国語 / 楚語下
王曰:「芻豢幾何?」對曰:「遠不過三月,近不過浹日。」王曰:「祀不可以已乎?」對曰:「祀所以昭孝息民、撫國家、定百姓也,不可以已。夫民氣縱則底,底則滯,滯久而不振,生乃不殖。其用不從,其生不殖,不可以封。是以古者先王日祭、月享、時類、歲祀。諸侯舍日,卿、大夫舍月,士、庶人舍時。天子遍祀群神品物,諸侯祀天地、三辰及其土之山川,卿、大夫祀其禮,士、庶人不過其祖。日月會于龍𧱓,土氣含收,天明昌作,百嘉備舍,群神頻行。國於是乎蒸嘗,家於是乎嘗祀,百姓夫婦擇其令辰,奉其犧牲,敬其粢盛,絜其糞除,慎其采服,禋其酒醴,帥其子姓,從其時享,虔其宗祝,道其順辭,以昭祀其先祖,肅肅濟濟,如或臨之。於是乎合其州鄉朋友婚姻,比爾兄弟親戚。於是乎弭其百苛,殄其讒慝,合其嘉好,結其親暱,億其上下,以申固其姓。上所以教民虔也,下所以昭事上也。天子禘郊之事,必自射其牲,王后必自舂其粢;諸侯宗廟之事,必自射牛、刲羊、擊豕,夫人必自舂其盛。況其下之人,其誰敢不戰戰兢兢,以事百神!天子親舂禘郊之盛,王后親繰其服,自公以下至於庶人,其誰敢不齊肅恭敬致力於神!民所以攝固者也,若之何其舍之也!」
新字:王曰:「芻豢幾何?」対曰:「遠不過三月,近不過浹日。」王曰:「祀不可以已乎?」対曰:「祀所以昭孝息民、撫国家、定百姓也,不可以已。夫民気縦則底,底則滞,滞久而不振,生乃不殖。其用不従,其生不殖,不可以封。是以古者先王日祭、月享、時類、歳祀。諸侯舎日,卿、大夫舎月,士、庶人舎時。天子遍祀群神品物,諸侯祀天地、三辰及其土之山川,卿、大夫祀其礼,士、庶人不過其祖。日月会于竜𧱓,土気含収,天明昌作,百嘉備舎,群神頻行。国於是乎蒸嘗,家於是乎嘗祀,百姓夫婦択其令辰,奉其犠牲,敬其粢盛,絜其糞除,慎其采服,禋其酒醴,帥其子姓,従其時享,虔其宗祝,道其順辞,以昭祀其先祖,粛粛済済,如或臨之。於是乎合其州郷朋友婚姻,比爾兄弟親戚。於是乎弭其百苛,殄其讒慝,合其嘉好,結其親暱,億其上下,以申固其姓。上所以教民虔也,下所以昭事上也。天子禘郊之事,必自射其牲,王后必自舂其粢;諸侯宗廟之事,必自射牛、刲羊、撃豕,夫人必自舂其盛。況其下之人,其誰敢不戦戦兢兢,以事百神!天子親舂禘郊之盛,王后親繰其服,自公以下至於庶人,其誰敢不斉粛恭敬致力於神!民所以摂固者也,若之何其舎之也!」
書き下し
王曰く、「芻豢(すうけん)幾何(いくばく)ぞ」と。対えて曰く、「遠きは三月に過ぎず、近きは浹日(しょうじつ)に過ぎず」と。王曰く、「祀は以て已むべからざるか」と。対えて曰く、「祀は孝を昭らかにし民を息(やす)んじ、国家を撫し、百姓を定むる所以なり、以て已むべからず。夫れ民の気縦(ほしいまま)なれば則ち底(とど)まり、底まれば則ち滞り、滞ること久しくして振るわざれば、生乃ち殖えず。其の用従わず、其の生殖えざれば、以て封ずべからず。是を以て古は先王日に祭り、月に享し、時に類し、歳に祀る。諸侯は日を舎(お)き、卿・大夫は月を舎き、士・庶人は時を舎く。天子は遍く群神品物を祀り、諸侯は天地・三辰及び其の土の山川を祀り、卿・大夫は其の礼を祀り、士・庶人は其の祖に過ぎず。日月龍𧱓(りゅうぼう)に会し、土気含収し、天明昌作し、百嘉備わり舎(やど)り、群神頻(しき)りに行く。国是に於てか烝嘗(じょうしょう)し、家是に於てか嘗祀す。百姓夫婦其の令辰を択び、其の犠牲を奉じ、其の粢盛(しせい)を敬し、其の糞除を絜(いさぎよ)くし、其の采服を慎み、其の酒醴(しゅれい)を禋(きよ)め、其の子姓を帥(ひき)い、其の時享に従い、其の宗祝を虔(つつし)み、其の順辞を道(い)い、以て其の先祖を昭祀し、粛粛済済として、臨むこと或るが如し。是に於てか其の州郷朋友婚姻を合わせ、爾(なんじ)の兄弟親戚を比す。是に於てか其の百苛を弭(や)め、其の讒慝(ざんとく)を殄(た)ち、其の嘉好を合わせ、其の親昵(しんじつ)を結び、其の上下を億(やす)んじ、以て其の姓を申固す。上は民に虔を教うる所以なり、下は昭らかに上に事うる所以なり。天子禘郊の事には、必ず自ら其の牲を射、王后必ず自ら其の粢を舂(つ)く。諸侯宗廟の事には、必ず自ら牛を射、羊を刲(さ)き、豕を撃ち、夫人必ず自ら其の盛を舂く。況んや其の下の人、其れ誰か敢えて戦戦兢兢として、以て百神に事えざらんや。天子親ら禘郊の盛を舂き、王后親ら其の服を繰(く)る。公より以下庶人に至るまで、其れ誰か敢えて斉粛恭敬して力を神に致さざらんや。民の摂固する所以の者なり、之を若何ぞ其れ舎てんや」と。
