古事記 / 上巻・三貴子の誕生と分治
其綿津見神之子。宇都志日金拆命之子孫也。(宇都志三字以音)其底筒之男命。中筒之男命。上筒之男命三柱神者。墨江之三前大神也。於是洗左御目時。所成神名。天照大御神。次洗右御目時。所成神名。月讀命。次洗御鼻時。所成神名。建速須佐之男命。(須佐二字以音)右件。八十禍津日神以下。速須佐之男命以前。十四柱神者。因滌御身所生者也。此時伊邪那岐命大歡喜詔。吾者生生子而。於生終得三貴子。即其御頸珠之玉緖母由貝邇(此四字以音。下效此)取由良迦志而。賜天照大御神而詔之。汝命者所知高天原矣。事依而賜也。故其御頸珠名謂御倉板擧之神。(訓板擧云多那)次詔月讀命。汝命者所知夜之食國矣。事依也。(訓食云袁須)次詔建速須佐之男命。汝命者所知海原矣。事依也。
新字:其綿津見神之子。宇都志日金拆命之子孫也。(宇都志三字以音)其底筒之男命。中筒之男命。上筒之男命三柱神者。墨江之三前大神也。於是洗左御目時。所成神名。天照大御神。次洗右御目時。所成神名。月読命。次洗御鼻時。所成神名。建速須佐之男命。(須佐二字以音)右件。八十禍津日神以下。速須佐之男命以前。十四柱神者。因滌御身所生者也。此時伊邪那岐命大歓喜詔。吾者生生子而。於生終得三貴子。即其御頸珠之玉緒母由貝邇(此四字以音。下効此)取由良迦志而。賜天照大御神而詔之。汝命者所知高天原矣。事依而賜也。故其御頸珠名謂御倉板挙之神。(訓板挙云多那)次詔月読命。汝命者所知夜之食国矣。事依也。(訓食云袁須)次詔建速須佐之男命。汝命者所知海原矣。事依也。
書き下し
その綿津見神の子、宇都志日金拆命の子孫なり。(宇都志の三字は音を以てす)その底筒之男命・中筒之男命・上筒之男命の三柱の神は、墨江の三前の大神なり。ここに左の御目を洗ひたまふ時に成りませる神の名は、天照大御神。次に右の御目を洗ひたまふ時に成りませる神の名は、月読命。次に御鼻を洗ひたまふ時に成りませる神の名は、建速須佐之男命。(須佐の二字は音を以てす)右の件、八十禍津日神より以下、速須佐之男命より以前の十四柱の神は、御身を滌ぐに因りて生りませる神なり。この時、伊邪那岐命大く歓喜びて詔りたまはく、「吾は子を生み生みて、生みの終に三はしらの貴き子を得つ」とのりたまひて、即ちその御頸珠の玉の緒もゆらに(この四字は音を以てす。下これに効へ)取りゆらかして、天照大御神に賜ひて詔りたまはく、「汝が命は高天原を知らせ」と事依さして賜ひき。故、その御頸珠の名は御倉板挙之神と謂ふ。(訓板挙を多那と云ふ)次に月読命に詔りたまはく、「汝が命は夜之食国を知らせ」と事依さしき。(訓食を袁須と云ふ)次に建速須佐之男命に詔りたまはく、「汝が命は海原を知らせ」と事依さしき。
現代語訳
(阿曇連らは、)その綿津見神の子、宇都志日金拆命の子孫です。底筒之男命、中筒之男命、上筒之男命の三柱の神は、墨江(住吉)の三座の大神です。そこで左の目を洗われたときに生まれた神は天照大御神、次に右の目を洗われたときに生まれた神は月読命、次に鼻を洗われたときに生まれた神は建速須佐之男命です。以上、八十禍津日神から速須佐之男命までの十四柱の神は、身体を洗い清めたことによって生まれた神です。このとき伊邪那岐命はたいへん喜んで仰せになりました。「私は子を次々に生んできて、最後に三柱の貴い子を得た」と。そしてすぐに首にかけていた玉の首飾りを、玉の緒を鳴らしながら取り外し、天照大御神に授けて、「あなたは高天原を治めなさい」と仰せになって任じられました。この首飾りの名を御倉板挙之神といいます。次に月読命に「あなたは夜の国を治めなさい」と任じられ、次に建速須佐之男命に「あなたは海原を治めなさい」と任じられました。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『古事記』上巻・禊祓と三貴子の誕生(上)次に辺津那芸佐毘古神。