韓非子 / 八姦第九
其於德施也,縱禁財,發墳倉,利於民者,必出於君,不使人臣私其德。
新字:其於徳施也,縦禁財,発墳倉,利於民者,必出於君,不使人臣私其徳。
書き下し
其の徳施に於けるや、禁財を縦ち、墳倉を發し、民に利する者は必ず君より出だして、人臣をして其の徳を私せしめず。
現代語訳
恩恵を施すにあたっては、君主の財物を放出し、穀物倉庫を開くなど、民衆に利益を与えることは必ず君主から行うようにして、臣下にその恩徳を私物化させないようにする。
解説
恵みを施すときには、蔵にしまってある財物を放ち、穀物倉を開いて民に分け与えるといったことも含め、人々の利益になることは必ず主人自身から出すようにし、家来にその恩を自分の手柄のように私物化させてはならないと韓非子は説きます。会社で言えば、昇給や褒賞といった恵みは、すべて会社の公式な決まりごととして、誰の目にも分かる形で公平に与えられるべきだということです。もし特定の管理職の気に入り具合だけで恵みの大小が決まるようであれば、部下はその管理職個人にだけ恩を感じ、会社全体への信頼は育ちません。人の上に立つ者は、恵みの出どころが常に組織全体の公正な仕組みであることを保ち、誰か一個人の私的な貸し借りにしてしまわないよう気を配る必要があります。
この章句が説くこと
恩恵の私物化公平性人事制度インセンティブ公私混同
関連する章句
-
『韓非子』外儲説右上第三十四夫れ鳥を馴らす者は其の下翎を断つ。其の下翎を斷たば、則ち必ず人に恃みて食う。焉んぞ馴れざるを得んや。夫れ明主の臣を畜うも亦た然り。
-
『韓非子』有度第六故に明主は法をして人を擇ばしめ、自ら舉げざるなり。法をして功を量らしめ、自ら度らざるなり。
-
『韓非子』顕学第五十侈にして墯なる者は貧しく、力めて倹なる者は富む。今上、富人に徵斂して以て貧家に布施するは、是れ力倹を奪いて侈墯に与うるなり。而して民の疾く作りて用を節せんことを索めんと欲するも、得可からざるなり。
-
『韓非子』內儲說上七術第三十韓の昭侯人をして弊袴を蔵せしむ。...昭侯曰く、「...吾必ず功有る者を待たん。故に之を藏し未だ予うる有らざるなり。」
-
『韓非子』飾邪第十九故に公私に分有り。...明主上に在れば、則ち人臣私心を去り公義を行う。亂主上に在れば、則ち人臣公義を去り私心を行う。
-
『韓非子』愛臣第四故に死を赦さず、刑を宥(ゆる)さず。死を赦し刑を宥すは、是を威淫と謂ふ。社稷將に危からんとし、國家威に偏す。是の故に大臣の禄は大なりと雖も、城市に威を藉(か)るを得ず。黨與衆しと雖も、士卒を臣とするを得ず。故に人臣の國に處るや私朝無く、軍に居るや私交無く、其の府庫は私かに家に貸すを得ず。