韓非子 / 八姦第九
八曰四方。何謂四方?曰:君人者,國小則事大國,兵弱則畏强兵。大國之所索,小國必聽;强兵之所加,弱兵必服。爲人臣者,重賦斂,盡府庫,虚其國以事大國,而用其威求誘其君;甚者舉兵以聚邊境而制斂於内,薄者數内大使以震其君,使之恐懼,此之謂「四方」。凡此八者,人臣之所以道成姦,世主所以壅劫,失其所有也,不可不察焉。明君之於内也,娛其色而不行其謁,不使私請。其於左右也,使其身必責其言,不使益辭。其於父兄大臣也,聽其言也必使以罰任於後,不令妄舉。其於觀樂玩好也,必令之有所出,不使擅進擅退,不使羣臣虞其意。
新字:八曰四方。何謂四方?曰:君人者,国小則事大国,兵弱則畏強兵。大国之所索,小国必聴;強兵之所加,弱兵必服。為人臣者,重賦斂,尽府庫,虚其国以事大国,而用其威求誘其君;甚者舉兵以聚辺境而制斂於内,薄者数内大使以震其君,使之恐懼,此之謂「四方」。凡此八者,人臣之所以道成姦,世主所以壅劫,失其所有也,不可不察焉。明君之於内也,娯其色而不行其謁,不使私請。其於左右也,使其身必責其言,不使益辞。其於父兄大臣也,聴其言也必使以罰任於後,不令妄舉。其於観楽玩好也,必令之有所出,不使擅進擅退,不使羣臣虞其意。
書き下し
八に曰く四方。何をか四方と謂ふ。曰く、人に君たる者は、国小なれば則ち大国に事へ、兵弱ければ則ち強兵を畏る。大国の索むる所は、小国必ず聴き、強兵の加ふる所は、弱兵必ず服す。人臣為る者は、賦斂を重くし、府庫を尽くし、其の国を虚しくして以て大国に事へ、而して其の威を用ゐて其の君を求誘す。甚だしき者は兵を挙げて以て辺境に聚めて内に制斂し、薄き者は数々大使を内れて以て其の君を震はし、之をして恐懼せしむ、此を之れ四方と謂ふ。凡そ此の八者は、人臣の道りて姦を成し、世主の壅劫せられ、其の有する所を失ふ所以なり、察せざるべからず。明君の内に於けるや、其の色を娯しみて其の謁を行はず、私請せしめず。其の左右に於けるや、其の身を使ひて必ず其の言を責め、辞を益さしめず。其の父兄大臣に於けるや、其の言を聴くや必ず罰を以て後に任ぜしめ、妄りに挙げしめず。其の観楽玩好に於けるや、必ず之をして出づる所有らしめ、擅に進め擅に退くを使めず、群臣をして其の意を虞らしめず。
現代語訳
八つ目は「四方」、すなわち外国の力を使うことである。四方とは何か。君主というものは、国が小さければ大国に仕え、兵が弱ければ強い兵を恐れる。大国が求めるものを小国は必ず聞き入れ、強い兵が迫れば弱い兵は必ず屈する。臣下は税を重くし国庫を空にし、国を空しくしてまで大国に仕え、その大国の威光を利用して自国の君主を誘い動かす。ひどい場合は大国に兵を挙げさせて国境に集め、国内を締めつけさせ、軽い場合はたびたび大国の使者を招き入れて君主を震え上がらせ、恐れさせる。これを「四方」を使うという。およそこの八つは、臣下が悪事を成し遂げ、世の君主が塞がれ脅かされて、持っているものを失う原因であり、よく見極めなければならない。明君は、後宮に対しては女色を楽しんでもその頼みごとは聞き入れず、私的な願いをさせない。側近に対しては、その者を使ったら必ずその言葉の責任を問い、余計な言葉を加えさせない。父兄や大臣に対しては、その言葉を聞いたら必ず後で罰によって責任を負わせ、みだりに人を推挙させない。見物や音楽や珍しい品に対しては、必ずその出所を明らかにさせ、勝手に献上させたり下げさせたりせず、臣下たちに君主の心を推し量らせない。
解説
関連する章句
