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啓発録 / 勉學

然ル處年少ノ間ハ兎角打續キ業ニ就キ居候事ヲ厭ヒ忽讀忽廢シ忽習文忽講武トイフ樣ニ暫ク宛ニテ倦怠致スモノナリ此甚タ不宜勉ト申スハ力ヲ推究メ打續キ推遂候處ノ氣味有之字ニテ何分久ヲ積ミ思ヲ詰不申候ハデハ萬事功ハ見ヱ不申候マシテ學問ハ物ノ理ヲ說キ筋ヲ明カニスル義ニ候ヱバ右ノ如ク輕忽粗鹵ノ致シ方ニテ眞ノ道義ハ見ヱ不申中々有用實着ノ學問ニハナリ申サヌナリ

新字:然ル処年少ノ間ハ兎角打続キ業ニ就キ居候事ヲ厭ヒ忽読忽廃シ忽習文忽講武トイフ様ニ暫ク宛ニテ倦怠致スモノナリ此甚タ不宜勉ト申スハ力ヲ推究メ打続キ推遂候処ノ気味有之字ニテ何分久ヲ積ミ思ヲ詰不申候ハデハ万事功ハ見ヱ不申候マシテ学問ハ物ノ理ヲ説キ筋ヲ明カニスル義ニ候ヱバ右ノ如ク軽忽粗鹵ノ致シ方ニテ真ノ道義ハ見ヱ不申中々有用実着ノ学問ニハナリ申サヌナリ

書き下し

然る処、年少の間は兎角打続き業に就き居候事を厭ひ、忽読忽廃し、忽習文忽講武といふ様に、暫く宛にて倦怠致すものなり。此甚た不宜。勉と申すは、力を推究め打続き推遂候処の気味有之字にて、何分久を積み思を詰不申候はでは、万事功は見ゑ不申候。まして学問は物の理を説き筋を明かにする義に候ゑば、右の如く軽忽粗鹵の致し方にて、真の道義は見ゑ不申、中々有用実着の学問にはなり申さぬなり。

現代語訳

ところが、年が若いうちはとかく同じ仕事を続けることをいやがり、読んだかと思うとやめ、文章を習ったかと思うとすぐ武芸を修めるというように、少しの間だけで飽きてしまうものです。これはまことによくありません。勉という字は、力を尽くして突きつめ、続けてやり遂げるという趣のある字であって、長い時間を積み重ね、思いをつめなければ、何事も成果は見えてきません。ましてや学問は物事の道理を説き、筋道をはっきりさせることですから、右のように軽はずみで粗雑なやり方では、本当の道義は見えず、役に立つ実のある学問にはとうていなれないのです。

解説

勉学の章の冒頭で、左内は若者の飽きっぽさを真正面から取り上げています。読む、やめる、文を習う、武を講ずる、と短い間隔で気が移ることを、倦怠として退けています。勉の字を、力を尽くして続け遂げる意味に解くのは、字義から戒めを引く当時の学び方らしいところです。十五歳の少年が自分の癖を見抜いて書いたと考えると、言葉の硬さの裏に切実さがあります。仕事の場でも、新しい手法を次々に試しては定着させずに終わる管理職や、数か月で配置が変わり何も身につかない若手は同じ型です。成果は積んだ時間に比例して見えてくるので、続ける設計こそが育成の土台になります。

この章句が説くこと

勉学継続倦怠学問実学啓発録

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