現代語訳
王は言った。「犠牲の家畜はどれほどの間飼い養うのか。」観射父は答えた。「長いもので三か月、短いものでは十日です。」王は言った。「祭りはやめてしまうわけにはいかないのか。」観射父は答えた。「祭りは孝の心を明らかにし、民を安らかにし、国家を落ち着かせ、民の心を定めるためのものですから、やめるわけにはいきません。民の心は放っておくと気が緩んでとどこおり、とどこおると働きが止まり、止まったまま奮い立たなければ、生業は殖えません。民が上の者の用に従わず、生業が殖えなければ、国を保つことはできません。それで古の先王は、日ごとに祭り、月ごとに供え、季節ごとに祭り、年ごとに大祭を行いました。諸侯は日ごとの祭りを略し、卿・大夫は月ごとの祭りを略し、士・庶人は季節ごとの祭りを略しました。天子はあらゆる神々と万物を祭り、諸侯は天地と日・月・星、およびその国の山川を祭り、卿・大夫は礼に定められた神を祭り、士・庶人は自分の祖先を祭るにとどめます。日と月が龍の尾の星宿で出会い(冬の初め)、土の気が収まり、天の光が盛んになり、あらゆる実りがそろって蔵に納まり、神々がしきりに巡るころ、国では冬と秋の大祭を行い、家々でも収穫の祭りを行います。民の夫婦はよい日を選び、犠牲を捧げ、器に盛った穀物を敬い、家の内外をきれいに掃き清め、祭りの服を慎んで整え、酒を清め、子や一族を率いて、季節の祭りに従い、祭りを司る者を敬い、ふさわしい言葉を述べて、先祖を明らかに祭ります。慎み深く、整然として、まるで先祖がそこにおられるかのようです。こうして州や郷の人々、友人、姻戚を集め、兄弟や親族を親しませます。こうして多くのとげとげしさを鎮め、讒言や悪意を断ち、よい交わりを結び合わせ、親しい者の絆を固め、上下を安らかにして、その一族を固く結びつけるのです。上の者はこうして民に慎みを教え、下の者はこうして明らかに上に仕えるのです。天子は天を祭る禘や郊の祭りには、必ず自ら犠牲を射止め、王后は必ず自ら供える穀物をつきます。諸侯は宗廟の祭りには、必ず自ら牛を射止め、羊を割き、豚を打ち、夫人は必ず自ら供える穀物をつきます。まして下々の者で、誰がおそれつつしんで神々に仕えずにいられましょう。天子は自ら禘や郊の祭りの穀物をつき、王后は自ら祭服の糸を繰ります。公から庶人に至るまで、誰が身を清め慎んで、神のために力を尽くさずにいられましょう。祭りは民をまとめ固めるものです。どうしてやめてしまえましょう。」
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『慎思録』巻之三母没すれば則ち父祭主と為るは、古の礼なり。今や父祭礼を知らずんば、則ち其の子祭主と為りて、其の母を祭るべきか。然らずんば則ち祭らずして子道を廃す。之を為すこと如何。苟も父祭主と為らずんば、則ち母の神主に於て、当に之を書すること如何すべき。恐らくは父在す時、孝子某奉祀と書し難からん。二者請ふ父に問ひ、時宜を斟酌して、惟れ可なり。
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『慎思録』巻之三礼に曰く、祭は数々ならんことを欲せず。数々なれば則ち瀆る、と。夫れ忌日は、一歳に一日のみ。今の倭俗の如きは毎月忌日と称し、素饌薦奠す。固より正礼に非ず。故に先輩世俗に乖きて月忌を行はざる者有り。窃かに謂ふ、本邦元来三年の喪無し。古制に期喪有りと雖も、復た此の礼を廃すること久し。是を以て孝子の心安んずる能はず。月忌の如きは、古礼に非ずと雖も、然れども国俗の同じく行ふ所にして、幼より之を習ふこと既に久し。遽かに廃するに忍びず。姑く其の厚きに従ひて、俗に同じうするも亦可なり。苟も断然として之を廃して行はずんば、恐らくは忍刻に幾からん。
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礼記・礼運其の祝号を作り、玄酒以て祭り、其の血・毛を薦め、其の俎を腥(なま)にし、其の殽(こう)を孰(に)、其の越席(かっせき)と与(とも)にし、疏布以て冪(おお)い、其の澣帛(かんぱく)を衣(き)、醴・醆以て献じ、其の燔・炙を薦め、君と夫人と交々(こもごも)献じ、以て魂魄を嘉(よみ)す。是を合莫(ごうばく)と謂う。 然る後に退きて合亨(ごうほう)し、其の犬豕牛羊を体(わか)ち、其の簠(ほ)・簋(き)・籩(へん)・豆・鉶羹(けいこう)に実(み)たす。祝は孝を以て告げ、嘏は慈を以て告ぐ。是を大祥と謂う。此れ礼の大成なり。
