韓非子 / 內儲說下六微第三十一
左右有私不善者,乃爲之請王曰:「公子甚貧,馬甚瘦,王何不益之馬食?」王不許。左右因微令夜燒芻廐。王以爲賤公子也,乃誅之。魏有老儒而不善濟陽君。客有與老儒私怨者,因攻老儒殺之,以德於濟陽君,曰:「臣爲其不善君也,故爲君殺之。」濟陽君因不察而賞之。一曰:濟陽君有少庶子,有不見知欲入愛於君者。齊使老儒掘藥於馬梨之山,濟陽少庶子欲以爲功,入見於君曰:「齊使老儒掘藥於馬梨之山,名掘藥也,實間君之國。君不殺之,是將以濟陽君抵罪於齊矣。臣請刺之。」君曰:「可。」於是明日得之城陰而刺之,濟陽君還益親之。四。陳需,魏王之臣也,善於荆王,而令荆攻魏。荆攻魏,陳需因請爲魏王行解之,因以荆勢相魏。韓昭侯之時,黍種嘗貴甚。昭侯令人覆廪,吏果竊黍種而糶之甚多。昭奚恤之用荆也,有燒倉廥窌者而不知其人。昭奚恤令吏執販茅者而問之,果燒也。昭僖侯之時,宰人上食而羮中有生肝焉,昭侯召宰人之次而誚之曰:「若何爲置生肝寡人羮中?」宰人頓首服死罪,曰:「竊欲去尚宰人也。」一曰:僖侯浴,湯中有礫。僖侯曰:「尚浴免,則有當代者乎?」左右對曰:「有。」僖侯曰:「召而來。」譙之曰:「何爲置礫湯中?」對曰:「尚浴免,則臣得代之,是以置礫湯中。」
新字:左右有私不善者,乃為之請王曰:「公子甚貧,馬甚痩,王何不益之馬食?」王不許。左右因微令夜焼芻厩。王以為賤公子也,乃誅之。魏有老儒而不善済陽君。客有与老儒私怨者,因攻老儒殺之,以徳於済陽君,曰:「臣為其不善君也,故為君殺之。」済陽君因不察而賞之。一曰:済陽君有少庶子,有不見知欲入愛於君者。斉使老儒掘薬於馬梨之山,済陽少庶子欲以為功,入見於君曰:「斉使老儒掘薬於馬梨之山,名掘薬也,実間君之国。君不殺之,是将以済陽君抵罪於斉矣。臣請刺之。」君曰:「可。」於是明日得之城陰而刺之,済陽君還益親之。四。陳需,魏王之臣也,善於荆王,而令荆攻魏。荆攻魏,陳需因請為魏王行解之,因以荆勢相魏。韓昭侯之時,黍種嘗貴甚。昭侯令人覆廪,吏果窃黍種而糶之甚多。昭奚恤之用荆也,有焼倉廥窌者而不知其人。昭奚恤令吏執販茅者而問之,果焼也。昭僖侯之時,宰人上食而羹中有生肝焉,昭侯召宰人之次而誚之曰:「若何為置生肝寡人羹中?」宰人頓首服死罪,曰:「窃欲去尚宰人也。」一曰:僖侯浴,湯中有礫。僖侯曰:「尚浴免,則有当代者乎?」左右対曰:「有。」僖侯曰:「召而来。」譙之曰:「何為置礫湯中?」対曰:「尚浴免,則臣得代之,是以置礫湯中。」
書き下し
左右に私かに善からざる者有り、乃ち之が為に王に請ひて曰く、「公子甚だ貧しく、馬甚だ痩す、王何ぞ之に馬食を益さざる。」王許さず。左右因りて微かに夜芻廐を焼かしむ。王以て賤公子と為すや、乃ち之を誅す。魏に老儒有りて済陽君に善からず。客に老儒と私怨有る者有り、因りて老儒を攻めて之を殺し、以て済陽君に徳として曰く、「臣其の君に善からざるが為なり、故に君の為に之を殺せり。」済陽君因りて察せずして之を賞す。一に曰く、済陽君に少庶子有り、知られずして君に愛を入れんと欲する者有り。斉老儒をして薬を馬梨の山に掘らしむ、済陽の少庶子以て功と為さんと欲し、入りて君に見えて曰く、「斉老儒をして薬を馬梨の山に掘らしむ、名は薬を掘るなるも、実は君の国を間するなり。君之を殺さずんば、是れ将に済陽君を以て罪を斉に抵さんとす。臣請ふ之を刺さん。」君曰く、「可なり。」是に於て明日之を城陰に得て之を刺す、済陽君還りて益ます之を親しむ。四。陳需は、魏王の臣なり、荊王に善し、而して荊をして魏を攻めしむ。荊魏を攻む、陳需因りて魏王の為に行きて之を解かんことを請ひ、因りて荊の勢を以て魏に相たり。韓の昭侯の時、黍種嘗て貴きこと甚し。昭侯人をして廩を覆さしむ、吏果して黍種を竊みて之を糶ること甚だ多し。昭奚恤の荊に用ひらるるや、倉廥窌を焼く者有りて其の人を知らず。昭奚恤吏をして茅を販ぐ者を執へて之を問はしむ、果して焼けり。昭僖侯の時、宰人食を上るに羹中に生肝有り、昭侯宰人の次を召して之を誚めて曰く、「若何為れぞ生肝を寡人の羹中に置く。」宰人頓首して死罪に服して曰く、「竊かに尚宰人を去らんと欲するなり。」一に曰く、僖侯浴す、湯中に礫有り。僖侯曰く、「尚浴免ぜらるれば、則ち当に代るべき者有るか。」左右対へて曰く、「有り。」僖侯曰く、「召して来れ。」之を譙めて曰く、「何為れぞ礫を湯中に置く。」対へて曰く、「尚浴免ぜらるれば、則ち臣之に代るを得ん、是を以て礫を湯中に置く。」
現代語訳