次に辺津甲斐弁羅神。右の件、船戸神より以下、辺津甲斐弁羅神より以前の十二神は、身に著けたる物を脱ぐに因りて生りませる神なり。ここに詔りたまはく、「上つ瀬は瀬速し。下つ瀬は瀬弱し」とのりたまひて、初めて中つ瀬に堕かづきて滌ぎたまふ時、成りませる神の名は、八十禍津日神。(訓禍を摩賀と云ふ。下これに効へ)次に大禍津日神。この二神は、その穢繁き国に到りし時の汚垢に因りて成れる神なり。次にその禍を直さむとして成りませる神の名は、神直毘神。次に大直毘神。次に伊豆能売神。(并せて三神なり。伊より以下四字は音を以てす)次に水底に滌ぎたまふ時に成りませる神の名は、底津綿津見神。次に底筒之男命。中に滌ぎたまふ時に成りませる神の名は、中津綿津見神。次に中筒之男命。水の上に滌ぎたまふ時に成りませる神の名は、上津綿津見神。(訓上を宇閇と云ふ)次に上筒之男命。この三柱の綿津見神は、阿曇連等の祖神と以ちいつく神なり。(伊より以下三字は音を以てす。下これに効へ)故、阿曇連等は、
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『古事記』上巻・誓約の勝敗と宗像三神亦右の御みづらに纏かせる珠を乞ひ度して、さがみにかみて、吹き棄つる気吹の狭霧に成りませる神の御名は、天之菩卑能命。(菩より下三字は音を以てす)亦御鬘に纏かせる珠を乞ひ度して、さがみにかみて、吹き棄つる気吹の狭霧に成りませる神の御名は、天津日子根命。又左の御手に纏かせる珠を乞ひ度して、さがみにかみて、吹き棄つる気吹の狭霧に成りませる神の御名は、活津日子根命。亦右の御手に纏かせる珠を乞ひ度して、さがみにかみて、吹き棄つる気吹の狭霧に成りませる神の御名は、熊野久須毘命。(并せて五柱。久より下三字は音を以てす)ここに天照大御神、速須佐之男命に告りたまはく、「この後に生れませる五柱の男子は、物実我が物に因りて成りませり。故、自ら吾が子ぞ。先に生れませる三柱の女子は、物実汝が物に因りて成りませり。故、乃ち汝が子ぞ」と、かく詔り別けたまひき。故、その先に生れませる神、多紀理毘売命は、胸形の奥津宮に坐す。次に市寸島比売命は、胸形の中津宮に坐す。次に田寸津比売命は、胸形の辺津宮に坐す。この三柱の神は、胸形君等がもちいつく三前の大神なり。
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『古語拾遺』開闢と天つ罪一に聞く、夫れ開闢の初め、伊奘諾・伊奘冉の二神、共に夫婦と為りて、大八州国及び山川草木を生む。次に日神・月神を生む。最後に素戔鳴神を生む。而るに素戔鳴神、常に哭泣を以て行と為す。故に人民をして夭折せしめ、青山をして枯に変ぜしむ。斯に因りて父母の二神、勅して曰く、「汝甚だ無道なり。宜しく早く根国に退き去るべし」と。又天地剖判の初め、天中に生ずる所の神、名を天御中主神と曰う。次に高皇産霊神、次に神皇産霊神。其の高皇産霊神の生む所の女、名を栲幡千千姫命と曰う。其の男、名を天忍日命と曰う。又の男、名を天太玉命と曰う。太玉命の率いる所の神、名を天日鷲命・手置帆負命・産狭知命・櫛明玉命・天目一箇命と曰う。是に於て素戔鳴神、日神に辞し奉らんと欲して天に昇る時、櫛明玉命迎え奉りて、献るに瑞の八坂瓊の曲玉を以てす。素戔鳴神之を受けて転じて日神に奉る。仍りて共に約誓す。即ち其の玉に感じて天祖吾勝尊を生む。是を以て天照大神、吾勝尊を育みて、特に甚だ鍾愛し、常に腋の下に懐く。称して腋子と曰う。其の後、素戔鳴神、日神の為に行い甚だ無状なり。種々に凌侮す。所謂る畔毀ち・溝埋め・樋放ち・重播き・串刺し・生剥ぎ逆剥ぎ・屎戸なり。
