古事記 / 上巻・迦具土神の斬殺と剣の神々
故其所神避之伊邪那美神者。葬出雲國與伯伎國堺比婆之山上也。於是伊邪那岐命。拔所御佩之十拳劒。斬其子迦具土神之頸。爾著其御刀前之血。走就湯津石村。所成神名。石拆神。次根拆神。次石筒之男神。(三神)次著御刀本血。亦走就湯津石村。所成神名。甕速日神。次樋速日神。次建御雷之男神。亦名建布都神。(布都二字以音。下效此)亦名豐布都神。(三神)次集御刀之手上血。自手俣漏出。所成神名。闇淤加美神。(淤以下三字以音。下效此)次闇御津羽神。
新字:故其所神避之伊邪那美神者。葬出雲国与伯伎国堺比婆之山上也。於是伊邪那岐命。抜所御佩之十拳劒。斬其子迦具土神之頸。爾著其御刀前之血。走就湯津石村。所成神名。石拆神。次根拆神。次石筒之男神。(三神)次著御刀本血。亦走就湯津石村。所成神名。甕速日神。次樋速日神。次建御雷之男神。亦名建布都神。(布都二字以音。下効此)亦名豊布都神。(三神)次集御刀之手上血。自手俣漏出。所成神名。闇淤加美神。(淤以下三字以音。下効此)次闇御津羽神。
書き下し
故、その神避りたまひし伊邪那美神は、出雲国と伯伎国との堺なる比婆之山に葬りまつりき。ここに伊邪那岐命、御佩せる十拳剣を抜きて、その子迦具土神の頸を斬りたまひき。ここにその御刀の前に著ける血、湯津石村に走り就きて成りませる神の名は、石拆神。次に根拆神。次に石筒之男神。(三神)次に御刀の本に著ける血も、亦湯津石村に走り就きて成りませる神の名は、甕速日神。次に樋速日神。次に建御雷之男神。亦の名は建布都神、亦の名は豊布都神。(布都の二字は音を以てす。下これに効へ)(三神)次に御刀の手上に集まれる血、手俣より漏き出でて成りませる神の名は、闇淤加美神。(淤より以下三字は音を以てす。下これに効へ)次に闇御津羽神。
現代語訳
亡くなられた伊邪那美神は、出雲国と伯伎国との境にある比婆の山に葬りました。そこで伊邪那岐命は、腰に帯びていた十拳の剣を抜いて、わが子の迦具土神の首を斬りました。すると、その刀の先についた血が、神聖な岩の群れに走りついて生まれた神は、石拆神、次に根拆神、次に石筒之男神です。(三神)次に刀の根元についた血も、同じく岩の群れに走りついて生まれた神は、甕速日神、次に樋速日神、次に建御雷之男神です。この神はまたの名を建布都神、またの名を豊布都神といいます。(三神)次に刀の柄に集まった血が、手の指の間からこぼれて生まれた神は、闇淤加美神、次に闇御津羽神です。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『古事記』上巻・黄泉国への訪問と拒絶上の件、石拆神より以下、闇御津羽神より以前、并せて八神は、御刀に因りて生りませる神なり。殺さえし迦具土神の頭に成りませる神の名は、正鹿山津見神。次に胸に成りませる神の名は、淤縢山津見神。(淤縢の二字は音を以てす)次に腹に成りませる神の名は、奥山津見神。次に陰に成りませる神の名は、闇山津見神。(闇の字は音を以てす)次に左の手に成りませる神の名は、志芸山津見神。(志芸の二字は音を以てす)次に右の手に成りませる神の名は、羽山津見神。次に左の足に成りませる神の名は、原山津見神。次に右の足に成りませる神の名は、戸山津見神。(正鹿山津見神より戸山津見神まで并せて八神)故、斬りたまへる刀の名は、天之尾羽張と謂ふ。亦の名は伊都之尾羽張と謂ふ。(伊都の二字は音を以てす)ここにその妹伊邪那美命を相見むと欲ひて、黄泉国に追ひ往きたまひき。ここに殿の縢戸より出で向へたまふ時、伊邪那岐命語らひ詔りたまはく、「愛しき我がなに妹の命、吾と汝と作れる国、未だ作り竟へず。故、還るべし」。ここに伊邪那美命答へ白したまはく、「悔しきかも、速く来ず。吾は黄泉戸喫しつ」。
