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家道訓 / 巻之四・用財上

一およそ人に書を貸せば、我が用ある時事缺けぬ。人に貸すことをしむべし。是を以て、書を借れる人おもんぱかりて早く返すべし。貸す人は、借れる人の貧にして書なきをあはれみて貸すべし、をしむべからず。富める人、もし書を見ることをこのめども書を買はざれば學すゝまず。我が書にあらざれば、用ある時考へがたし。財多き人は、書を買ふこと惜むべからず。一我が身の俸養におごる人は、必ず財ををしみて人にほどこさず。財多けれど人にほどこさざるは、只吝嗇なるのみならず、不仁と云ふべし。財ををしみては、善は行ひがたしと程子のいへる、まことにしかり。

新字:一およそ人に書を貸せば、我が用ある時事欠けぬ。人に貸すことをしむべし。是を以て、書を借れる人おもんぱかりて早く返すべし。貸す人は、借れる人の貧にして書なきをあはれみて貸すべし、をしむべからず。富める人、もし書を見ることをこのめども書を買はざれば学すゝまず。我が書にあらざれば、用ある時考へがたし。財多き人は、書を買ふこと惜むべからず。一我が身の俸養におごる人は、必ず財ををしみて人にほどこさず。財多けれど人にほどこさざるは、只吝嗇なるのみならず、不仁と云ふべし。財ををしみては、善は行ひがたしと程子のいへる、まことにしかり。

書き下し

一およそ人に書を貸せば、我が用ある時事欠けぬ。人に貸すことをしむべし。是を以て、書を借れる人おもんぱかりて早く返すべし。貸す人は、借れる人の貧にして書なきをあはれみて貸すべし、をしむべからず。富める人、もし書を見ることをこのめども書を買はざれば学すすまず。我が書にあらざれば、用ある時考へがたし。財多き人は、書を買ふこと惜むべからず。一我が身の俸養におごる人は、必ず財ををしみて人にほどこさず。財多けれど人にほどこさざるは、只吝嗇なるのみならず、不仁と云ふべし。財ををしみては、善は行ひがたしと程子のいへる、まことにしかり。

現代語訳

およそ人に書物を貸せば、自分に用のあるときに事欠きます。人に貸すことを惜しむのです。それで、書物を借りた人は考えて早く返すべきです。貸す人は、借りる人が貧しくて書物のないのをあわれんで貸すべきです。惜しんではいけません。富んだ人が、もし書物を読むことを好んでも書物を買わなければ、学問は進みません。自分の書物でなければ、用のあるときに考えることが難しいのです。財の多い人は、書物を買うことを惜しんではいけません。自分の身の養いにおごる人は、必ず財を惜しんで人に施しません。財が多いのに人に施さないのは、ただけちであるだけでなく、不仁というべきです。「財を惜しんでは善は行いがたい」と程子が言ったのは、まことにそのとおりです。

解説

本を貸すと自分が使いたいときに困るので、借りる側は早く返す配慮をし、貸す側は貧しくて本を持てない人をあわれんで惜しまず貸せ、と双方の心得を説きます。また財のある人は本を買うことを惜しむな、自分の本でなければ必要なときに調べられないと言います。巻の結びでは、自分の贅沢には金を使いながら人に施さない者は不仁だと断じ、財を惜しんでは善は行いがたいという程子の言葉で締めます。知識を分かち合い、学びに投資せよという、益軒の用財論の総まとめです。

この章句が説くこと

書物学問施し程子不仁

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