家道訓 / 巻之六・用財下
一農商の家、父のゆづりを受けて、田地と財寶とを得て、よくたもちて失はずして、子孫にゆづるも孝なり。家業をよくつとめておこたらず、儉約にしてみだりに財をつひやさゞれば、永く父のゆづりを保ちて子孫に傳ふ。孝と云ふべし。是を良民と云ふ。もし怠りてつとめず、財をつひやしうしなへば、田をうり家を失ひ財をやぶりて、困窮にいたる者多し。不孝の甚しきなり。是を頑民と云ふ。
新字:一農商の家、父のゆづりを受けて、田地と財宝とを得て、よくたもちて失はずして、子孫にゆづるも孝なり。家業をよくつとめておこたらず、倹約にしてみだりに財をつひやさゞれば、永く父のゆづりを保ちて子孫に伝ふ。孝と云ふべし。是を良民と云ふ。もし怠りてつとめず、財をつひやしうしなへば、田をうり家を失ひ財をやぶりて、困窮にいたる者多し。不孝の甚しきなり。是を頑民と云ふ。
書き下し
一農商の家、父のゆづりを受けて、田地と財宝とを得て、よくたもちて失はずして、子孫にゆづるも孝なり。家業をよくつとめておこたらず、倹約にしてみだりに財をつひやさざれば、永く父のゆづりを保ちて子孫に伝ふ。孝と云ふべし。是を良民と云ふ。もし怠りてつとめず、財をつひやしうしなへば、田をうり家を失ひ財をやぶりて、困窮にいたる者多し。不孝の甚しきなり。是を頑民と云ふ。
現代語訳
農民や商人の家が、父の譲りを受けて田地と財宝を得て、よく保って失わず、子孫に譲るのも孝行です。家業をよく勤めて怠らず、倹約してむやみに財を費やさなければ、長く父の譲りを保って子孫に伝えます。孝というべきです。これを良民といいます。もし怠けて勤めず、財を費やして失えば、田を売り家を失い財を破って、困窮に至る者が多いのです。これは不孝の甚だしいものです。これを頑民といいます。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『君子訓』巻之下是始て国を得給ふ先公の心にて、君子業を創め統を垂れて継ぐべきを為すの意なり。其子孫たる人は、其先祖の大なる勲労を以て国を得給ふことの難きをおもひ、其先祖を尊び、其志を継ぎ、其法を守りて永く国土を保ち、人民を治め給はば、是其先祖の志にかなひて、諸侯の孝行是より大なるはなし。もし先祖の国を得給ふことの難き事を思はず、我が身何の辛労もなく、居ながら国を領して、其富貴安楽を受け、恣に驕り、酒宴遊楽を事とし、剰へ我が才智に誇り、先祖を侮り、其定め置き給ひし家法を破り、又国民を苦め、政法を猥にして、終に其臣民に背かれ、国土を失ふに至るは、諸侯の不孝是より大なるはなし。此思ふと思はざるとの二は、国家の治乱存亡の機なり。諸侯の子孫たる人、此二の機を察して、常に慎みて徳を修め孝を行ひ給はば、其後栄永く伝はりて、令名限りなかるべし。
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論語・里仁篇子曰く、三年父の道を改むること無きは、孝と謂う可し。
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『童子問』卷中問ふ。何をか達孝と謂ふ。曰く、達孝なる者は、天下に通ずるの孝にして、一人の小孝に非ざるを謂ふなり。夫れ飲食供奉、左右就養する者は、人子の常職にして、以て孝と為すに足らず。惟善く人の志を継ぎ、善く人の事を述べ、身を立て道を行ひ、名を後世に揚げて、以て父母を顕して、而る後に孝と称するに足るなり。孔子曰く、孟荘子の孝や、其の他は能くすべきなり。其の父の臣と父の政とを改めざるは、是れ能くし難きなり、と。荘子の父献子は、魯の賢大夫にして、名を諸侯に顕す。其の臣は皆献子の挙ぐる所、其の政は皆献子の建つる所なり。人材紀綱、以て後嗣に遺すに足る。荘子皆能く之を用ひて改めず。故に夫子之を称す。言ふこころは、荘子の孝、其の能くし難き者固より多し。然れども此の二事の最も能くし難しと為るに如かざるなり。此に由りて之を観れば、其の先業を斁り、其の家声を堕す者は、他の美有りと雖も、不孝の甚だしきなり。孟懿子孝を問ふ。子曰く、生けるには之に事ふるに礼を以てし、死すれば之を葬るに礼を以てし、之を祭るに礼を以てす、と。蓋し懿子は魯の上卿にして、民の具に瞻る所なり。而して生事葬祭礼を以てすれば、則ち徒に能く其の家を治めて法有るのみに非ず、亦以て魯国を善くするに足る。君は以て忠と為し、民は以て帰と為し、以て孟氏の祀を永くすべし。故に夫子此を以て之に告ぐ。深いかな。
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尚書・君陳王若(かく)のごとく曰く、「君陳よ、惟れ爾令徳にして孝恭なり。惟れ孝にして、兄弟に友に、克く有政に施す。汝に命じて茲の東郊を尹(をさ)めしむ、敬せよや。昔周公万民を師保し、民其の徳を懐く。往きて乃の司を慎み、茲に厥の常に率へ。懋めて周公の訓を昭らかにせば、惟れ民其れ乂まらん。我聞く、曰く、
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論語・学而篇子曰く、「父在せば其の志を観、父没すれば其の行いを観る。三年父の道を改むること無くんば、孝と謂う可し。」
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詩経・大雅・文王之什・下武下武(かぶ)は、文を継ぐなり。武王聖徳有り、復た天命を受け、能く先人の功を昭らかにす。 武を下(つ)ぐは維(こ)れ周、世々哲王有り。三后(さんこう)天に在り、王京に配す。 王京に配す、世徳作(ここ)に求む。永く言(ここ)に命に配し、王の孚(まこと)を成す。 王の孚を成し、下土の式(のり)となる。永く言に孝思し、孝思維れ則(のり)となる。 茲(こ)の一人に媚(あい)し、侯(こ)れ順徳に応ず。永く言に孝思し、昭らかなるかな服を嗣ぐ。 茲の来許(らいきょ)を昭らかにし、其の祖武(そぶ)を縄(つ)ぐ。于(ああ)万斯年、天の祜(さいわい)を受く。 天の祜を受け、四方来たり賀す。于万斯年、遐(なん)ぞ佐(たす)け有らざらん。
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