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『古事記』上巻・火の神誕生と伊邪那美の死次に天之狭霧神。次に国之狭霧神。次に天之闇戸神。次に国之闇戸神。次に大戸惑子神。(訓惑を麻刀比と云ふ、下これに効へ)次に大戸惑女神。(天之狭土神より大戸惑女神まで并せて八神)次に生みませる神の名は鳥之石楠船神。亦の名は天鳥船と謂ふ。次に大宜都比売神を生みたまひき。(この神名は音を以てす)次に火之夜芸速男神を生みたまひき。(夜芸の二字は音を以てす)亦の名は火之炫毘古神と謂ひ、亦の名は火之迦具土神と謂ふ。(迦具の二字は音を以てす)この子を生みたまふに因りて、美蕃登(この三字は音を以てす)炙かえて病み臥せり。たぐりに(この四字は音を以てす)生りませる神の名は金山毘古神。(訓金を迦那と云ふ、下これに効へ)次に金山毘売神。次に屎に成りませる神の名は波邇夜須毘古神。(この神名は音を以てす)次に波邇夜須毘売神。(この神名も亦音を以てす)次に尿に成りませる神の名は弥都波能売神。(弥より以下四字は音を以てす)次に和久産巣日神。この神の子は豊宇気毘売神と謂ふ。故、伊邪那美神は、火の神を生みしに因りて、遂に神避りたまひき。(天鳥船より豊宇気毘売神まで并せて八神)凡そ伊邪那岐・伊邪那美の二神、共に生みませる嶋は壱拾肆嶋、神は参拾伍神。(これ伊邪那美神の未だ神避りたまはざる以前に生めるなり。ただ意能碁呂嶋は生めるに非ず。また蛭子と淡嶋とは、子の例に入れず)故ここに伊邪那岐命詔りたまはく、「愛しき我がなに妹の命を、子の一つ木に易へつるかも」と。乃ち御枕方に匍匐ひ、御足方に匍匐ひて哭きたまふ時、御涙に成りませる神は、香山の畝尾の木の本に坐す、名は泣沢女神。(那邇の二字は音を以てす。下これに効へ)
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『神皇正統記』巻一 天神七代次、素戔烏尊を生ます。いさみたけく不忍にして父母の御心にかなはず。「根の国にいね。」との給ふ。この三柱は男神にてまします。よりて一女三男と申也。すべてあらゆる神みな二神の所生にましませど、国の主たるべしとて生給しかば、ことさらに此四神を申伝けるにこそ。其後火神軻倶突智を生ましましし時、陰神やかれて神退給にき。陽神うらみいかりて、火神を三段にきる。その三段おのおの神となる。血のしたゝりもそゝいで神となれり。経津主の神健甕槌神の祖也。陽神猶したひて黄泉までおはしましてさまざまのちかひありき。陰神うらみて「此国の人を一日に千頭ころすべし。」との給ければ、陽神は「千五百頭を生べし。」との給けり。よりて百姓をば天の益人とも云ふ。死るものよりも生ずるものおほき也。陽神かへり給て、日向の小戸の河檍が原と云所にてみそぎし給。この時あまたの神化生し玉へり。日月神もこゝにて生給と云説あり。伊弉諾尊神功すでにをはりければ、天上にのぼり、天祖に報命申て、即天にとゞまり給けりとぞ。或説に伊弉諾・伊弉冊は梵語なり、伊舎那天・伊舎那后なりと云ふ。
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『古事記』上巻・黄泉比良坂の問答ここに御佩せる十拳剣を抜きて、後手にふきつつ(この四字は音を以てす)逃げ来ませるを、猶ほ追ひて、黄泉比良坂(比良の二字は音を以てす)の坂本に到りし時、その坂本に在る桃子三つを取りて待ち撃ちたまひしかば、悉く逃げ返りき。ここに伊邪那岐命、桃子に告りたまはく、「汝、吾を助けしが如く、葦原中国に所有るうつしき(この四字は音を以てす)青人草の、苦しき瀬に落ちて患惚む時に、助けてよ」と告りて、名を賜ひて意富加牟豆美命と号けたまひき。