韓非子 / 備內第十七
非輿人仁而匠人賊也,人不貴,則輿不售;人不死,則棺不買。
書き下し
輿人仁にして匠人賊なるに非ざるなり。人貴からざれば、則ち輿售れず。人死せざれば、則ち棺買はれず。
現代語訳
(車を作る者が人の富貴を願い、棺を作る者が人の早死にを願うのは)車職人が情け深く、棺職人が残酷だからではない。人が富貴にならなければ車は売れず、人が死ななければ棺は買われないからである。
解説
「備内」篇で、利害が人の願いを決めることを、職人のたとえで示した有名な一節です。直前には、医者が人の傷の膿を口で吸うのは肉親の情からではなく利益のためだという話があります。車を作る職人は人が出世して車を買うことを願い、棺を作る職人は人が早く死ぬことを願う。それは善人か悪人かの違いではなく、どちらも自分の商売の利益に従っているだけだと韓非は言います。前の一節の后妃が君主の死を願うのも同じ理屈です。人の言動を性格で判断する前に、その人が何によって利益を得る立場にいるかを見ることが、人を理解する近道だという教えです。
関連する章句
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『韓非子』備內第十七輿人、輿を成せば則ち人の富貴ならんことを欲し、匠人、棺を成せば、則ち人の夭死せんことを欲す。
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『韓非子』備內第十七情、人を憎むに非ざるなり、利、人の死するに在ればなり。故に后妃・夫人・太子の黨成りて君の死を欲するなり。君死せざれば、則ち勢重からず。情、君を憎むに非ざるなり、利、君の死するに在ればなり。故に人主は己の死を利とする者に心を加へざる可からず。故に日月は暈(かさ)外を圍めども、其の賊は内に在り。其の憎む所に備ふるも、禍は愛する所に在り。
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『韓非子』備內第十七且つ万乗の主、千乗の君、后妃・夫人・適子の太子為る者、或いは其の君の蚤く死せんことを欲する者有り。何を以て其の然るを知る。夫れ妻は、骨肉の恩有るに非ざるなり。愛すれば則ち親しみ、愛せざれば則ち疎んず。語に曰く、「其の母好き者は其の子抱かる」と。然らば則ち其の之が反を為すや、其の母悪しき者は其の子釈てらる。丈夫年五十にして好色未だ解けざるなり、婦人年三十にして美色衰ふ。衰美の婦人を以て好色の丈夫に事ふれば、則ち身は疎賤せられ、而して子は後と為らざるを疑ふ。此れ后妃・夫人の其の君の死を冀ふ所以の者なり。唯母后と為りて子主と為れば、則ち令行はれざるは無く、禁止まざるは無く、男女の楽しみ先君に減ぜずして、万乗を擅にして疑はれず。此れ鴆毒扼昧の用ゐらるる所以なり。故に桃左春秋に曰く、「人主の疾死する者は半ばに処ること能はず」と。人主知らざれば、則ち乱資多し。故に曰く、利君の死する者衆ければ、則ち人主危しと。
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『韓非子』備內第十七人臣の其の君に於けるや、骨肉の親有るに非ざるなり。勢に縛られて事へざるを得ざるなり。
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『韓非子』備內第十七夫れ妻の近きと子の親しきを以てして、而も猶ほ信ず可からざれば、則ち其の餘は信ず可き者無し。
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『韓非子』備內第十七醫善く人の瘍を吮い、人の血を含むは、骨肉の親に非ざるなり。利の加わる所なり。