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国語 / 魯語上

溫之會,晉人執衛成公歸之于周,使醫鴆之,不死,醫亦不誅。 臧文仲言於僖公曰:「夫衛君殆無罪矣。刑五而已,無有隱者,隱乃諱也。大刑用甲兵,其次用斧鉞,中刑用刀鋸,其次用鑽笮,薄刑用鞭扑,以威民也。故大者陳之原野,小者致之市朝,五刑三次,是無隱也。今晉人鴆衛侯不死,亦不討其使者,諱而惡殺之也。有諸侯之請,必免之。臣聞之:班相恤也,故能有親。夫諸侯之患,諸侯恤之,所以訓民也。君盍請衛君以示親於諸侯,且以動晉?夫晉新得諸侯,使亦曰:『魯不棄其親,其亦不可以惡。』」公說,行玉二十瑴,乃免衛侯。 自是晉聘於魯,加於諸侯一等,爵同,厚其好貨。衛侯聞其臧文仲之為也,使納賂焉。辭曰:「外臣之言不越境,不敢及君。」

新字:温之会,晋人執衛成公帰之于周,使医鴆之,不死,医亦不誅。 臧文仲言於僖公曰:「夫衛君殆無罪矣。刑五而已,無有隠者,隠乃諱也。大刑用甲兵,其次用斧鉞,中刑用刀鋸,其次用鑽笮,薄刑用鞭扑,以威民也。故大者陳之原野,小者致之市朝,五刑三次,是無隠也。今晋人鴆衛侯不死,亦不討其使者,諱而悪殺之也。有諸侯之請,必免之。臣聞之:班相恤也,故能有親。夫諸侯之患,諸侯恤之,所以訓民也。君盍請衛君以示親於諸侯,且以動晋?夫晋新得諸侯,使亦曰:『魯不棄其親,其亦不可以悪。』」公説,行玉二十瑴,乃免衛侯。 自是晋聘於魯,加於諸侯一等,爵同,厚其好貨。衛侯聞其臧文仲之為也,使納賂焉。辞曰:「外臣之言不越境,不敢及君。」

書き下し

温(おん)の会に、晋人衛の成公を執(とら)えて之を周に帰し、医をして之を鴆(ちん)せしむ。死せず。医も亦誅せられず。 臧文仲僖公に言いて曰く、「夫れ衛君は殆ど罪無からん。刑は五のみ、隠るる者有ること無し。隠るるは乃ち諱むなり。大刑は甲兵を用い、其の次は斧鉞(ふえつ)を用い、中刑は刀鋸を用い、其の次は鑽笮(さんさく)を用い、薄刑は鞭扑(べんぼく)を用い、以て民に威す。故に大なる者は之を原野に陳(つら)ね、小なる者は之を市朝に致す。五刑三次、是れ隠るる無きなり。今晋人衛侯を鴆して死せず、亦其の使者を討たず。諱みて之を殺すを悪むなり。諸侯の請い有らば、必ず之を免さん。臣之を聞く、班(くらい)相恤(うれ)う、故に能く親しみ有りと。夫れ諸侯の患いは、諸侯之を恤う、民を訓うる所以なり。君盍ぞ衛君を請いて以て親しみを諸侯に示し、且つ以て晋を動かさざる。夫れ晋は新たに諸侯を得たり。使(も)し亦曰わん、『魯は其の親しきを棄てず、其れ亦以て悪むべからず』と」と。公説(よろこ)び、玉二十瑴(かく)を行(おく)り、乃ち衛侯を免す。 是より晋魯に聘するに、諸侯に加うること一等、爵同じきも、其の好貨を厚くす。衛侯其の臧文仲の為すところなるを聞き、賂を納れしむ。辞して曰く、「外臣の言は境を越えず、敢えて君に及ばず」と。

現代語訳

温の会盟(晋の文公が諸侯を集めた会)で、晋は衛の成公を捕らえて周に送り、医者に命じて毒を盛らせた。しかし成公は死なず、晋はその医者を罰することもしなかった。 臧文仲は僖公(魯の君)に言った。「衛の君にはおそらく罪がないのでしょう。刑罰は五つだけで、隠れて行うものはありません。隠れて行うのは、それをはばかるからです。最も重い刑には軍隊を用い、その次には斧やまさかりを用い、中ほどの刑には刀や鋸を用い、その次には錐や入れ墨の刃を用い、軽い刑には鞭や杖を用いて、民に威厳を示します。だから重い刑は原野で公然と行い、軽い刑は市場や朝廷で行います。五つの刑を三つの場所で行う、これが隠さないということです。いま晋の人は衛侯に毒を盛って死なず、しかもその使いの者を罰していません。はばかって殺すことをためらっているのです。諸侯から願い出れば、必ず赦すでしょう。私はこう聞いています。同じ位にある者が互いに憂えるからこそ、親しみが生まれると。諸侯の患いを諸侯が憂えるのは、民に助け合いを教えるためでもあります。君はどうして衛の君の赦免を願い出て、諸侯に親しみを示し、同時に晋の心を動かそうとなさらないのですか。晋は新たに諸侯の覇者となったばかりです。晋にもきっと『魯は親しい者を見捨てない。魯を憎んではならない』と言わせることになりましょう。」僖公は喜び、玉二十対を(周王と晋侯に)贈って、衛侯を赦免させた。 これ以後、晋は魯に聘問の使者を送るとき、他の諸侯より一等上の礼で遇し、爵位が同じ国と比べても、贈り物を手厚くした。衛侯は、自分が助かったのが臧文仲の働きによると聞いて、贈り物を届けさせた。臧文仲は辞退して言った。「外国の臣の言葉は国境を越えないものです。とても君に届くようなものではございません。」

解説

晋の文公が覇者となった温の会で、晋に捕らえられた衛の成公が周に送られ、医者に毒を盛られながら死ななかったとき、臧文仲が魯の僖公に赦免の仲介を勧めた話である。『春秋左氏伝』僖公三十年によれば、衛の甯俞が医者に賄賂を贈って毒を薄めさせたため成公は死ななかった。臧文仲の読みは鋭い。刑は公然と行うもので、隠れて毒を盛り、しかも失敗した医者を罰しないのは、晋自身が殺すことをはばかっている証拠だという。だから諸侯が願い出れば晋は折れる。衛を助ければ諸侯に親しみを示し、晋からも一目置かれる。果たして晋は以後、魯を厚遇した。衛侯からの礼物を「外臣の言は境を越えず」と断る結びも見事である。相手の振る舞いの裏にある本音を読み、恩を施しても見返りは受け取らない。交渉と信用の手本である。

この章句が説くこと

国語魯語刑仲介信用

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