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韓非子 / 亡徵第十五

不爲人主之孝,而慕匹夫之孝,不顧社稷之利,而聽主母之令,女子用國,刑餘用事者,可亡也。辭辯而不法,心智而無術,主多能而不以法度從事者,可亡也。親臣進而故人退,不肖用事而賢良伏,無功貴而勞苦賤,如是則下怨;下怨者,可亡也。父兄大臣禄秩過功,章服侵等,宫室供養大侈,而人主弗禁,則臣心無窮;臣心無窮者,可亡也。公壻公孫與民同門,暴慠其隣者,可亡也。

新字:不為人主之孝,而慕匹夫之孝,不顧社稷之利,而聴主母之令,女子用国,刑余用事者,可亡也。辞弁而不法,心智而無術,主多能而不以法度従事者,可亡也。親臣進而故人退,不肖用事而賢良伏,無功貴而労苦賤,如是則下怨;下怨者,可亡也。父兄大臣禄秩過功,章服侵等,宮室供養大侈,而人主弗禁,則臣心無窮;臣心無窮者,可亡也。公壻公孫与民同門,暴慠其隣者,可亡也。

書き下し

人主の孝を為さずして、匹夫の孝を慕ひ、社稷の利を顧みずして、主母の令を聴き、女子国を用ひ、刑余事を用ふる者は、亡ぶべきなり。辞辯にして法ならず、心智にして術無く、主多能にして法度を以て事に従はざる者は、亡ぶべきなり。親臣進みて故人退き、不肖事を用ひて賢良伏し、功無きもの貴くして労苦するもの賤し。是くの如くなれば則ち下怨む。下怨む者は、亡ぶべきなり。父兄大臣、禄秩功に過ぎ、章服等を侵し、宮室供養大いに侈にして、人主禁ぜざれば、則ち臣の心窮まり無し。臣の心窮まり無き者は、亡ぶべきなり。公壻公孫、民と門を同じくし、其の隣に暴慠なる者は、亡ぶべきなり。

現代語訳

君主としての孝行(国を守ること)を果たさず、庶民としての孝行(親への個人的な孝養)を慕い、国家の利益を顧みずに君主の母の命令に従い、女性が国政を動かし、刑を受けた宦官が政務を取り仕切る国は、滅びる恐れがある。言葉は弁が立つが法にかなわず、心は賢いが術がなく、君主が多芸多才でありながら法度によって事を行わない国は、滅びる恐れがある。新たに親しくなった臣が進み古くからの臣が退き、愚かな者が政務を執って賢良な者が隠れ、功のない者が貴ばれて苦労した者が卑しめられる。そうなれば下の者が恨む。下の者が恨む国は、滅びる恐れがある。君主の父兄や大臣の俸禄や位が功績を超え、衣服や紋章が身分の等級を越え、宮殿や暮らしぶりがひどく贅沢なのに、君主が禁じなければ、臣下の欲望は際限がなくなる。臣下の欲望に際限がない国は、滅びる恐れがある。君主の婿や孫が民と同じ門構えの所に住み、その近隣に乱暴で傲慢に振る舞う国は、滅びる恐れがある。

解説

「亡徴」の終盤の五条です。第一条の「人主の孝」と「匹夫の孝」の区別は興味深く、君主には個人として親に尽くすことより、国を守ることが求められると韓非は言います。母后の命令に従って国の利益を損なうのは、私情が公務に優先した例です。第二条は、君主が有能で弁も立つのに、法と術によらず自分の才覚で事を運ぶ危うさ。第三条は、功のない者が報われ苦労した者が軽んじられるときの下の者の恨み。どれも、個人の才能や情よりも公の仕組みを重んじる韓非の姿勢が貫かれています。有能なトップほど自分の才覚に頼りがちであることへの戒めとして読めます。

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