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家道訓 / 巻之五・用財中

日夜出遊びて、我が家に居ることまれにして、我が家事をつとめず、家の破損を修理せず、器物の損失をしらず。內に居ては、夜も臥すべき時ふさずして時を失ひ、朝はおそく起き、家業をつとめず、つねにおこたりて時をつひやす。財の出入をしるさず、くらの內の財の多少を知らず、家事を家僕にまかせてみづからはからず。酒を好みてほしいまゝにし、放逸なる無賴の友にまじはり、遊宴を事とし、器物を好み、さまざまの物ずきして、からのやまとの無用の物を多く買ひあつめ、色をこのみてやまず、もろもろのすきこのむこと多し。無益の藝をこのみ、淫樂をこのみ、衣服のかざりをこのみ、美味をこのみ、饗應をこのみ、營作をこのみ、無用の器をこのむ。斯くのごとくこのみ多きは、すなはち是わざはひを好むなり。かくのごとくなる人は、必ず人のいさめを嫌ひて聞き入れず。是皆困窮の基なり。

新字:日夜出遊びて、我が家に居ることまれにして、我が家事をつとめず、家の破損を修理せず、器物の損失をしらず。内に居ては、夜も臥すべき時ふさずして時を失ひ、朝はおそく起き、家業をつとめず、つねにおこたりて時をつひやす。財の出入をしるさず、くらの内の財の多少を知らず、家事を家僕にまかせてみづからはからず。酒を好みてほしいまゝにし、放逸なる無頼の友にまじはり、遊宴を事とし、器物を好み、さまざまの物ずきして、からのやまとの無用の物を多く買ひあつめ、色をこのみてやまず、もろもろのすきこのむこと多し。無益の芸をこのみ、淫楽をこのみ、衣服のかざりをこのみ、美味をこのみ、饗応をこのみ、営作をこのみ、無用の器をこのむ。斯くのごとくこのみ多きは、すなはち是わざはひを好むなり。かくのごとくなる人は、必ず人のいさめを嫌ひて聞き入れず。是皆困窮の基なり。

書き下し

日夜出遊びて、我が家に居ることまれにして、我が家事をつとめず、家の破損を修理せず、器物の損失をしらず。内に居ては、夜も臥すべき時ふさずして時を失ひ、朝はおそく起き、家業をつとめず、つねにおこたりて時をつひやす。財の出入をしるさず、くらの内の財の多少を知らず、家事を家僕にまかせてみづからはからず。酒を好みてほしいままにし、放逸なる無頼の友にまじはり、遊宴を事とし、器物を好み、さまざまの物ずきして、からのやまとの無用の物を多く買ひあつめ、色をこのみてやまず、もろもろのすきこのむこと多し。無益の芸をこのみ、淫楽をこのみ、衣服のかざりをこのみ、美味をこのみ、饗応をこのみ、営作をこのみ、無用の器をこのむ。斯くのごとくこのみ多きは、すなはち是わざはひを好むなり。かくのごとくなる人は、必ず人のいさめを嫌ひて聞き入れず。是皆困窮の基なり。

現代語訳

昼も夜も出歩いて、自分の家にいることはまれで、家の仕事を勤めず、家の傷みを修理せず、道具が失われても気づきません。家にいれば、夜も寝るべき時に寝ずに時を失い、朝は遅く起き、家業を勤めず、いつも怠けて時間を費やします。財の出入りを記録せず、蔵の中の財の多少も知らず、家事を使用人に任せて自分では管理しません。酒を好んで飲みたいだけ飲み、身持ちの悪い無頼の友と付き合い、遊びや宴会を仕事のようにし、道具を好み、さまざまな物好きをして、唐物や和物の無用の品を多く買い集め、色事を好んでやめず、あれこれの好みが多いのです。役に立たない芸事を好み、みだらな音楽を好み、衣服の飾りを好み、美食を好み、もてなしを好み、普請を好み、無用の器を好みます。このように好みが多いのは、すなわち災いを好んでいるのです。このような人は、必ず人の忠告を嫌って聞き入れません。これらはみな困窮のもとです。

解説

家が貧しくなる人の暮らしぶりを、これでもかと列挙した段です。とくに「このみ多きは、わざはひを好むなり」という一句が要で、趣味や嗜好の多さそのものが出費と怠りの入口になると益軒は見ています。収支を記録しない、使用人任せにするという指摘は、家計簿や帳簿をつけない危うさとして今も通じます。最後に「人のいさめを嫌ふ」を加えているのは、欲の多い人ほど忠告を聞かず、立て直しがきかなくなるという人間観察でしょう。

この章句が説くこと

欲贅沢怠り家計忠告

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