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啓発録 / 擇朋友

飮食遊山ニテ狎合候朋友ハ其平生ハ腕ヲ扼リ肩ヲ拍チ互ニ知己知己ト稱シ居リ候ベ共無事ノ時吾德ヲ補フニ足ラズ有事ノ時吾危難ヲ救ヒクレ候者ニテハナシコレハ成リ丈屢出會不致吾身ヲ嚴重ニ致シ附合候テ必狎昵致シ吾道ヲ褻サヌ樣ニシテ何トカ工夫ヲ凝シテ其者ヲ正道ニ導キ武道學問ノ筋ニ勸メ込ミ候事友道ナリ

新字:飲食遊山ニテ狎合候朋友ハ其平生ハ腕ヲ扼リ肩ヲ拍チ互ニ知己知己ト称シ居リ候ベ共無事ノ時吾徳ヲ補フニ足ラズ有事ノ時吾危難ヲ救ヒクレ候者ニテハナシコレハ成リ丈屡出会不致吾身ヲ厳重ニ致シ附合候テ必狎昵致シ吾道ヲ褻サヌ様ニシテ何トカ工夫ヲ凝シテ其者ヲ正道ニ導キ武道学問ノ筋ニ勧メ込ミ候事友道ナリ

書き下し

飲食遊山にて狎合候朋友は、其平生は腕を扼り肩を拍ち、互に知己知己と称し居り候べ共、無事の時吾徳を補ふに足らず、有事の時吾危難を救ひくれ候者にてはなし。これは成り丈屢出会不致、吾身を厳重に致し附合候て、必狎昵致し吾道を褻さぬ様にして、何とか工夫を凝して其者を正道に導き、武道学問の筋に勧め込み候事、友道なり。

現代語訳

飲み食いや行楽でなれ合っている友は、ふだんは腕をつかみ肩をたたいて、互いに知己だ知己だと言い合っていますが、何事もないときには私の徳を補うには足りず、事があるときには私の危難を救ってくれる者でもありません。こうした友とは、できるだけたびたび会わないようにし、自分の身を厳しく保って付き合い、決して馴れ馴れしくなって自分の道を汚さないようにして、何とか工夫をこらしてその人を正しい道に導き、武道や学問の筋に進めてあげることが、友の道です。

解説

知己と呼び合う仲が、平時の徳の補いにも有事の救いにもならない、という観察は鋭いものです。親しさの濃さと、頼りになる度合いは別物だと左内は言っています。ただし処方は絶縁ではなく、会う回数を抑え、自分の身を厳しく保ち、相手を武道や学問に導くよう工夫することです。距離をとりながらも見限らない姿勢が、友道として示されています。十五歳の記述ですが、人付き合いの要点が押さえられています。組織でも、仲の良さだけで固まった小集団は、危機の際に実は動かないことがあります。関係の温度は保ちつつ、その人を仕事の面で成長する方向へ引き上げる関わりが、本当の意味での支えになります。

この章句が説くこと

知己狎昵友道有事距離啓発録

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