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言志四録 / 言志録 第百二条 禍は上より起る

諺云。禍自下起。余謂是亡國之言也。不可使人主誤信之。凡禍皆自上而起。雖其出於下者而亦必有所致。成湯之誥曰。爾萬方有罪。在予一人。爲人主者。當監此言。

新字:諺云。禍自下起。余謂是亡国之言也。不可使人主誤信之。凡禍皆自上而起。雖其出於下者而亦必有所致。成湯之誥曰。爾万方有罪。在予一人。為人主者。当監此言。

書き下し

諺に云ふ、「禍は下より起る」と。余謂ふ、是れ亡国の言なり。人主をして之を誤信せしむべからず。凡そ禍は皆上より起る。其の下より出づる者と雖も、亦必ず致す所有り。成湯の誥に曰く、「爾万方罪有らば、予一人に在り」と。人主たる者は、当に此の言に監みるべし。

現代語訳

諺に「災いは下から起こる」という。私は、これは国を滅ぼす言葉だと思う。君主にこれを誤って信じさせてはならない。およそ災いはみな上から起こる。たとえ下から起こったように見えるものでも、必ずそれを招いた原因が上にある。殷の成湯(湯王)の誥(天下に告げた言葉)に「汝ら万方の民に罪があれば、その責めは私一人にある」とある。君主たる者は、この言葉を手本として省みるべきである。

解説

責任の所在をめぐる、指導者にとって厳しい一条です。「禍は下より起る」という諺は、災いを部下や民のせいにする口実になります。一斎はこれを「亡国の言」と断じ、禍は必ず上から起こる、下から出たように見えても上にその原因があると言います。引かれる成湯の言葉は『書経』湯誥篇にあり、『論語』堯曰篇にも似た句が見えます。天下の罪を一身に引き受ける覚悟こそ、上に立つ者の本分だというのです。不祥事や失敗が現場で起きたとき、原因を現場に求めて終わらせていないか。仕組みや方針、あるいは自分の姿勢がそれを招いていないかを、上に立つ人が顧みるための言葉です。

この章句が説くこと

責任為政君主自省リーダーシップ

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