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『韓非子』八姦第九其の説議に於けるや、称誉する者の善とする所、毀疵する者の悪む所、必ず其の能を実にし、其の過ちを察し、群臣をして相為に語らしめず。其の勇力の士に於けるや、軍旅の功は賞を踰ゆる無く、邑闘の勇は罪を赦す無く、群臣をして私財を行はしめず。其の諸侯の求索に於けるや、法なれば則ち之を聴き、法ならざれば則ち之を距ぐ。所謂亡君とは、其の国を有する莫きに非ざるなり、而して之を有する者皆己の有に非ざるなり。臣をして外を以て内に制を為さしむれば、則ち是れ人に君たる者亡ぶ。大国に聴くは亡を救はんが為なり、而して亡ぶこと聴かざるより亟やかなり、故に聴かず。群臣聴かざるを知れば、則ち諸侯に外せず。
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『韓非子』八姦第九凡そ人臣の道りて姦を成す所の者に八術有り。一に曰く同牀に在り。何をか同牀と謂ふ。曰く、貴夫人、愛孺子、便僻好色は、此れ人主の惑ふ所なり。燕処の虞に託し、酔飽の時に乗じて、其の欲する所を求む、此れ必ず聴かるるの術なり。
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『韓非子』八姦第九此れ皆倶に進み倶に退き、皆応じ皆対へ、辞を一にし軌を同じくして以て主の心を移す者なり。人臣為る者内は之に事ふるに金玉玩好を以てし、外は之が為に不法を行ひ、之をして其の主を化せしむ、此を之れ在旁と謂ふ。三に曰く父兄。何をか父兄と謂ふ。曰く、側室の公子は、人主の親愛する所なり。大臣廷吏は、人主の与に度計する所なり。此れ皆力を尽くし議を畢くし、人主の必ず聴く所なり。人臣為る者公子側室に事ふるに音声子女を以てし、大臣廷吏を収むるに辞言を以てし、約に処りて事を言はしめ、事成れば則ち爵を進め禄を益し、以て其の心を勧め、其の主を犯さしむ、此を之れ父兄と謂ふ。四に曰く養殃。何をか養殃と謂ふ。曰く、人主宮室台池を美にするを楽しみ、子女狗馬を飾りて以て其の心を娯しましむるを好む、此れ人主の殃なり。
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『韓非子』八經第四十八故に明主は公私の分を審らかにし、利害の地を審らかにすれば、姦乃ち乘ずる所無し。亂の生ずる所は六なり。主母、后姬、子姓、弟兄、大臣、顯賢なり。吏に任じ臣を責むれば、主母放ならず。禮施等を異にすれば、后姬疑はず。勢を分かちて貳ならざれば、庶適爭はず。權籍を失はざれば、兄弟侵さず。下一門ならざれば、大臣擁せず。禁賞必ず行はるれば、顯賢亂れず。臣に二因有り、外内を謂ふなり。外を畏と曰ひ、内を愛と曰ふ。畏るる所の求め得られ、愛する所の言聽かるるは、此れ亂臣の因る所なり。外國の諸吏を置く者は、誅を結び親暱を重帑にすれば、則ち外籍らず。爵禄功に循ひ、請ふ者俱に罪せらるれば、則ち内因らず。外籍らず、内因らざれば、則ち姦宄塞がる。官節を襲ねて進み、以て大任に至るは、智なり。其の位至りて任大なる者は、三節を以て之を持す。曰く質、曰く鎮、曰く固。親戚妻子は、質なり。爵禄厚くして必なるは、鎮なり。參伍して責め怒るは、固なり。賢者は質に止まり、貪饕は鎮に化し、姦邪は固に窮す。忍びて制せざれば則ち下上り、小除かざれば則ち大いに誅す、而して名實當らば則ち之を徑す。生きては事を害し、死しては名を傷つくれば、則ち飲食を行ふ。然らずんば、而ち其の讎に與ふ、此れを陰姦を除くと謂ふなり。翳ふを詭と曰ひ、詭を易と曰ふ。功を見て賞し、罪を見て罰すれば、詭乃ち止む。是非泄れず、說諫通ぜざれば、易乃ち用ひられず。父兄賢良播出するを遊禍と曰ふ、其の患は鄰敵資多し。僇辱の人近習するを狎賊と曰ふ、其の患は忿を發し辱を疑ふの心生ず。怒を藏し罪を持して發せざるを增亂と曰ふ、其の患は徼幸妄舉の人起こる。大臣兩重衡を提げて踦ならざるを卷禍と曰ふ、其の患は家隆にして劫殺の難作る。脱易にして自ら神ならざるを彈威と曰ふ、其の患は賊夫酖毒の亂起こる。此の五患は、人主之を知らざれば、則ち劫殺の事有り。
