韓非子 / 內儲說下六微第三十一
及夷射去,刖跪因捐水郎門霤下,類溺者之狀。明日,王出而訶之,曰:「誰溺於是?」刖跪對曰:「臣不見也。雖然,昨日中大夫夷射立於此。」王因誅夷射而殺之。
新字:及夷射去,刖跪因捐水郎門霤下,類溺者之状。明日,王出而訶之,曰:「誰溺於是?」刖跪対曰:「臣不見也。雖然,昨日中大夫夷射立於此。」王因誅夷射而殺之。
書き下し
門者刖跪...因て水を郎門の雷下に捐てて、溺せる者の狀に類す。明日、王出でて之を訶して曰く、「誰か是に溺せる。」刖跪對えて曰く、「...然りと雖も、昨日中大夫夷射此に立てり。」王因て夷射を誅して之を殺せり。
現代語訳
門番の刖跪は...(夷射への恨みから)わざと門の下に水をまき、誰かが小便(溺)をしたように見せかけた 。翌日、王が「誰がここで小便をしたか」と怒ると、刖跪は「存じませんが、昨日、中大夫の夷射様がここに立っておられました」と答えた。王は(夷射が犯人だと思い込み)彼を処刑した 。
解説
門番の刖跪は、以前自分を侮辱した夷射への恨みを晴らすため、門の下にわざと水をまいて誰かが立ち小便をしたように見せかけました。翌朝、王が「誰の仕業だ」と問い詰めると、刖跪は「私は存じませんが、昨日はちょうど夷射様がここに立っておられました」とだけ答え、あとは何も言いません。それだけで王は夷射を疑い、処刑してしまいました。ここには、動かぬ事実(水がまかれていた)と、もっともらしい状況(夷射が居合わせた)を組み合わせるだけで、まったくの作り話でも本当らしく見えてしまうという恐ろしさが描かれています。学校でも近所付き合いでも、「たまたまその場に居合わせた」というだけの理由で犯人扱いされる人がいます。人の上に立つ者は、噂や状況だけで人を裁かず、本人の言い分を聞き、裏付けを取ってから判断する慎重さを持たねばなりません。
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