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国語 / 晋語五

郤獻子聘于齊,齊頃公使婦人觀而笑之。郤獻子怒,歸,請伐齊。范武子退自朝,曰:「燮乎,吾聞之,干人之怒,必獲毒焉。夫郤子之怒甚矣,不逞於齊,必發諸晉國。不得政,何以逞怒?余將致政焉,以成其怒,無以內易外也。爾勉從二三子,以承君命,唯敬。」乃老。

新字:郤献子聘于斉,斉頃公使婦人観而笑之。郤献子怒,帰,請伐斉。范武子退自朝,曰:「燮乎,吾聞之,干人之怒,必獲毒焉。夫郤子之怒甚矣,不逞於斉,必発諸晋国。不得政,何以逞怒?余将致政焉,以成其怒,無以内易外也。爾勉従二三子,以承君命,唯敬。」乃老。

書き下し

郤献子(げきけんし)斉に聘(へい)す。斉の頃公(けいこう)婦人をして観て之を笑わしむ。郤献子怒り、帰りて斉を伐たんことを請う。范武子(はんぶし)朝より退きて曰く、「燮(しょう)よ、吾之を聞く、人の怒りを干(おか)せば、必ず毒を獲と。夫れ郤子の怒り甚だし。斉に逞(たくまし)うせずんば、必ず諸(これ)を晋国に発せん。政を得ずんば、何を以て怒りを逞うせん。余将に政を致して、以て其の怒りを成さしめ、内を以て外に易うること無からしめんとす。爾勉めて二三子に従い、以て君命を承(う)けよ、唯だ敬せよ」と。乃ち老す。

現代語訳

郤献子(晋の卿郤克)が斉に聘問(公式の訪問)した。斉の頃公は婦人たちに物陰から郤献子を見物させ、婦人たちは彼を笑った。郤献子は怒り、帰国すると斉を討つことを願い出た。范武子(晋の正卿士会)は朝廷から退くと、子に言った。「燮(范文子)よ、わたしはこう聞いている。人の怒りに逆らえば、必ずその毒を受ける、と。郤子の怒りはひどい。斉で晴らせなければ、きっと晋の国内でそれを爆発させるだろう。だが政権を握らなければ、どうして怒りを晴らせよう。わたしは政務を彼に譲り、その怒りを遂げさせて、国外に向かうべき怒りを国内に向けさせないようにするつもりだ。お前は努めて諸卿に従い、君命を奉じよ。ただつつしむことだ。」そして老を告げて引退した。

解説

魯の宣公十七年(前592)、晋の郤克が斉へ使いしたとき、足の不自由な郤克を、斉の頃公が婦人たちに物陰から見させ、婦人たちは笑った。郤克は激怒し、帰国して斉の討伐を願い出た。ここで晋の正卿士会(范武子)がとった手は、自ら退いて郤克に政権を渡すことであった。怒りを抑えつければ、それは国外でなく国内の政敵に向かう。ならば権力を与えて、怒りを本来の相手である斉に向けさせたほうが、晋にとって害が少ない、という読みである。そして子の燮(范文子)には、ひたすら敬をもって諸卿に従えと言い残した。『春秋左氏伝』宣公十七年にもほぼ同じ言葉が載り、三年後の鞌の戦いで郤克は斉を大いに破る。強い感情を抱えた有力者をどう扱うか。押さえ込むより、向かうべき方向に流すという老練の判断である。

この章句が説くこと

国語晋語怒り譲位敬

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