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家道訓 / 巻之六・用財下

一人心はかりがたし。士といへど忠信なき人は、言ふことうけがふこと信じがたし。いはんや庶人はならはしあしくして信義なし。我が心のごとく信あらんと思ひて、ゆだんして人をゆるせば、おほくは約ちがひて人に欺かれ、後悔することあり。殊に財をあづけさづくる事、はじめにつまびらかにしておろそかにすべからず。小人は、必ず人をあざむき財をうばふことをこのむ。其はかりごとにおつべからず。萬の事、はじめに愼まざれば、かならずをはりに悔あり。

新字:一人心はかりがたし。士といへど忠信なき人は、言ふことうけがふこと信じがたし。いはんや庶人はならはしあしくして信義なし。我が心のごとく信あらんと思ひて、ゆだんして人をゆるせば、おほくは約ちがひて人に欺かれ、後悔することあり。殊に財をあづけさづくる事、はじめにつまびらかにしておろそかにすべからず。小人は、必ず人をあざむき財をうばふことをこのむ。其はかりごとにおつべからず。万の事、はじめに慎まざれば、かならずをはりに悔あり。

書き下し

一人心はかりがたし。士といへど忠信なき人は、言ふことうけがふこと信じがたし。いはんや庶人はならはしあしくして信義なし。我が心のごとく信あらんと思ひて、ゆだんして人をゆるせば、おほくは約ちがひて人に欺かれ、後悔することあり。殊に財をあづけさづくる事、はじめにつまびらかにしておろそかにすべからず。小人は、必ず人をあざむき財をうばふことをこのむ。其はかりごとにおつべからず。万の事、はじめに慎まざれば、かならずをはりに悔あり。

現代語訳

人の心は測りがたいものです。士であっても忠信のない人は、言うことや請け合うことが信じがたいのです。まして庶民は習いが悪くて信義がありません。自分の心と同じように誠があるだろうと思って、油断して人を信用すれば、多くは約束が違って人に欺かれ、後悔することがあります。とくに財を預けたり渡したりすることは、初めに詳しく取り決めて、おろそかにしてはいけません。小人は必ず人を欺いて財を奪うことを好みます。その策略に陥ってはいけません。何事も、初めに慎まなければ、必ず終わりに後悔があります。

解説

金銭の預け渡しでは、相手を安易に信用せず、初めに取り決めを詳しくせよと説く条です。自分が誠実だから相手も同じだろうと思い込む油断を戒めています。身分によって信義を決めつける書き方は時代の偏見ですが、「はじめに愼まざれば、かならずをはりに悔あり」という結びは普遍的な知恵です。契約書を交わす、条件を書面で確認する、口約束で大金を動かさないといった今の実務の基本と重なります。信頼関係を守るためにこそ、最初にきちんと決めておくのです。

この章句が説くこと

信義契約用心財人心

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