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『韓非子』説疑第四十四故に曰く、人臣に五姦有り、而して主知らざるなり。人臣為る者、財貨賂を侈用して以て誉を取る者有り、慶賞賜予を務めて以て衆を移す者有り、朋党を務め智を徇へ士を尊びて以て擅逞する者有り、解免赦罪獄を務めて以て威を事とする者有り、奉下直曲・怪言・偉服・瑰称を務めて以て民の耳目を眩はす者有り。此の五者は、明君の疑ふ所なり、而して聖主の禁ずる所なり。此の五者を去れば、則ち譟詐の人敢て北面して立談せず、文言多く実行寡なくして法に当たらざる者も敢て情を誣ひて以て談説せず。是を以て群臣居れば則ち身を修め、動けば則ち力に任じ、上の令に非ざれば敢て擅に作り疾言して事を誣ひず、此れ聖王の臣下を牧する所以なり。彼の聖主明君は、疑物に適ひて以て其の臣を闚はざるなり。疑物を見て反する無き者は、天下に鮮し。故に曰く、孽に適に擬するの子有り、配に妻に擬するの妾有り、廷に相に擬するの臣有り、臣に主に擬するの寵有り、此の四者は、国の危ふき所なり。故に曰く、内寵后に並び、外寵政を弐にし、枝子適に配し、大臣主に擬するは、乱の道なり。故に周記に曰く、「妾を尊びて妻を卑しむる無かれ、適子を孽にして小枝を尊ぶ無かれ、嬖臣を尊びて上卿に匹する無かれ、大臣を尊びて以て其の主に擬する無かれ。」四擬破るれば、則ち上に意無く、下に怪無し。四擬破れざれば、則ち身を隕し国を滅ぼす。
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『韓非子』八經第四十八廢置の事、内に生ずれば則ち治まり、外に生ずれば則ち亂る。是を以て明主は功を以て之を内に論じ、而して利を以て之を外に資す、故に其の國治まりて敵亂る。亂に即くの道は、臣憎めば則ち外より起こすこと眩の若く、臣愛すれば則ち内より起こすこと藥の若し。四。參伍の道は、參を行ひて以て多きを謀り、伍を揆りて以て失を責む。參を行ふは必ず拆き、伍を揆るは必ず怒る。拆かざれば則ち上を瀆し、怒らざれば則ち相和す。拆くの徵は以て多寡を知るに足り、怒るの前は其の衆に及ばず。觀聽の勢は、其の徵比周に在りて異を賞するなり、謁する毋きを誅して罪同じくす。言衆端に會すれば、必ず之を揆るに地を以てし、之を謀るに天を以てし、之を驗するに物を以てし、之を叄するに人を以てす。四徵なる者符すれば、乃ち以て觀るべし。言を參して以て其の誠を知り、視を易へて以て其の澤を改め、見を執りて以て非常を得。一たび用ひて以て近習を務め、言を重ねて以て遠使を懼れしむ。往を舉げて以て其の前を悉くし、邇に即きて以て其の内を知り、䟽置して以て其の外を知る。明を握りて以て闇き所を問ひ、詭使して以て黷泄を絶つ。言を倒にして以て疑ふ所を嘗み、反を論じて以て陰姦を得。諫を設けて以て獨爲を綱し、錯を舉げて以て姦動を觀る。說を明らかにして以て過を避くるを誘ひ、卑適して以て直諂を觀る。聞を宣べて以て未だ見ざるを通じ、鬬を作して以て朋黨を散ず。一を深くして以て衆心を警め、異を泄らして以て其の慮を易へしむ。似類なれば則ち其の參を合はせ、過を陳ぶれば則ち其の固を明らかにす。罪を知りて罪を辟けて以て威を止め、陰使時に循ひて以て衷を省み、漸く更めて以て通比を離す。下約して以て其の上を侵さしむ。相室は其の廷臣を約し、廷臣は其の官屬を約し、軍吏は其の兵士を約し、遣使は其の行介を約し、縣令は其の辟吏を約し、郎中は其の左右を約し、后姬は其の宮媛を約す。此れを之れ條達の道と謂ふ。言通じ事泄るれば、則ち術行はれず。五。明主は、其の務め周密に在り。是を以て喜見はるれば則ち德償はれ、怒見はるれば則ち威分かる。