家道訓 / 巻之四・用財上
一人の書を借らば、損ひ汚すべからず。屋漏り水けぶり、猫鼠水火油膩、小兒のふせぎをすべし。借れる書は器に入れ置きて、見る時取り出すべし。もしそこなひけがさば、おぎなひて、其あやまりを謝して返すべし。是亦百行の一なり。
新字:一人の書を借らば、損ひ汚すべからず。屋漏り水けぶり、猫鼠水火油膩、小児のふせぎをすべし。借れる書は器に入れ置きて、見る時取り出すべし。もしそこなひけがさば、おぎなひて、其あやまりを謝して返すべし。是亦百行の一なり。
書き下し
一人の書を借らば、損ひ汚すべからず。屋漏り水けぶり、猫鼠水火油膩、小児のふせぎをすべし。借れる書は器に入れ置きて、見る時取り出すべし。もしそこなひけがさば、おぎなひて、其あやまりを謝して返すべし。是亦百行の一なり。
現代語訳
人の書物を借りたら、傷めたり汚したりしてはいけません。雨漏りや水や煙、猫や鼠、水や火や油、幼い子から守るべきです。借りた書物は箱に入れておいて、読むときに取り出すべきです。もし傷めたり汚したりしたら、補って、その過ちをわびて返すべきです。これもまた百の行いの一つです。
解説
借りた書物を守るための具体的な注意です。雨漏りや煙、猫や鼠、火や油、幼い子どもなど、本を傷める原因を並べ、借りた本は箱に入れておいて読むときだけ出せと言います。傷めたら補ってわびて返せという作法も添えています。これを「百行の一」、つまり人の数ある行いの一つとして大切に扱っているところに、日常の小さな誠実さを重んじる益軒の姿勢が表れています。図書館の本や人から借りた物を丁寧に扱うことは、今も変わらない礼儀です。
この章句が説くこと
書物貸し借り誠実礼読書
関連する章句
-
論語・衛霊公篇子曰く、「賜や、女予を以て多く学びて之を識る者と為すか。」対えて曰く、「然り。非なるか。」曰く、「非なり。予は一以て之を貫く。」
-
孟子・滕文公章句下周霄問ひて曰く、「古の君子は仕へしか。」孟子曰く、「仕へたり。伝に曰く、『孔子は三月君無ければ、則ち皇皇如たり。疆を出づるに必ず質(し)を載す。』と。公明儀曰く、『古の人は三月君無ければ則ち弔す。』と。」「三月君無ければ則ち弔すとは、以(はなは)だ急ならずや。」曰く、「士の位を失ふや、猶ほ諸侯の国家を失ふがごときなり。礼に曰く、『諸侯は耕助して、以て粢盛(しせい)を供す。夫人は蚕繅(さんそう)して、以て衣服を為る。犠牲成らず、粢盛潔からず、衣服備はらざれば、敢へて以て祭らず。惟だ士も田無ければ、則ち亦た祭らず。』と。牲殺・器皿・衣服備はらず、敢へて以て祭らざれば、則ち敢へて以て宴せず、亦た弔するに足らざらんや。」「疆を出づるに必ず質を載すとは、何ぞや。」曰く、「士の仕ふるや、猶ほ農夫の耕すがごときなり。農夫豈に疆を出づるが為に其の耒耜(らいし)を舎てんや。」曰く、「晋国も亦た仕国なり。未だ嘗て仕ふること此くの如く其れ急なるを聞かず。仕ふること此くの如く其れ急なるに、君子の仕ふるを難しとするは、何ぞや。」曰く、「丈夫生まれては之が為に室有らんことを願ひ、女子生まれては之が為に家有らんことを願ふ。父母の心は、人皆之有り。父母の命、媒妁の言を待たずして、穴隙を鑽りて相窺ひ、墻を逾えて相従へば、則ち父母・国人皆之を賤しむ。古の人は未だ嘗て仕ふるを欲せずんばあらざるなり、又其の道に由らざるを悪む。其の道に由らずして往く者は、
-
『家道訓』巻之四・用財上一人の器物を借ることを好むべからず。人を妨ぐること遠慮すべし。入用ありとも、なるべきほどは不自由をこらへて、人の器借るべからず。もし已むことを得ずして器を借らば、そこなふべからず。用ひをはらばはやく返すべし。久しくとどめ置きて、貸せるぬしに事を欠かせ、乞ひ使をうけておそくかへすべからず。もし借れるもの損ぜば、よくおぎなひて、其の過を謝し返すべし。およそ我が家に、人の財宝器物書籍等を借りて、かへさざる物ありやと、時々みづからかへりみるべし。もし借れる物あらば、すみやかに返すべし。是亦家ををさむる道の内の一事なり。おろそかにすべからず。
-
孟子・離婁章句上孟子曰く、「下位に居りて、上に獲られざれば、民得て治む可からざるなり。上に獲らるるに道有り。友に信ぜられずんば、上に獲られず。友に信ぜらるるに道有り。親に事えて悅ばれずんば、友に信ぜられず。親に悅ばるるに道有り。身に反して誠ならずんば、親に悅ばれず。身を誠にするに道有り。善に明らかならずんば、其の身に誠ならず。是の故に誠は、天の道なり。誠を思うは、人の道なり。至誠にして動かざる者は、未だ之れ有らざるなり。誠ならずして、未だ能く動かす者有らざるなり。」
-
論語・為政篇子曰く、詩三百、一言以て之を蔽えば、曰く、思い邪(よこしま)無しと。
-
史記 儒林列伝申公之を恥ぢ、魯に帰り、退きて家に居りて教へ、終身門を出でず、復た賓客を謝絶し、独り王命之を召せば乃ち往く。弟子遠方より至りて業を受くる者百余人。申公独り詩経を以て訓と為して以て教ふ、伝無し、疑はしき者は則ち闕きて伝へず。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る