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詩経・大雅・生民之什・既酔既酔(きすい)は、大平(たいへい)なり。酒に酔い徳に飽きて、人に士君子の行い有り。 既に酔うに酒を以てし、既に飽くに徳を以てす。君子万年、爾(なんじ)の景福を介(たす)けん。 既に酔うに酒を以てし、爾の殽(こう)既に将(すす)む。君子万年、爾の昭明を介けん。 昭明融(ゆう)たる有り、高朗にして令終あり。令終俶(はじめ)有り、公尸(こうし)嘉(よ)く告ぐ。 其の告ぐること維(こ)れ何ぞ。籩豆(へんとう)静嘉なり。朋友の摂(たす)くる攸(ところ)、摂くるに威儀を以てす。 威儀孔(はなは)だ時(よ)く、君子孝子有り。孝子匱(とぼ)しからず、永く爾に類を錫(たま)う。 其の類は維れ何ぞ。室家の壼(こん)。君子万年、永く祚胤(そいん)を錫う。 其の胤は維れ何ぞ。天爾に禄を被らしむ。君子万年、景命僕(つ)く有り。 其の僕は維れ何ぞ。爾に女士を釐(たま)う。爾に女士を釐い、従うに孫子を以てす。
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礼記・祭義孝子将に祭祀せんとするや、必ず斉荘(さいそう)の心有りて以て事を慮(おもんぱか)り、以て服物を具え、以て宮室を修め、以て百事を治む。祭の日に及びては、顔色必ず温かに、行い必ず恐れ、愛に及ばざるを懼るるが如く然り。その奠(てん)するや、容貌必ず温かに、身必ず詘(かが)め、語りて未だしが如く然り。宿者皆出づれば、その立つこと卑静にして以て正しく、将に見ざらんとするが如く然り。祭の後に及びては、陶陶遂遂(ようようすいすい)として、将に復た入らんとするが如く然り。是の故に、愨善(かくぜん)身に違わず、耳目心に違わず、思慮親に違わず。諸を心に結び、諸を色に形(あら)わして、術(の)べてこれを省(かえり)みる。孝子の志なり。 国の神位を建つるには、社稷を右にして宗廟を左にす。
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孔子家語・哀公問政宰我、孔子に問いて曰わく、「吾鬼神の名を聞くも、謂う所を知らず。敢えて焉を問う。」孔子曰わく、「人生まれて気有り、魂有り。気とは、人の盛んなるものなり。夫れ生あれば必ず死し、死すれば必ず土に帰す、此れを鬼と謂う。魂気天に帰す、此れを神と謂う。鬼と神とを合わせて之れを享くるは、教えの至りなり。骨肉下に弊れ、化して野土と為る。其の気上に発揚する者は、此れ神の著なり。聖人物の精に因りて、制して之れが極と為す。鬼神を明命して、以て民の則と為すも、猶お是を以て未だ足らずと為すなり。故に築きて宮室と為し、設けて宗祧と為す。春秋に祭祀して、以て親疏を別つ。民に古に反り始めに復るを教え、敢えて其の由りて生ずる所を忘れざらしむるなり。衆人此れより服し且つ速やかに聴く、教うるに二端を以てす。二端既に立ち、報ゆるに二礼を以てす。朝事を建設し、膻薌を燔燎するは、気に報ゆる所以なり。黍稷を薦め、肺・肝を脩め、加うるに鬱鬯を以てするは、魄に報ゆる所以なり。此れ民に本を修め、始めに反りて愛を崇び、上下情を用うるを教う。礼の至りなり。君子は古に反り始めに復り、其の由りて生ずる所を忘れず、是を以て其の敬を致す。其の情を発し、力を竭くして事に従い、敢えて自ら尽くさざること無し。此れを大教と謂う。昔者、文王の祭るや、死に事うること生に事うるが如く、死を思いて生を欲せず。忌日には則ち必ず哀しみ、諱を称すれば則ち見るが如し。親祀の忠なり。之れを思うこと深く、親の愛する所を見るが如し。祭りて、親の顔色を見んと欲する者は、其れ唯だ文王か。詩に云う、『明発寐ねず、二人を懐う』と。則ち文王の謂いか。祭りの明日、明発寐ねず、二人を懐い、敬いて之れを致し、又た従いて之れを思う。祭りの日は楽と哀と半ばし、之れを饗くれば必ず楽しみ、已に至れば必ず哀しむ。孝子の情なり、文王能く之れを得たりと為す。」
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