(中山王の)側近に、ひそかにその公子と仲の悪い者がいた。そこで公子のためを装って王に願い出た。「公子はたいそう貧しく、馬もひどく痩せています。王はどうして馬の飼料を増やしてやらないのですか。」王は許さなかった。側近はそこでひそかに人をやって夜にまぐさ小屋を焼かせた。王は身分の低い公子の仕業だと思い、公子を誅殺した。魏に老いた儒者がいて、済陽君と仲が悪かった。ある客が老儒と私怨を抱いていたので、老儒を襲って殺し、済陽君に恩を売って言った。「あの者があなたと仲が悪かったので、あなたのために殺したのです。」済陽君は調べもせずに褒美を与えた。別の伝えでは、こうである。済陽君の年若い近侍に、まだ主君に知られておらず、寵愛を得たいと願う者がいた。斉が老儒に馬梨山で薬草を掘らせていた。済陽君の近侍はこれを手柄にしようとして、主君に目通りして言った。「斉が老儒に馬梨山で薬草を掘らせていますが、名目は薬草掘りでも、実はあなたの国を探っているのです。あなたが彼を殺さなければ、あなたは斉に罪を問われることになりましょう。どうか私に刺し殺させてください。」済陽君が「よかろう」と言うと、翌日、城の北側で老儒を見つけて刺し殺した。済陽君はかえってますますその近侍を親しんだ。(ここから説四。)陳需は魏王の臣であったが、楚王と親しく、楚に魏を攻めさせた。楚が魏を攻めると、陳需は魏王のために出向いて和解を取りつけたいと願い出て、楚の後ろ盾で魏の宰相になった。韓の昭侯の時代、黍の種がひどく高騰したことがあった。昭侯が人をやって倉を調べさせると、案の定、倉役人が黍の種を盗んで大量に売っていた。昭奚恤が楚で用いられていたとき、倉を焼いた者がいたが、誰かわからなかった。昭奚恤は役人に茅を売る者を捕らえて取り調べさせると、はたして彼が焼いたのだった。韓の昭僖侯の時代、料理番が食事を出すと、吸い物の中に生のレバーが入っていた。昭侯が料理番の次席を呼んで責めた。「お前はなぜ生のレバーを私の吸い物に入れたのか。」料理番は頭を地につけて死罪を認め、「ひそかに料理長を追い出したかったのです」と言った。別の伝えでは、こうである。僖侯が入浴すると、湯の中に小石があった。僖侯が「今の湯殿係が罷免されたら、代わりになる者はいるか」と言うと、側近は「おります」と答えた。僖侯は「呼んでこい」と言い、その者を責めた。「なぜ湯の中に小石を入れたのか。」その者は答えた。「今の湯殿係が罷免されれば、私が代わりになれます。だから湯の中に小石を入れたのです。」
解説
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『韓非子』內儲說下六微第三十一魏王の臣二人済陽君に善からず、済陽君因りて偽りて人をして王命を矯めて己を攻めんと謀らしむ。王人をして済陽君に問はしめて曰く、「誰と恨みあるか。」対へて曰く、「敢て与に恨むこと無し。然りと雖も、嘗て二人と善からず、以て此に至るに足らず。」王左右に問ふ、左右曰く、「固より然り。」王因りて二人の者を誅す。季辛と爰騫と相怨む。司馬喜新たに季辛と悪し、因りて微かに人をして爰騫を殺さしむ、中山の君以て季辛と為すや、因りて之を誅す。
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『韓非子』內儲說下六微第三十一荊王諸公子を四隣に宦せしめんと欲す、戴歇曰く、「不可なり。」「公子を四隣に宦せしむれば、四隣必ず之を重んぜん。」曰く、「子の出づる者は重し、重ければ則ち必ず重んずる所の国の党と為る、則ち是れ子に外市を教ふるなり、便ならず。」魯の孟孫・叔孫・季孫相戮力して昭公を劫かし、遂に其の国を奪ひて其の制を擅にす。魯の三桓公に偪る、昭公季孫氏を攻む、而して孟孫氏・叔孫氏相与に謀りて曰く、「之を救はんか。」叔孫氏の御者曰く、「我は、家臣なり、安んぞ公家を知らん。凡そ季孫有ると季孫無きと我に於て孰れか利ある。」皆曰く、「季孫無ければ必ず叔孫無し。」「然らば則ち之を救へ。」是に於て西北の隅を撞きて入る。孟孫叔孫の旗の入るを見て、亦之を救ふ。三桓一と為り、昭公勝たず。之を逐ふ、乾侯に死す。公叔韓に相として斉を攻むる有り、公仲甚だ王に重んぜらる、公叔王の公仲を相とせんことを恐れ、斉・韓をして約して魏を攻めしむ。公叔因りて斉軍を鄭に内れ、以て其の君を劫かし、以て其の位を固め、而して両国の約を信にす。翟璜は、魏王の臣なり、而して韓に善し。乃ち韓兵を召きて之をして魏を攻めしめ、因りて魏王の為に之を搆はんことを請ひて以て自ら重くす。越王呉王を攻む、呉王謝して服を告ぐ、越王之を許さんと欲す。范蠡・大夫種曰く、「不可なり。
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