啓発録 / 擇朋友
世ノ中ニ益友ホド難有難得者ハナク候間一人ニテモ有之バ何分大切ニスベシ總テ友ニ交ルニ飮食歡娛ノ上ニテ附合遊山釣魚ニテ狎合ハ不宜學問ノ講究武事ノ練習士タル志ノ研究心合ノ吟味ヨリ交ヲ納レ可申事ニ候
新字:世ノ中ニ益友ホド難有難得者ハナク候間一人ニテモ有之バ何分大切ニスベシ総テ友ニ交ルニ飲食歓娯ノ上ニテ附合遊山釣魚ニテ狎合ハ不宜学問ノ講究武事ノ練習士タル志ノ研究心合ノ吟味ヨリ交ヲ納レ可申事ニ候
書き下し
世の中に益友ほど難有難得者はなく候間、一人にても有之ば、何分大切にすべし。総て友に交るに、飲食歓娯の上にて附合、遊山釣魚にて狎合は不宜。学問の講究、武事の練習、士たる志の研究、心合の吟味より交を納れ可申事に候。
現代語訳
世の中に益友ほどありがたく、得がたい存在はありませんので、たとえ一人でもいるならば、ぜひとも大切にしてください。総じて友と交わるときに、飲み食いや楽しみごとの場で付き合い、行楽や釣りでなれ合うのはよくありません。学問を究めること、武芸を練ること、士としての志を研究すること、心の通じ合いを吟味することから、交わりを受け入れていくべきです。
解説
益友は得がたいという一文は短いながら、左内が友をどれだけ重く見ていたかを示しています。続く部分では、交わりの入口を、飲食や歓楽、遊山や釣りに置かず、学問、武事、志、心合に置くよう求めています。ここで言う狎合は、気安さに甘えて緊張感を失うことです。少年が自分の友付き合いを戒める文なので厳しく見えますが、遊びそのものを禁じているわけではなく、何を交友の核に据えるかを問うています。社内の関係も、親睦会の盛り上がりだけで築くと、仕事の壁にぶつかったときに支え合えません。共通の課題や志を土台にした関係を意図的に作ることが、チームの強さにつながります。
この章句が説くこと
益友志心合狎合学問啓発録
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