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啓発録 / 振氣

吾々共聊ニテモ學問ノ筋心掛ケ忠義ノ片端モ小耳ニ挾ミ候上ハ何トゾ一生ノ中ニ粉骨碎身シテ露滴ホドニテモ御恩ニ報イ度事ニテ候此忠義ノ心ヲ撓マズ引立後還リ致サヌ樣ニ致候ハ全ク右ノ士氣ヲ引立振起シ人ノ下ニ安ゼヌト申ス事ヲ忘レヌコト肝要ニ候

新字:吾々共聊ニテモ学問ノ筋心掛ケ忠義ノ片端モ小耳ニ挟ミ候上ハ何トゾ一生ノ中ニ粉骨砕身シテ露滴ホドニテモ御恩ニ報イ度事ニテ候此忠義ノ心ヲ撓マズ引立後還リ致サヌ様ニ致候ハ全ク右ノ士気ヲ引立振起シ人ノ下ニ安ゼヌト申ス事ヲ忘レヌコト肝要ニ候

書き下し

吾々共聊にても学問の筋心掛け、忠義の片端も小耳に挟み候上は、何とぞ一生の中に粉骨砕身して、露滴ほどにても御恩に報い度事にて候。此忠義の心を撓まず、引立、後還り致さぬ様に致候は、全く右の士気を引立振起し、人の下に安ぜぬと申す事を忘れぬこと肝要に候。

現代語訳

私ども、少しでも学問の筋に心がけ、忠義の片端でも小耳に挟んだ以上は、何とか一生のうちに粉骨砕身して、露の一滴ほどでも御恩に報いたいものです。この忠義の心をたわませず、引き立てて、後戻りしないようにするには、まったく先に述べた士気を引き立て奮い起こし、人の下に安んじないということを忘れないことが肝心です。

解説

第二項の結びにあたる段で、士気を振るうことの目的を、報恩と忠義に結びつけています。学問に心がけ、忠義の片端でも耳にした以上は、一生のうちに露の一滴ほどでも報いたいという言葉には、背伸びのない切実さがあります。忠義の心を後戻りさせない手段が、人の下に安んじない士気の保ち方だと説く点が、この段の要です。ここで士気は、威張るための性質ではなく、志を支える土台として位置づけ直されます。現代の仕事では、学んだことを実務に使い切り、受けた期待に報いる姿勢がこれに近いでしょう。気持ちの高ぶりよりも、持続させる工夫が組織の信頼を作ります。

この章句が説くこと

報恩忠義士気粉骨砕身持続啓発録

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