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国語 / 楚語下

「及少皞之衰也,九黎亂德,民神雜糅,不可方物。夫人作享,家為巫史,無有要質。民匱於祀,而不知其福。烝享無度,民神同位。民瀆齊盟,無有嚴威。神狎民則,不蠲其為。嘉生不降,無物以享。禍災薦臻,莫盡其氣。顓頊受之,乃命南正重司天以屬神,命火正黎司地以屬民,使復舊常,無相侵瀆,是謂絕地天通。 「其後,三苗復九黎之德,堯復育重、黎之後,不忘舊者,使復典之。以至於夏、商,故重、黎氏世敘天地,而別其分主者也。其在周,程伯休父其後也,當宣王時,失其官守,而為司馬氏。寵神其祖,以取威於民,曰:『重寔上天,黎寔下地。』遭世之亂,而莫之能禦也。不然,夫天地成而不變,何比之有?」

新字:「及少皞之衰也,九黎乱徳,民神雑糅,不可方物。夫人作享,家為巫史,無有要質。民匱於祀,而不知其福。烝享無度,民神同位。民瀆斉盟,無有厳威。神狎民則,不蠲其為。嘉生不降,無物以享。禍災薦臻,莫尽其気。顓頊受之,乃命南正重司天以属神,命火正黎司地以属民,使復旧常,無相侵瀆,是謂絶地天通。 「其後,三苗復九黎之徳,堯復育重、黎之後,不忘旧者,使復典之。以至於夏、商,故重、黎氏世敘天地,而別其分主者也。其在周,程伯休父其後也,当宣王時,失其官守,而為司馬氏。寵神其祖,以取威於民,曰:『重寔上天,黎寔下地。』遭世之乱,而莫之能禦也。不然,夫天地成而不変,何比之有?」

書き下し

「少皞(しょうこう)の衰うるに及ぶや、九黎徳を乱し、民神雑糅(ざつじゅう)して、方物すべからず。夫人ごとに享を作し、家ごとに巫史と為り、要質有る無し。民祀に匱しくして、其の福を知らず。烝享(じょうきょう)度無く、民神位を同じくす。民斉盟を瀆(けが)して、厳威有る無し。神民の則に狎(な)れて、其の為を蠲(きよ)めず。嘉生降らず、物の以て享する無し。禍災薦(しき)りに臻(いた)りて、其の気を尽くす莫し。顓頊(せんぎょく)之を受け、乃ち南正重に命じて天を司りて以て神を属せしめ、火正黎に命じて地を司りて以て民を属せしめ、旧常に復して、相侵瀆(しんとく)すること無からしむ。是を地天の通いを絶つと謂う。 「其の後、三苗九黎の徳を復す。堯復た重・黎の後の旧を忘れざる者を育てて、復た之を典(つかさど)らしむ。以て夏・商に至る。故に重・黎氏世々天地を叙して、其の分主を別つ者なり。其の周に在りては、程伯休父(ていはくきゅうほ)其の後なり。宣王の時に当たりて、其の官守を失いて、司馬氏と為る。其の祖を寵神して、以て威を民に取り、曰く、『重は寔に天を上げ、黎は寔に地を下す』と。世の乱に遭いて、之を能く禦ぐ莫きなり。然らずんば、夫れ天地成りて変ぜず、何の比(ちか)づくことか之れ有らん」と。

現代語訳

(観射父は続けた。)「少皞(古の帝王)の世が衰えると、九黎(南方の部族)が徳を乱し、民と神とが入り混じって、見分けがつかなくなりました。人は誰もが勝手に祭りを行い、家ごとに巫や史を名乗り、誠のよりどころがなくなりました。民は祭りに財を費やして乏しくなり、それでいて神の福を得ることを知りません。祭りには節度がなく、民と神とが同じ位に並ぶようになりました。民は神前の誓いを汚して、厳かさを失いました。神は民のやり方に慣れてしまい、その行いを清めようとしませんでした。そのため豊かな実りは降らず、供える物もなくなりました。災いが次々とやって来て、人々は天寿を全うできませんでした。顓頊(古の帝王)が位を受け継ぐと、南正の重に命じて天を司らせて神々をまとめさせ、火正の黎に命じて地を司らせて民をまとめさせ、昔の秩序に戻して、互いに侵したり汚したりしないようにしました。これを『地と天の通いを絶つ』と言うのです。 「その後、三苗(南方の部族)が再び九黎と同じように徳を乱しましたが、堯は再び重と黎の子孫で昔の務めを忘れない者を育て、再び天地のことを司らせました。それが夏・商の世まで続きました。だから重・黎の家は代々天地の秩序を整え、その持ち分を分けて司ってきたのです。周の世では、程伯休父がその子孫です。宣王の時にその官職を失って、司馬氏となりました。その子孫は祖先を神のように尊んで民に威光を示そうとし、『重はまことに天を持ち上げ、黎はまことに地を押し下げた』と言いふらしました。世が乱れていたので、それをとがめる者もいなかったのです。そうでなければ、天地はできあがった時から変わらないものです。どうして近づいたり離れたりすることがありましょう。」

解説

観射父の「絶地天通」の答えの後半である。少皞の世が衰えると九黎が徳を乱し、誰もが勝手に祭りを行い、家ごとに巫を名乗るようになって、民は祭りに財を費やしても福を得られず、神の威厳も失われた。そこで顓頊が重に天と神を、黎に地と民を司らせ、両者が互いに侵し合わないよう秩序を戻した。これが「地天の通いを絶つ」の本当の意味だと観射父は説く。さらに、天を持ち上げ地を押し下げたという神話めいた話は、重・黎の子孫で周の宣王の時に官を失った程伯休父の家、すなわち司馬氏が、祖先を神格化して威光を得ようとして広めたものだと種明かしをする。天地は変わらないのだから近づくも離れるもないという結びは、神話を理で読み解く姿勢である。権威のある話ほど、それを語って得をするのは誰かを見よという読み方を教えてくれる。

この章句が説くこと

国語楚語神話祭祀秩序

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