家道訓 / 巻之六・用財下
一東坡がいへる蔬食の三養あり。蔬食とは、味の淡薄なるものを食するを云ふ。一には、分を安んじて以て福をやしなふ。是はおごらざるなり。二には、胃をゆるくして以て氣をやしなふ。是は肥濃なる美味を多くくらへば、胃の氣をやぶる故なり。三には、費を省きて以て財を養ふ。是淡薄なるものは財の費なきなり。是亦家をたもつに益ある法なり。
新字:一東坡がいへる蔬食の三養あり。蔬食とは、味の淡薄なるものを食するを云ふ。一には、分を安んじて以て福をやしなふ。是はおごらざるなり。二には、胃をゆるくして以て気をやしなふ。是は肥濃なる美味を多くくらへば、胃の気をやぶる故なり。三には、費を省きて以て財を養ふ。是淡薄なるものは財の費なきなり。是亦家をたもつに益ある法なり。
書き下し
一東坡がいへる蔬食の三養あり。蔬食とは、味の淡薄なるものを食するを云ふ。一には、分を安んじて以て福をやしなふ。是はおごらざるなり。二には、胃をゆるくして以て気をやしなふ。是は肥濃なる美味を多くくらへば、胃の気をやぶる故なり。三には、費を省きて以て財を養ふ。是淡薄なるものは財の費なきなり。是亦家をたもつに益ある法なり。
現代語訳
蘇東坡が言った「蔬食の三養」があります。蔬食とは、味の淡い質素なものを食べることをいいます。一つには、分に安んじて福を養う。これは驕らないことです。二つには、胃をゆったりさせて気を養う。これは脂の濃い美味を多く食べれば胃の気を損なうからです。三つには、出費を省いて財を養う。これは淡く質素なものには財の出費がないということです。これもまた家を保つのに益のある法です。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第四・飲食下一東坡曰、早晩の飲食、一爵一肉に過ぎず。尊客あれば三之。へらすべくして、ますべからず。我をよぶ者あれば、是を以てつぐ。一に曰、分を安んじて以て福を養ふ。二に曰、胃を寛くして以て気を養ふ。三に曰、費をはぶきて以て財を養ふ。東坡が此法、倹約養生のため、ともにしかるべし。
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『家道訓』巻之一・総論上一わが身朝夕飲食の俸養はかろくして、身をば労動すべし。奢りて酒食の美をこのみ、怠りて身を安逸にすべからず。おごらず怠らず、かくの如くすれば、第一徳を養ひ、次に身を養ひ、次に財をやしなふ、三の益あり。飲食淡薄にして身を労動すれば、食気滞らず、気血めぐり、脾胃やぶれずして生を養ふによろし。又身を労すれば、艱難労苦にたへて、忠孝の行、学問芸術を習ふにつとめよし。もし身体を労動せずして安逸にならへば、艱難に不堪して、忠孝のつとめをくるしみ、学問技芸におこたり、殊に士は武勇のたしなみなく、軍陣にて艱苦にたへず、病おこり身よわりて用にたたず、武勇をはげみがたし。およそ心は安静にし、身は労動せしむべし。
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『家道訓』巻之六・用財下一財を用ふるに、心を用ふると用ひざるとによりて、財の費の多少甚しきことなり。よく心を用ひて無用の費をはぶき、つつしみて約なるべし。おろそかにして多く用ふべからず。たとへば養生の道は、物ごとにすくなくするをよしとす。酒食をすくなくし、色欲をすくなくし、言と怒をすくなくするの類なり。財を用ふるも亦、此の如くなるべし。物ごとに多く用ひ過すべからず。然れども、費ををしむことあまり緊密にすぐれば、我が心を苦しめ人に害あり。緊密なる内にゆるやかなるがよし。人をつかふも亦かくの如し。日々少しのいとまなきやうにつかへば、人くるしみて其の所を得がたし。少しいとまあるやうに人をつかふべし。
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『養生訓』巻第三・飲食上一凡の食淡薄なる物を好むべし。肥膿油膩のもの多く食ふべからず。生冷堅硬なる物を禁ずべし。あつ物只一によろし。肉も一品なるべし。飣は一二品に止まるべし。肉を二つかさぬべからず、又肉多くくらふべからず。生肉をつづけて食ふべからず、滞りやすし。羹に肉あらば、飣には肉なきが宜し。
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『養生訓』巻第四・飲食下一朝夕一飣を用ふべし。其上に、醬か肉醢か、或は菹か、一品を加ふるもよし。あつものは、富める人も常に只一なるべし。客に饗するに、二用ふるは、本汁もし心に叶はずば、二の汁を用ひさせん為なり。常には無用の物なり。唐の高侍郎と云ひし人、兄弟あつものと肉を二にせず、朝夕一品のみ用ふ。晩食には、只蔔匏をくらふ。大根と夕がほとを云ふ。范忠宣と云ひし富貴の人、平生肉をかさねず。其倹約養生、二ながら則とすべし。
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『家道訓』巻之五・用財中一倹約を行ひて家をたもつ事、必ず早く慮りて行ふべし。行きつまりてはせんかたなし。たとへば、若き時より中年まで養生せず、口腹好色の慾を恣にして、晩年に至りて、漸く養生を慎まんとするが如し。慎まざるにまされども、衰へて後は益少きが如し。一財を用ふるに、人々身上に相応の分量あり、是を節とす。節とはよきほどなり。節に過ぐれば奢となり、節に及ばざれば吝嗇となる。節を守るは中にかなふ道なり。
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