韓非子 / 顯學第五十
故孔子曰、「以容取人乎、失之子羽、以言取人乎、失之宰予。」・・・故明主之吏・宰相必起於州部、猛將必發於卒伍。
新字:故孔子曰、「以容取人乎、失之子羽、以言取人乎、失之宰予。」・・・故明主之吏・宰相必起於州部、猛将必発於卒伍。
書き下し
故に孔子曰く、「容を以て人を取らんか、之を子羽に失す、言を以て人を取らんか、之を宰予に失す。」・・・故に明主の吏・宰相は必ず州部より起こり、猛將は必ず卒伍より發る。
現代語訳
孔子は『見た目で人を選べば子羽を失い、言葉で人を選べば宰予を失う』と言われた。だから優れた君主の宰相は必ず地方の役人から起こり、猛将は必ず兵卒から生まれるのだ。
解説
孔子は「見た目で人を選べば子羽のような人物を見誤り、言葉の巧みさで選べば宰予のような人物を見誤る」と嘆いたと言います。だからこそ、優れた君主に仕える宰相は必ず地方の現場から取り立てられ、頼れる将軍は必ず一兵卒から育っていくのだと韓非は言います。学歴や見た目の印象、口のうまさだけで人を選ぶと、実際の力量を見誤ることが少なくありません。会社の採用や昇進はもちろん、町内会の役員を選ぶときや、子どもの習い事で誰にまとめ役を任せるかを決めるときも同じです。日々の現場でこつこつ結果を出してきた人を見極めて引き上げること。これこそが人選びで失敗しないための確かな道だと、この章句は教えています。
この章句が説くこと
採用昇進実力主義現場主義OJT
関連する章句
-
『韓非子』問田第四十二二君は聲詞に駆られ、辯説に眩い、屯伯に試みず、州部に關らず。故に政を失い國を亡うの患有り。
-
尉繚子・戰威賢を舉げ能に任すれば、時日せずして事利あり。法を明らかにし令を審らかにすれば、卜筮せずして吉を獲。功を貴び勞を養えば、禱祠せずして福を得。
-
論語・里仁篇子曰わく、位無きを患えず、立つ所以を患う。己を知る莫きを患えず、知らるべきを為すを求む。
-
『韓非子』外儲說左下第三十三夫れ橘柚を樹うる者は、之を食えば則ち甘く、之を嗅げば則ち香し。枳棘を樹うる者は、成れば而ち人を刺す。故に君子は樹つる所を慎む。
-
『宋名臣言行録』前集巻三・向敏中右僕射に除せらる。麻下るの日、翰學李昌武當に對すべし。真宗之に謂いて曰く、朕、即位より未だ嘗て右僕射を除せず。今日、以て敏中に命ず。此れ殊命なり。敏中は應に甚だ喜ぶべしと。對えて曰く、臣未だ宣麻を知らず。亦た敏中の何如なるかを知らずと。上曰く、敏中は今日、門下の賀客必ず多からん。卿往きて之を觀よ。明日却って對し来たれ。朕が意を言う勿かれと。昌武□丞相の歸るを、乃ち往きて之を見る。門に一人も無し。昌武徑ちに入りて之に見え、徐ろに賀して曰く、今日、降麻を聞く。士大夫歡慰せざるは莫しと。公但だ唯唯たり。又た曰く、上、即位より未だ嘗て端揆を除せず。自ら徳重く眷殊なるに非ずんば、何を以て此に至らんと。公復た唯唯たり。又た厯く前世の僕射為る者の勲勞徳業の盛んなる、禮命の重きを陳ぶ。公も亦た唯唯たり。卒に一言も無し。既に退き、復た人をして庖厨の中に至りて、今日、親戚賔客の宴飲する者有るや無きやを問わしむ。亦た寂として一人も無し。乃ち具さに見る所を以て對う。上笑いて曰く、敏中は大いに官職に耐うと。
-
『宋名臣言行録』前集巻四・冦凖王元之の子嘉祐、館職と為る。平時愚騃の若し。獨り公のみ之を知り、喜びて之と語る。公、開封府を知る。一旦、嘉祐に問いて曰く、外人、劣丈を謂うこと云何と。嘉祐曰く、外人皆な云う、丈人旦夕に相に入らんと。公曰く、吾が子の意に于いては何如と。嘉祐曰く、愚を以て之を觀るに、丈人は未だ相と為らざるを善しと為すに若かず。相たれば則ち譽望損せん。公曰く、何の故ぞと。曰く、古よりの賢相の能く功業を建て生民を澤す所以の者は、其の君臣相い得ること魚の水有るが如し。故に言聴かれ計從われて功名俱に美なり。今、丈人は天下の重望を負う。相たれば則ち中外に太平の責め有らん。丈人の明主に于ける、能く魚の水有るが若くならんや。此れ嘉祐の譽望の損ぜんことを恐るる所以なりと。公喜びて起ちて其の手を執りて曰く、元之は文章天下に冠たりと雖も、深識遠慮に至りては、殆ど吾が子に勝る能わずと。