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君子訓 / 巻之下

一太公望曰、以不仁得之以不仁守之、必及其亡也。言ふこゝろは、不仁にして國を得たる人、不仁を以て其國を守れば、かならず其一代にて亡ぶ。大和唐土其ためし多し。國の長久するは、其君仁なればなり。亡ぶるは不仁なればなり。桀紂以下歷代不仁の君亡びざるはなし。堯舜湯武はいふも更なり、漢の高祖文帝、後漢の光武、唐の太宗、其餘歴代の賢君は、皆仁心ありし故、國長久せり。凡國家の興亡、身の安危、皆仁と不仁とによれり。禹湯は己が身をせむ、故に榮え給ふ。桀紂は人をせむ、故に亡びたり。己を責むるは仁なり、人を責むるは不仁なり。仁の道豈勤めざるべけんや。

新字:一太公望曰、以不仁得之以不仁守之、必及其亡也。言ふこゝろは、不仁にして国を得たる人、不仁を以て其国を守れば、かならず其一代にて亡ぶ。大和唐土其ためし多し。国の長久するは、其君仁なればなり。亡ぶるは不仁なればなり。桀紂以下歴代不仁の君亡びざるはなし。堯舜湯武はいふも更なり、漢の高祖文帝、後漢の光武、唐の太宗、其余歴代の賢君は、皆仁心ありし故、国長久せり。凡国家の興亡、身の安危、皆仁と不仁とによれり。禹湯は己が身をせむ、故に栄え給ふ。桀紂は人をせむ、故に亡びたり。己を責むるは仁なり、人を責むるは不仁なり。仁の道豈勤めざるべけんや。

書き下し

一太公望曰く、不仁を以て之を得、不仁を以て之を守れば、必ず其の亡に及ぶなり。言ふこころは、不仁にして国を得たる人、不仁を以て其国を守れば、かならず其一代にて亡ぶ。大和唐土其ためし多し。国の長久するは、其君仁なればなり。亡ぶるは不仁なればなり。桀紂以下歴代不仁の君亡びざるはなし。堯舜湯武はいふも更なり、漢の高祖文帝、後漢の光武、唐の太宗、其余歴代の賢君は、皆仁心ありし故、国長久せり。凡国家の興亡、身の安危、皆仁と不仁とによれり。禹湯は己が身をせむ、故に栄え給ふ。桀紂は人をせむ、故に亡びたり。己を責むるは仁なり、人を責むるは不仁なり。仁の道豈勤めざるべけんや。

現代語訳

太公望は「不仁によって国を得て、不仁によってこれを守れば、必ず滅亡に至る」と言いました。その意味は、不仁によって国を得た人が不仁によってその国を守れば、必ずその一代で滅びるということです。日本にも中国にもその例は多くあります。国が長く続くのはその君が仁だからです。滅びるのは不仁だからです。桀・紂以下、歴代の不仁の君で滅びなかった者はいません。堯・舜・湯・武は言うまでもなく、漢の高祖と文帝、後漢の光武帝、唐の太宗、その他歴代の賢君は、みな仁の心があったので国が長く続きました。およそ国家の興亡も身の安危も、すべて仁と不仁とによります。禹と湯は自分の身を責めたので栄えられました。桀と紂は人を責めたので滅びました。自分を責めるのは仁であり、人を責めるのは不仁です。仁の道にどうして励まずにいられましょう。

解説

太公望の言葉を引き、国の興亡は君主の仁と不仁で決まると説く条です。仁によって続いた例として堯舜、漢の高祖と文帝、後漢の光武帝、唐の太宗を、滅びた例として夏の桀王と殷の紂王を挙げます。結びの「己を責むるは仁、人を責むるは不仁」が要で、禹と湯は過ちを自分のせいとして栄え、桀紂は人のせいにして滅びたというのです。問題が起きたときにまず自分の責任を問うリーダーの組織が長続きするという教えは、今にもよく当てはまります。

この章句が説くこと

仁興亡君主責任太公望

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