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家道訓 / 巻之六・用財下

一財を用ふるに、心を用ふると用ひざるとによりて、財の費の多少甚しきことなり。よく心を用ひて無用の費をはぶき、つゝしみて約なるべし。おろそかにして多く用ふべからず。たとへば養生の道は、物ごとにすくなくするをよしとす。酒食をすくなくし、色欲をすくなくし、言と怒をすくなくするの類なり。財を用ふるも亦、此の如くなるべし。物ごとに多く用ひ過すべからず。然れども、費ををしむことあまり緊密にすぐれば、我が心を苦しめ人に害あり。緊密なる内にゆるやかなるがよし。人をつかふも亦かくの如し。日々少しのいとまなきやうにつかへば、人くるしみて其の所を得がたし。少しいとまあるやうに人をつかふべし。

書き下し

一財を用ふるに、心を用ふると用ひざるとによりて、財の費の多少甚しきことなり。よく心を用ひて無用の費をはぶき、つつしみて約なるべし。おろそかにして多く用ふべからず。たとへば養生の道は、物ごとにすくなくするをよしとす。酒食をすくなくし、色欲をすくなくし、言と怒をすくなくするの類なり。財を用ふるも亦、此の如くなるべし。物ごとに多く用ひ過すべからず。然れども、費ををしむことあまり緊密にすぐれば、我が心を苦しめ人に害あり。緊密なる内にゆるやかなるがよし。人をつかふも亦かくの如し。日々少しのいとまなきやうにつかへば、人くるしみて其の所を得がたし。少しいとまあるやうに人をつかふべし。

現代語訳

財を用いるのに、心を用いるか用いないかによって、財の出費の多少は大きく違います。よく心を用いて無用の出費を省き、慎んでつましくしなさい。おろそかにして多く使ってはいけません。たとえば養生の道は、何事も少なくするのをよしとします。酒食を少なくし、色欲を少なくし、言葉と怒りを少なくするたぐいです。財を用いるのもまた、このようであるべきです。何事も多く使いすぎてはいけません。けれども、出費を惜しむことがあまりに厳しすぎれば、自分の心を苦しめ人に害があります。引き締めた中にもゆとりがあるのがよいのです。人を使うのもまたこのようです。毎日少しの暇もないように使えば、人は苦しんで落ち着きどころを得られません。少し暇があるように人を使いなさい。

解説

財の用い方を養生になぞらえた条で、晩年に養生訓を著す益軒らしい比喩です。酒食や色欲、言葉や怒りを「少なく」するのが養生なら、財も同じく少なく用いよと言います。一方で、締めすぎれば心を苦しめ人を害するから、引き締めの中にゆとりを持てとも説きます。さらに人の使い方にまで話を広げ、少し暇のあるように使えと勧めるのは、今でいう働き方への配慮です。予算管理でも人員配置でも、余白を残すことが長続きの秘訣だという教えです。

この章句が説くこと

倹約養生ゆとり人使い節

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