啓発録 / 勉學
學ト申ハ忠孝ノ筋ト文武ノ業トヨリ外ニハ無之君ニ忠ヲ竭シ親ニ孝ヲ盡スノ眞心ヲ以テ文武ノ事ヲ骨折勉强致シ御治世ノ時ニハ御側ニ被召使候ヘバ君ノ御過ヲ補ヒ匡シ御德ヲ彌增ニ盛ンニナシ奉リ御役人トナリ候時ハ其役所ノ事首尾能取修メ依怙贔負不致賄賂請謁ヲ不受公平廉直ニシテ其一局何レモ其威ニ畏レ其德ニ懷キ候程ノ仕ワザナシ可申義ヲ平世ニ心掛ケ居リ
新字:学ト申ハ忠孝ノ筋ト文武ノ業トヨリ外ニハ無之君ニ忠ヲ竭シ親ニ孝ヲ尽スノ真心ヲ以テ文武ノ事ヲ骨折勉強致シ御治世ノ時ニハ御側ニ被召使候ヘバ君ノ御過ヲ補ヒ匡シ御徳ヲ弥增ニ盛ンニナシ奉リ御役人トナリ候時ハ其役所ノ事首尾能取修メ依怙贔負不致賄賂請謁ヲ不受公平廉直ニシテ其一局何レモ其威ニ畏レ其徳ニ懐キ候程ノ仕ワザナシ可申義ヲ平世ニ心掛ケ居リ
書き下し
学と申は、忠孝の筋と文武の業とより外には無之。君に忠を竭し親に孝を尽すの真心を以て、文武の事を骨折勉強致し、御治世の時には御側に被召使候へば、君の御過を補ひ匡し、御徳を弥増に盛んになし奉り、御役人となり候時は、其役所の事首尾能取修め、依怙贔負不致、賄賂請謁を不受、公平廉直にして、其一局何れも其威に畏れ其徳に懐き候程の仕わざなし可申義を、平世に心掛け居り。
現代語訳
学というのは、忠孝の筋と文武の業より外にはありません。君に忠を尽くし親に孝を尽くす真心をもって、文武のことに骨を折り励み、太平の世にはお側に召し使われれば、君の過ちを補い正し、ご徳をいよいよ盛んにし申し上げ、役人となったときは、その役所の事を首尾よく取り納め、えこひいきをせず、賄賂や私的な頼み事を受けず、公平で廉直であって、その一局の者がみなその威に畏れその徳になつくほどの仕事ができるよう、平和な世のうちから心掛けておき、
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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啓発録・勉學学とはならふと申す事にて、総てよき人すぐれたる人の善き行ひ善き事業を迹付して習ひ参るをいふ。故に忠義孝行の事を見ては、直に其人の忠義孝行の所為を慕ひ倣ひ、吾も急度其人の忠義孝行に負けず劣らず勉め行き候事、学の第一義なり。然るを後世に至り字義を誤り、詩文や読書を学と心得候は、笑かしき事どもなり。
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啓発録・勉學不幸にして乱世に逢ひ候はば、各々我居場所の任を果して、寇賊を討平げ、禍乱を克く定め可申。或は太刀鎗の功名組打の手柄致し、或は陣屋の中にありて謀略を賛画して敵を墨にし、或は兵糧小荷駄の奉行となりて、万兵の飢渇不致、兵力の不減様に心配致し候事抔、兼々修練可致義に候。此等の事を致し候には、胸に古今を包み、腹に形勢機略を譜じ蔵め居らずしては叶はぬ事共多く候ゑば、学問を専務として勉め行ふべきは、読書して吾知識を明かに致し、吾心胆を練り候事肝要に候。
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啓発録・勉學然る処、年少の間は兎角打続き業に就き居候事を厭ひ、忽読忽廃し、忽習文忽講武といふ様に、暫く宛にて倦怠致すものなり。此甚た不宜。勉と申すは、力を推究め打続き推遂候処の気味有之字にて、何分久を積み思を詰不申候はでは、万事功は見ゑ不申候。まして学問は物の理を説き筋を明かにする義に候ゑば、右の如く軽忽粗鹵の致し方にて、真の道義は見ゑ不申、中々有用実着の学問にはなり申さぬなり。
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啓発録・振氣吾々共聊にても学問の筋心掛け、忠義の片端も小耳に挟み候上は、何とぞ一生の中に粉骨砕身して、露滴ほどにても御恩に報い度事にて候。此忠義の心を撓まず、引立、後還り致さぬ様に致候は、全く右の士気を引立振起し、人の下に安ぜぬと申す事を忘れぬこと肝要に候。
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『初学訓』巻之二一君臣父子は大倫なり。故に、忠孝の二は、殊に、力を尽すべし。よろづのこと、学ばざれば、誠の志ありても、其道を知らざれば、忠が不忠になり、孝も不孝になる。故に、殊更、忠孝の道をよく学び、其法を知りて行ふべし。古人も、学問は、忠と孝とを行ふ所なりといへり。万善ありといへども、忠孝の道うすくば、君子とすべからず。一夫婦は、別を道とす。別とは、内外貴賤のわかちありて、混乱せざるなり。夫婦は、子孫の相つづく故にして、人倫のはじめなり。夫は外ををさめ、婦は内ををさむ。夫は、婦に礼義正しく、婦は、夫に和順なるべし。然るに、馴れ親しきにまかせて、敬と和とを失へば、其道たたず。婦人は、多くは愚なり。道にたがはば、教へ正すべし、怒るべからず。怒れば和を失ふ。
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『文武訓』文訓上されば詩文つくる事をきらふにはかはるべし。人となりて、忠孝以下の人の道をきらはば、不孝の子、不忠の臣となりて、天地の間の大なるとが人にあらずや。かかる人は世に立ちがたし。しかれば、学問をきらひて世に立たんとするは、狼藉の人なるべし。
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