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啓発録 / 勉學

不幸ニシテ亂世ニ逢ヒ候ハバ各々我居場所ノ任ヲ果シテ寇賊ヲ討平ゲ禍亂ヲ克ク定メ可申或ハ太刀鎗ノ功名組打ノ手柄致シ或ハ陣屋ノ中ニアリテ謀畧ヲ贊畵シテ敵ヲ墨ニシ或ハ兵糧小荷駄ノ奉行トナリテ萬兵ノ飢渴不致兵力ノ不減樣ニ心配致シ候事抔兼々修練可致義ニ候此等ノ事ヲ致シ候ニハ胸ニ古今ヲ包ミ腹ニ形勢機畧ヲ譜ジ藏メ居ラズシテハ叶ハヌ事共多ク候ヱバ學問ヲ專務トシテ勉メ行フベキハ讀書シテ吾知識ヲ明カニ致シ吾心膽ヲ練リ候事肝要ニ候

新字:不幸ニシテ乱世ニ逢ヒ候ハバ各々我居場所ノ任ヲ果シテ寇賊ヲ討平ゲ禍乱ヲ克ク定メ可申或ハ太刀鎗ノ功名組打ノ手柄致シ或ハ陣屋ノ中ニアリテ謀略ヲ賛畵シテ敵ヲ墨ニシ或ハ兵糧小荷駄ノ奉行トナリテ万兵ノ飢渇不致兵力ノ不減様ニ心配致シ候事抔兼々修練可致義ニ候此等ノ事ヲ致シ候ニハ胸ニ古今ヲ包ミ腹ニ形勢機略ヲ譜ジ蔵メ居ラズシテハ叶ハヌ事共多ク候ヱバ学問ヲ専務トシテ勉メ行フベキハ読書シテ吾知識ヲ明カニ致シ吾心胆ヲ練リ候事肝要ニ候

書き下し

不幸にして乱世に逢ひ候はば、各々我居場所の任を果して、寇賊を討平げ、禍乱を克く定め可申。或は太刀鎗の功名組打の手柄致し、或は陣屋の中にありて謀略を賛画して敵を墨にし、或は兵糧小荷駄の奉行となりて、万兵の飢渇不致、兵力の不減様に心配致し候事抔、兼々修練可致義に候。此等の事を致し候には、胸に古今を包み、腹に形勢機略を譜じ蔵め居らずしては叶はぬ事共多く候ゑば、学問を専務として勉め行ふべきは、読書して吾知識を明かに致し、吾心胆を練り候事肝要に候。

現代語訳

不幸にして乱世に遭ったなら、それぞれ自分の持ち場の任を果たして、賊を討ち平らげ、禍乱をよく鎮めるべきです。あるいは太刀や槍の功名、組み討ちの手柄を立て、あるいは陣屋の中にあって謀略を補佐して敵を抑え、あるいは兵糧や小荷駄の奉行となって、万兵が飢えや渇きに苦しまず兵力が減らないように心を配るなど、ふだんから修練しておくべきことです。これらを行うには、胸に古今の事を包み、腹に形勢や機略を暗記して納めていなければならないことが多いので、学問を専らに勉め行うべきことは、読書して自分の知識を明らかにし、自分の心胆を練ることが肝要です。

解説

前の句の続きで、乱世に遭った場合の備えを述べます。各自の持ち場で賊を討ち、太刀や槍の功名、陣中での謀略の補佐、兵糧や荷駄の奉行として兵を飢えさせない配慮など、役割は違っても平素から修練すべきだと言います。そのためには胸に古今の事を包み、形勢や機略を腹に収めておく必要があり、学問では読書によって知識を明らかにし、心胆を練ることが肝要だと結びます。注目したいのは、功名だけでなく兵糧の手配のような裏方も同じ重みで挙げている点です。組織でも、前線の成果と後方の支えは同じ学びを要する仕事です。有事に備えて平時に学ぶという考え方は、危機管理や事業承継の準備にそのまま通じます。

この章句が説くこと

勉学学問乱世心胆兵糧啓発録

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