い立ち」「後に悟る」というところである。「心を保つのに危うさを覚え、災いを深く考えるから、通達する」。危・深・達の三字は、胸に刻んでその味わいを覚えるべきだ。この章は、孤立した臣や日陰の子が読んでいっそう励むべきであるだけでなく、主君に寵愛される臣や親に愛される子が読んで、いっそう慎むべきものである。

解説

孟子は、人の知恵や力は苦難の中で磨かれ、主君に疎まれた臣や身分の低い母から生まれた子こそが、緊張と深い思慮によって物事に通じると説きます。松陰はこれを、有名な「天の将に大任を是の人に降さんとするや」の章と重ね、「危・深・達」の三字を心に刻めと言います。獄中にあった松陰には、自分のこととして響いた章でしょう。そのうえで、恵まれた立場の者こそ読んで慎めと付け加えるところに、逆境だけを美化しない冷静さがあります。

この章句が説くこと

逆境苦難思慮成長慎み

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る