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『神皇正統記』巻一 地神第一代 天照太神地神第一代、大日孁尊。是を天照太神と申。又は日神とも皇祖とも申也。此神の生給こと三の説あり。一には伊弉諾・伊弉冊尊あひ計て、天下の主をうまざらんやとて、先、日神をうみ、次に、月神、次、蛭子、次、素戔烏尊を生給といへり。又は伊弉諾の尊、左御手に白銅の鏡をとりて大日孁の尊を化生し、右御手にとりて月弓の尊を生、御首をめぐらしてかへりみ給しあひだに、素戔烏尊を生ともいへり。又伊弉諾尊日向の小戸の川にてみそぎし給し時、左の御眼をあらひて天照太神を化生し、右の御眼をあらひて月読の尊を生、御鼻を洗て素戔烏尊を生じ給とも云ふ。日月神の御名も三あり、化生の所も三あれば、凡慮はかりがたし。又おはします所も、一には高天の原と云、二には日の小宮と云、三には我日本国これ也。八咫の御鏡をとらせましまして、「われをみるが如くにせよ。」と勅し給けること、和光の御誓もあらはれて、ことさらに深道あるべければ、三所に勝劣の義をば存ずべからざるにや。
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『古事記』上巻・誓約の始まりここに大御神詔りたまはく、「汝はこの国に在るべからず」とのりたまひて、神やらひやらひ賜ひき。故、罷り往かむ状を請さむと以為ひて、参上りつらくのみ。異心無し」。ここに天照大御神詔りたまはく、「然らば汝の心の清く明きは何して知らむ」。ここに速須佐之男命答へ白さく、「各うけひて子を生まむ」。(宇より以下三字は音を以てす。下これに効へ)故ここに各天安河を中に置きてうけふ時、天照大御神、先づ建速須佐之男命の佩かせる十拳剣を乞ひ度して、三段に打ち折りて、ぬなとももゆらに(この八字は音を以てす)天之真名井に振り滌ぎて、さがみにかみて(佐より下六字は音を以てす。下これに効へ)、吹き棄つる気吹の狭霧に成りませる神の御名は、多紀理毘売命。(この神名は音を以てす)亦の御名は奥津島比売命と謂ふ。次に市寸島比売命。亦の御名は狭依毘売命と謂ふ。次に多岐都比売命。(三柱。この神名は音を以てす)速須佐之男命、天照大御神の左の御みづらに纏かせる八尺の勾璁の五百津のみすまるの珠を乞ひ度して、ぬなとももゆらに、天之真名井に振り滌ぎて、さがみにかみて、吹き棄つる気吹の狭霧に成りませる神の御名は、正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命。
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『神皇正統記』巻一 天神七代次、素戔烏尊を生ます。いさみたけく不忍にして父母の御心にかなはず。「根の国にいね。」との給ふ。この三柱は男神にてまします。よりて一女三男と申也。すべてあらゆる神みな二神の所生にましませど、国の主たるべしとて生給しかば、ことさらに此四神を申伝けるにこそ。其後火神軻倶突智を生ましましし時、陰神やかれて神退給にき。陽神うらみいかりて、火神を三段にきる。その三段おのおの神となる。血のしたゝりもそゝいで神となれり。経津主の神健甕槌神の祖也。陽神猶したひて黄泉までおはしましてさまざまのちかひありき。陰神うらみて「此国の人を一日に千頭ころすべし。」との給ければ、陽神は「千五百頭を生べし。」との給けり。よりて百姓をば天の益人とも云ふ。死るものよりも生ずるものおほき也。陽神かへり給て、日向の小戸の河檍が原と云所にてみそぎし給。この時あまたの神化生し玉へり。日月神もこゝにて生給と云説あり。伊弉諾尊神功すでにをはりければ、天上にのぼり、天祖に報命申て、即天にとゞまり給けりとぞ。或説に伊弉諾・伊弉冊は梵語なり、伊舎那天・伊舎那后なりと云ふ。

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