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家道訓 / 巻之五・用財中

一儉約を行ひて家をたもつ事、必ず早く慮りて行ふべし。行きつまりてはせんかたなし。たとへば、若き時より中年まで養生せず、口腹好色の慾を恣にして、晩年に至りて、漸く養生を愼まんとするが如し。愼まざるにまされども、衰へて後は益少きが如し。一財を用ふるに、人々身上に相應の分量あり、是を節とす。節とはよきほどなり。節に過ぐれば奢となり、節に及ばざれば吝嗇となる。節を守るは中にかなふ道なり。

新字:一倹約を行ひて家をたもつ事、必ず早く慮りて行ふべし。行きつまりてはせんかたなし。たとへば、若き時より中年まで養生せず、口腹好色の慾を恣にして、晩年に至りて、漸く養生を慎まんとするが如し。慎まざるにまされども、衰へて後は益少きが如し。一財を用ふるに、人々身上に相応の分量あり、是を節とす。節とはよきほどなり。節に過ぐれば奢となり、節に及ばざれば吝嗇となる。節を守るは中にかなふ道なり。

書き下し

一倹約を行ひて家をたもつ事、必ず早く慮りて行ふべし。行きつまりてはせんかたなし。たとへば、若き時より中年まで養生せず、口腹好色の慾を恣にして、晩年に至りて、漸く養生を慎まんとするが如し。慎まざるにまされども、衰へて後は益少きが如し。一財を用ふるに、人々身上に相応の分量あり、是を節とす。節とはよきほどなり。節に過ぐれば奢となり、節に及ばざれば吝嗇となる。節を守るは中にかなふ道なり。

現代語訳

倹約を行って家を保つことは、必ず早くから考えて行いなさい。行き詰まってからではどうしようもありません。たとえば、若い時から中年まで養生をせず、口や腹、色事の欲をほしいままにして、晩年になってようやく養生を慎もうとするようなものです。慎まないよりはましですが、衰えてからでは効果が少ないのと同じです。財を用いるには、人それぞれの身上に応じた分量があり、これを「節」といいます。節とはほどよい程度のことです。節を超えれば贅沢となり、節に及ばなければけち(吝嗇)となります。節を守ることが中庸にかなう道です。

解説

前半は、倹約を始める時機を養生にたとえた一条です。益軒はのちに養生訓を著すほど健康に心を配った人で、衰えてからの養生では遅いという比喩には実感がこもっています。後半は「節」の定義で、使い過ぎれば奢、使わな過ぎれば吝嗇とし、その間の「中」を守れと説きます。これは儒学の中庸の考えを財の使い方に当てはめたものです。貯蓄も健康づくりも早いほど効き、しかも締め過ぎてもいけないという教えは、今の資産形成にもそのまま通じます。

この章句が説くこと

倹約節中庸養生吝嗇

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