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啓発録 / 勉學

且又世間ニハ愚俗多ク候故學問ヲ致シ候ト兎角驕謾ノ心起リ浮調子ニ成テ或ハ功名富貴ニ念動キ才氣聰明ニ伐リ度病折々出來候モノニテ候コレヲ自ラ愼ミ可申ハ勿論ニ候ヘドモ茲ニハ良友ノ規箴至テ肝要ニ候間何分交友ヲ擇ミ吾仁ヲ輔ケ吾德ヲ足シ候工夫可有之候

新字:且又世間ニハ愚俗多ク候故学問ヲ致シ候ト兎角驕謾ノ心起リ浮調子ニ成テ或ハ功名富貴ニ念動キ才気聰明ニ伐リ度病折々出来候モノニテ候コレヲ自ラ慎ミ可申ハ勿論ニ候ヘドモ茲ニハ良友ノ規箴至テ肝要ニ候間何分交友ヲ択ミ吾仁ヲ輔ケ吾徳ヲ足シ候工夫可有之候

書き下し

且又世間には愚俗多く候故、学問を致し候と兎角驕謾の心起り、浮調子に成て、或は功名富貴に念動き、才気聡明に伐り度病折々出来候ものにて候。これを自ら慎み可申は勿論に候へども、茲には良友の規箴至て肝要に候間、何分交友を択み、吾仁を輔け吾徳を足し候工夫可有之候。

現代語訳

そのうえ、世の中には愚かで俗っぽい人が多いため、学問をするととかく驕りたかぶる心が起こり、浮ついた調子になって、功名や富貴に心が動いたり、才気や聡明さを誇りたくなったりする病が、ときどき出てくるものです。これを自分で慎まなければならないのはもちろんですが、ここでは良い友の戒めと忠告がきわめて大切ですから、ぜひとも交友を選び、自分の仁を助け、徳を足していく工夫をするべきです。

解説

この句は勉学の章の締めであり、次の交友の章へつなぐ橋になっています。学問を積むほど人は驕りやすいという指摘は、知識が増えた人ほど自分は正しいという感覚を持ちやすい、という現代の経験とも重なります。左内が挙げる病は、功名、富貴、才気の三つで、いずれも他人の評価に関わるものです。そこで自力の慎みだけに頼らず、良友の規箴、つまり戒めと忠告を外から借りよ、と話が進みます。実績を上げて昇進した管理職ほど、率直に異を唱える人が周りから減っていきます。意図して耳の痛い助言をくれる相手を持つことは、組織の上に立つ人の仕事の一部です。

この章句が説くこと

驕慢規箴良友功名学問啓発録

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