(意より美までは音を以てす)最後に、その妹伊邪那美命、身自ら追ひ来ましき。ここに千引の石をその黄泉比良坂に引き塞へて、その石を中に置きて、各対ひ立ちて、事戸を度す時、伊邪那美命言ひたまはく、「愛しき我がなせの命、かくせば、汝の国の人草、一日に千頭絞り殺さむ」。ここに伊邪那岐命詔りたまはく、「愛しき我がなに妹の命、汝然せば、吾は一日に千五百の産屋を立てむ」。ここを以ちて一日に必ず千人死に、一日に必ず千五百人生まるるなり。故、その伊邪那美命を号けて黄泉津大神と謂ふ。亦云はく、その追ひ及きしを以ちて道敷大神と号くと。
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『古事記』上巻・神世七代と国生みの始まり上の件の五柱の神は、別天神。次に成りませる神の名は、国之常立神。(訓常立も亦上の如し)次に豊雲上野神。この二柱の神も亦、独神と成りまして、身を隠したまひき。次に成りませる神の名は、宇比地邇神。次に妹須比智邇去神。(この二神の名は音を以てす)次に角杙神。次に妹活杙神。(二柱)次に意富斗能地神。次に妹大斗乃弁神。(この二神の名も亦音を以てす)次に淤母陀琉神。次に妹阿夜訶志古泥神。(この二神の名は皆音を以てす)次に伊邪那岐神。次に妹伊邪那美神。(この二神の名も亦音を以てすること上の如し)上の件、国之常立神より以下、伊邪那美神より以前を、并せて神世七代と称ふ。(上の二柱は独神各一代と云ひ、次に双べる十神は各二神を合せて一代と云ふ)ここに天つ神諸の命以ちて、伊邪那岐命・伊邪那美命の二柱の神に、「この漂へる国を修め理り固め成せ」と詔りたまひて、天の沼矛を賜ひて、言依さしたまひき。故、二柱の神、天の浮橋に立たして(訓立を多多志と云ふ)、その沼矛を指し下ろして画きたまへば、塩こをろこをろに(この七字は音を以てす)画き鳴して(訓鳴を那志と云ふ)引き上げたまふ時、その矛の末より垂り落つる塩、累り積りて嶋と成りき。これ淤能碁呂嶋なり。(淤より以下四字は音を以てす)その嶋に天降りまして、天の御柱を見立て、八尋殿を見立てたまひき。
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『古事記』上巻・禊祓と十二神の誕生亦その黄泉坂に塞れる石は、道反大神と号け、亦塞り坐す黄泉戸大神とも謂ふ。故、その謂はゆる黄泉比良坂は、今、出雲国の伊賦夜坂と謂ふ。ここを以ちて伊邪那岐大神詔りたまはく、「吾は、いなしこめしこめき(この九字は音を以てす)穢き国に到りてありけり。(この二字は音を以てす)故、吾は御身の禊を為む」と詔りたまひて、筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原(阿波岐の三字は音を以てす)に到り坐して、禊ぎ祓へたまひき。故、投げ棄てたまふ御杖に成りませる神の名は、衝立船戸神。次に投げ棄てたまふ御帯に成りませる神の名は、道之長乳歯神。次に投げ棄てたまふ御裳に成りませる神の名は、時置師神。次に投げ棄てたまふ御衣に成りませる神の名は、和豆良比能宇斯能神。(この神名は音を以てす)次に投げ棄てたまふ御褌に成りませる神の名は、道俣神。次に投げ棄てたまふ御冠に成りませる神の名は、飽咋之宇斯能神。(宇より以下三字は音を以てす)次に投げ棄てたまふ左の御手の手纏に成りませる神の名は、奥疎神。(訓奥を淤伎と云ひ、訓疎を奢加留と云ふ。下これに効へ)次に奥津那芸佐毘古神。(那より以下五字は音を以てす。下これに効へ)次に奥津甲斐弁羅神。(甲より以下四字は音を以てす。下これに効へ)次に投げ棄てたまふ右の御手の手纏に成りませる神の名は、辺疎神。

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