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告志篇 / 下からの意見を遠慮なく申し出る

直言極諫は勿論、凡そ下より上え對し存寄等申立候は、人の至難と存候所、相續已來面々篤存入上言等いたしくれ候者も不少、大慶不過之存候、然るに、近來存意等申立者追ゝ減少いたし、何共心細き事に有之候、忠臣良士は聖賢の世にてすら、國を憂君を愛し候事と承及候、況や今士民の風俗もいまだ改らず、國家の武備もいまだ整はず、下々より見候はゞ、可申事何程歟可有之候へども、上書等日致減少候段不審の至に候、察する所、面々精力を盡し折角申聞候ても、遂一には用ゐも不致候故力を落し、何程申聞候ても無益と存、見合居候事にも可有之哉、我等乍不及言路をも開き、衆言をも承度存候上は、面々存意申出候毎々熟慮いたし、尤なる儀は幾重にも取用ゐ申度存候へども、下より見候ては、殊之外手輕き樣致了簡申聞候事も、於我等存之外差支多くなしがたき事抔有之、又は一方に宜候へば一方に惡しき事も有之、乍氣之毒折角之存意を空しく致候類も不少、其外各は折角尤の儀を申聞候ても、我等の愚昧にて呑込違候事も如何程歟可有之候へども、此上各可申聞事をも申聞ざる樣成行候はゞ、國家の不幸此上ある間敷候間、存意之趣は必無伏藏申聞候樣にと、くれ〱も存候、

新字:直言極諫は勿論、凡そ下より上え対し存寄等申立候は、人の至難と存候所、相続已来面々篤存入上言等いたしくれ候者も不少、大慶不過之存候、然るに、近来存意等申立者追ゝ減少いたし、何共心細き事に有之候、忠臣良士は聖賢の世にてすら、国を憂君を愛し候事と承及候、況や今士民の風俗もいまだ改らず、国家の武備もいまだ整はず、下々より見候はゞ、可申事何程歟可有之候へども、上書等日致減少候段不審の至に候、察する所、面々精力を尽し折角申聞候ても、遂一には用ゐも不致候故力を落し、何程申聞候ても無益と存、見合居候事にも可有之哉、我等乍不及言路をも開き、衆言をも承度存候上は、面々存意申出候毎々熟慮いたし、尤なる儀は幾重にも取用ゐ申度存候へども、下より見候ては、殊之外手軽き様致了簡申聞候事も、於我等存之外差支多くなしがたき事抔有之、又は一方に宜候へば一方に悪しき事も有之、乍気之毒折角之存意を空しく致候類も不少、其外各は折角尤の儀を申聞候ても、我等の愚昧にて呑込違候事も如何程歟可有之候へども、此上各可申聞事をも申聞ざる様成行候はゞ、国家の不幸此上ある間敷候間、存意之趣は必無伏蔵申聞候様にと、くれ〱も存候、

書き下し

直言極諫は勿論、凡そ下より上え對し存寄等申立候は、人の至難と存候所、相續已來面々篤存入上言等いたしくれ候者も不少、大慶不過之存候、然るに、近來存意等申立者追ゝ減少いたし、何共心細き事に有之候、忠臣良士は聖賢の世にてすら、國を憂君を愛し候事と承及候、況や今士民の風俗もいまだ改らず、國家の武備もいまだ整はず、下々より見候はゞ、可申事何程歟可有之候へども、上書等日致減少候段不審の至に候、察する所、面々精力を盡し折角申聞候ても、遂一には用ゐも不致候故力を落し、何程申聞候ても無益と存、見合居候事にも可有之哉、我等乍不及言路をも開き、衆言をも承度存候上は、面々存意申出候毎々熟慮いたし、尤なる儀は幾重にも取用ゐ申度存候へども、下より見候ては、殊之外手輕き樣致了簡申聞候事も、於我等存之外差支多くなしがたき事抔有之、又は一方に宜候へば一方に惡しき事も有之、乍氣之毒折角之存意を空しく致候類も不少、其外各は折角尤の儀を申聞候ても、我等の愚昧にて呑込違候事も如何程歟可有之候へども、此上各可申聞事をも申聞ざる樣成行候はゞ、國家の不幸此上ある間敷候間、存意之趣は必無伏藏申聞候樣にと、くれ〱も存候、

現代語訳

直言や極諫はもちろん、およそ下から上に対して考えを申し立てることは、人にとって至難のことと思いますが、跡を継いで以来、各自が心を込めて上言などをしてくれた者も少なくなく、大きな喜びです。ところが近ごろは、考えを申し立てる者が次第に減って、何とも心細いことです。忠臣良士は聖賢の世でさえ、国を憂い君を愛したと聞いています。まして今は士民の風俗もまだ改まらず、国家の武備もまだ整わず、下から見れば申すべきことがいくらでもあるはずなのに、上書などが日々減っていることは不審の至りです。察するに、各自が精力を尽くして申し聞かせても、結局は用いられないので力を落とし、いくら申し聞かせても無益と思って見合わせているのでしょう。私は不肖ながら言路も開き、多くの意見も聞きたいと思う以上、各自が考えを申し出るたびによくよく考え、もっともなことは幾重にも取り用いたいと思いますが、下から見ると非常に手軽に考えて申し聞かせたことでも、私にとっては思いのほか差し支えが多く行いがたいことや、一方に良ければ一方に悪いことなどもあり、気の毒ながらせっかくの考えを空しくしてしまう類も少なくありません。そのほか、各自がせっかくもっともなことを申し聞かせても、私の愚昧のために呑み込み違いをしたこともどれほどかあるでしょうが、この上、各自が申すべきことを申さないという成り行きになれば、国家の不幸はこれ以上ありませんので、考えのあるところは必ず隠さず申し聞かせるように、くれぐれも思います。

解説

斉昭は、下から上への意見は難しいことだと認めたうえで、近ごろ申し出が減っていることを案じ、採用できない場合があってもそれは事情によるものだと説明し、遠慮なく申し出るよう求めています。現代の職場でも、提案しても反映されないと感じた部下は、やがて黙るようになります。管理職は、採用できない提案にも理由を丁寧に返し、判断の事情を共有することで、意見を出す意欲を保てます。声が減ることを組織の危険信号と見る視点が大切です。

この章句が説くこと

告志篇徳川斉昭言路を開く直言提案制度採用しない理由の説明

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