言志四録 / 言志録 第五十九条 患難は天の吾が才を老す
凡所遭患難變故。屈辱讒謗。拂逆之事。皆天之所以老吾才。莫非砥礪切磋之地。君子當慮所以處之。欲徒免之不可。
新字:凡所遭患難変故。屈辱讒謗。払逆之事。皆天之所以老吾才。莫非砥礪切磋之地。君子当慮所以処之。欲徒免之不可。
書き下し
凡そ遭ふ所の患難変故、屈辱讒謗、払逆の事は、皆天の吾が才を老せしむる所以にして、砥礪切磋の地に非ざるは莫し。君子は当に之に処する所以を慮るべし。徒に之を免れんと欲するは不可なり。
現代語訳
およそ出会う苦難や災い、思いがけない変事、屈辱や中傷、思いどおりにならない事は、みな天が自分の才能を練り上げて熟させるためのものであり、自分を磨き鍛える場でないものはない。君子はそれにどう対処するかを考えるべきである。ただそれを逃れようとするのはよくない。
解説
逆境の受け止め方を説いた一条です。苦難、変事、屈辱、中傷、思いどおりにならない事。一斎はそれらをすべて、天が自分の才能を「老せしむる」、つまり練り上げて円熟させるための機会だと見ます。「砥礪」は砥石で刃を研ぐこと、「切磋」は骨や角を切り磨くことで、詩経に由来する「切磋琢磨」の語です。孟子の「天の将に大任を是の人に降さんとするや、必ず先づ其の心志を苦しむ」とも響き合います。大事なのは最後の二句で、逆境をただ避けようとするのではなく、どう処するかを考えよ、と言っています。逃げることを一切許さないのではなく、向き合い方を工夫せよという言葉として、苦しい局面にある人が自分の置かれた状況を見直す手がかりになるでしょう。
この章句が説くこと
逆境試練切磋琢磨成長忍耐
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