韓非子 / 亡徵第十五
亡徵者,非曰必亡,言其可亡也。夫兩堯不能相王,兩桀不能相亡;亡、王之機,必其治亂、其强弱相踦者也。木之折也必通蠹,墻之壞也必通隙。然木雖蠹,無疾風不折;墻雖隙,無大雨不壞。
新字:亡徴者,非曰必亡,言其可亡也。夫両堯不能相王,両桀不能相亡;亡、王之機,必其治乱、其强弱相踦者也。木之折也必通蠹,墻之壊也必通隙。然木雖蠹,無疾風不折;墻雖隙,無大雨不壊。
書き下し
亡徴とは、必ず亡ぶと日うに非ず、其の亡ぶ可きを言うなり。…木の折るるや必ず蠹を通じ、牆の壊るるや必ず隙を通ず。…然れども木蠹すと雖も、疾風無ければ折れず、牆隙すと雖も、大雨無ければ壊れず。
現代語訳
「亡びの兆候(亡徴)」とは、今すぐ必ず滅びるという意味ではなく、滅びる「可能性」があるということだ。木が折れるのは必ず内部に虫食い(蠹)があり、壁が壊れるのは必ず内部に隙間(隙)があるからだ。しかし、虫食いの木も「激しい風(疾風)」がなければ折れず、隙間のある壁も「大雨」がなければ壊れない。
解説
「滅びの兆し」とは、それがあれば必ず今すぐ滅びるという意味ではなく、滅びる可能性があるということだ、と韓非は言います。木が折れるのは必ず内側に虫食いがあるからであり、壁が崩れるのは必ず内側に隙間があるからです。しかし虫食いのある木も、激しい風が吹かなければ折れることはなく、隙間のある壁も、大雨が降らなければ崩れることはありません。これは家庭でも会社でも同じで、普段は表に出ない小さなほころび、たとえば会話の少なさや不公平な扱い、目先だけの判断の積み重ねは、穏やかな日々の中では気づかれないまま放置されがちです。ところが、思いがけない不況や病気、大きな揉め事といった強い風が吹いたとき、内側に隙間や虫食いを抱えていた家庭や集まりほど、あっけなく崩れてしまいます。平穏なうちにこそ、内側のほころびに目を向けておくことが大切だと教えてくれる一節です。
この章句が説くこと
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