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価原 / 『価原』至宝を守り遊手を本業へ戻す心

然レバ此至寶ヲ少シニテモ天地ノ間ニ生殖シ少シニテモ天地ノ間ニ存シ民生生生ノ用ヲ助クル程天ニ事フル務ハアラジ唯勢偏ニシテ郡縣ニ來歲凶饑ノ備ナク都會ニハ游手貪リ費スノ煩ヒ有テ之ヲ傷ムノ人ニ乏シ故ニ民ノ風ニ梳リ雨ニ沐ヒ星ニ耕シ露ニ耘リシ膏血ヲ文彩刻鏤音聲技巧ノ用ニ貪リ盡シ其生ズル者ヲシテ悶デ其費ス者ヲシテ播サシム意アル者豈藥目シテ憂ザルベケンヤ若コレヲ憂フル人アラバ一郡一縣ヲ治ンニモ何トゾ人ヲ一人ニテモ農ニカヘシ一人ニテモ游手ヲ本業ニ本ヅカシメ財貨他ヨリ入ルノ路ヲ開キ器械他ニ求メザルベキコソ肝要ナレ一國ヲ治ムル人ハ他國ヲ以テ壑トセザルヿヲ得ズ白圭ト禹ト勢同ジカラザルコトアリ

新字:然レバ此至宝ヲ少シニテモ天地ノ間ニ生殖シ少シニテモ天地ノ間ニ存シ民生生生ノ用ヲ助クル程天ニ事フル務ハアラジ唯勢偏ニシテ郡県ニ来歳凶饑ノ備ナク都会ニハ游手貪リ費スノ煩ヒ有テ之ヲ傷ムノ人ニ乏シ故ニ民ノ風ニ梳リ雨ニ沐ヒ星ニ耕シ露ニ耘リシ膏血ヲ文彩刻鏤音声技巧ノ用ニ貪リ尽シ其生ズル者ヲシテ悶デ其費ス者ヲシテ播サシム意アル者豈薬目シテ憂ザルベケンヤ若コレヲ憂フル人アラバ一郡一県ヲ治ンニモ何トゾ人ヲ一人ニテモ農ニカヘシ一人ニテモ游手ヲ本業ニ本ヅカシメ財貨他ヨリ入ルノ路ヲ開キ器械他ニ求メザルベキコソ肝要ナレ一国ヲ治ムル人ハ他国ヲ以テ壑トセザルヿヲ得ズ白圭ト禹ト勢同ジカラザルコトアリ

書き下し

然ればこの至宝を少しにても天地の間に生殖し、少しにても天地の間に存し、民生生生の用を助くるほど、天に事うる務めはあらじ。ただ勢い偏にして、郡県に来歳凶饑の備えなく、都会には遊手貪り費やすの煩いありて、これを傷むの人に乏し。故に民の風に梳り雨に沐い、星に耕し露に耘りし膏血を、文彩・刻鏤・音声・技巧の用に貪り尽くし、その生ずる者をして悶でしめ、その費やす者をして播さしむ。意ある者、あに薬目して憂えざるべけんや。もしこれを憂うる人あらば、一郡一県を治めんにも、何とぞ人を一人にても農に返し、一人にても遊手を本業に本づかしめ、財貨他より入るの路を開き、器械他に求めざるべきこそ肝要なれ。一国を治むる人は、他国をもって壑とせざることを得ず。白圭と禹と、勢い同じからざることあり。

現代語訳

そうであれば、この至宝(暮らしを支える実物)を少しでも天地の間に生み育て、少しでも天地の間に保ち、民が生きていく用を助けることほど、天に仕える務めはあるまい。ただ、勢いが偏っているために、郡県には来年の凶作や飢饉の備えがなく、都会には遊手が貪り費やす煩いがあって、これを心痛める人に乏しい。そのため、民が風に髪を梳き、雨に身を洗い、星の下で耕し、露の中で草を取ってきた血のにじむ財を、彩り、彫り飾り、音楽、技巧のために貪り尽くし、これを生み出した者を悶えさせ、これを費やす者に撒き散らさせている。心ある者が、どうして心を痛めて憂えずにいられようか。もしこれを憂える人がいるなら、一郡一県を治めるにも、何とかして人を一人でも農に返し、一人でも遊手を本業に立ち戻らせ、財貨が他から入る道を開き、器や道具を他に求めずに済むようにすることが肝要である。一国を治める人は、他国を水の捨て場としないわけにはいかない。白圭と禹とでは、事情が同じでないところがある。

解説

梅園は、米や布など暮らしを支える実物を、天地の間に少しでも生み出し、保つことが、天に仕える務めだと語ります。ところが、郡県には凶作への備えがなく、都会では遊手が貪り費やし、民の血のにじむ財が彩りや技巧のために尽きていくと憂えます。そこで、一人でも農に返し、遊手を本業に戻し、財貨の入る道を開き、器を他に頼らずに済む形が肝要だという提案です。会社でも、外に頼らず自社で価値を生む力を育てることは、備えにもなります。自社の強みを見直す契機になります。
『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

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この章句が説くこと

至宝凶饑の備え遊手本業膏血一国を治む

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