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大和俗訓 / 巻之一・為学上

一學問はまづ志を立つるを以て本とす。志とは心のゆく所なり。道を知り行ひて、君子に至らんと思ふ心常におこたりなく、念々やまざるを、志を立つると云ふ。志たゝざれば學ぶこと成就せず。故に古人も、志ある者は其事つひになるといひ、又志たつは學の半なりといへり。たとへば弓いる者の、的に志し、道ゆく者の、宿に志すが如し。よろづの事、まづ本をつとむべし。志を立つるは學問の本なり。志を立つるには勇猛なるべし。柔弱にして怠るべからず。おこたれば驗なくしてはかゆかず。道を求むるにせちなる志は、たとへば飢ゑて食を求め、渴きて湯水を求むるが如くなるべしわづかに悠々としておこたれば、志すたる。唯此道に心を一すぢにすべし。

新字:一学問はまづ志を立つるを以て本とす。志とは心のゆく所なり。道を知り行ひて、君子に至らんと思ふ心常におこたりなく、念々やまざるを、志を立つると云ふ。志たゝざれば学ぶこと成就せず。故に古人も、志ある者は其事つひになるといひ、又志たつは学の半なりといへり。たとへば弓いる者の、的に志し、道ゆく者の、宿に志すが如し。よろづの事、まづ本をつとむべし。志を立つるは学問の本なり。志を立つるには勇猛なるべし。柔弱にして怠るべからず。おこたれば験なくしてはかゆかず。道を求むるにせちなる志は、たとへば飢ゑて食を求め、渇きて湯水を求むるが如くなるべしわづかに悠々としておこたれば、志すたる。唯此道に心を一すぢにすべし。

書き下し

一学問はまづ志を立つるを以て本とす。志とは心のゆく所なり。道を知り行ひて、君子に至らんと思ふ心常におこたりなく、念々やまざるを、志を立つると云ふ。志たたざれば学ぶこと成就せず。故に古人も、志ある者は其事つひになるといひ、又志たつは学の半なりといへり。たとへば弓いる者の、的に志し、道ゆく者の、宿に志すが如し。よろづの事、まづ本をつとむべし。志を立つるは学問の本なり。志を立つるには勇猛なるべし。柔弱にして怠るべからず。おこたれば験なくしてはかゆかず。道を求むるにせちなる志は、たとへば飢ゑて食を求め、渇きて湯水を求むるが如くなるべしわづかに悠々としておこたれば、志すたる。唯此道に心を一すぢにすべし。

現代語訳

一、学問はまず志を立てることを根本とします。志とは心の向かうところです。道を知り行って君子に至ろうと思う心が常に怠りなく、一念一念やむことがないのを、志を立てるといいます。志が立たなければ学ぶことは成就しません。ですから古人も「志ある者はその事がついに成る」と言い、また「志が立つのは学の半ばである」と言いました。たとえば弓を射る者が的を目指し、道を行く者が宿を目指すようなものです。すべてのことは、まず根本に努めるべきです。志を立てるのは学問の根本です。志を立てるには勇ましく強くあるべきです。柔弱で怠ってはなりません。怠れば効果がなく、はかどりません。道を求める切実な志は、たとえば飢えて食べ物を求め、渇いて湯水を求めるようであるべきです。少しでものんびりと怠れば志はすたれます。ただこの道に心を一筋にすべきです。

解説

学問の根本は志を立てることだと説く段です。「志ある者は事竟に成る」は『後漢書』に見える光武帝の言葉として知られます。益軒は志を、的を狙う射手や宿を目指す旅人にたとえ、さらに飢えた人が食を求めるほどの切実さが要ると言います。目標があいまいなまま勉強や仕事を始めると、続かずに途中で止まってしまいがちです。何のために学ぶのかをはっきりさせ、それを毎日思い出すことが、継続のいちばんのこつだと教えてくれます。

この章句が説くこと

志学問目標継続君子

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