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家道訓 / 巻之四・用財上

一凡財ををしみては、善を行ふこと成りがたく、功を立つることも成りがたし。又人の心を得ずして、人思ひつかず。人の和なきゆゑ事を成しがたく、爲すことはかゆかず。軍にも、賞を行へば士卒身をすて勇戰をはげます。三略にも、香餌之下には懸魚ありといへり。賞うすければ士卒はげみなく、軍功も立ちがたし。是皆吝嗇のわざはひなり。俗語に、小欲大損と云ふ是なり。

新字:一凡財ををしみては、善を行ふこと成りがたく、功を立つることも成りがたし。又人の心を得ずして、人思ひつかず。人の和なきゆゑ事を成しがたく、為すことはかゆかず。軍にも、賞を行へば士卒身をすて勇戦をはげます。三略にも、香餌之下には懸魚ありといへり。賞うすければ士卒はげみなく、軍功も立ちがたし。是皆吝嗇のわざはひなり。俗語に、小欲大損と云ふ是なり。

書き下し

一凡財ををしみては、善を行ふこと成りがたく、功を立つることも成りがたし。又人の心を得ずして、人思ひつかず。人の和なきゆゑ事を成しがたく、為すことはかゆかず。軍にも、賞を行へば士卒身をすて勇戦をはげます。三略にも、香餌之下には懸魚ありといへり。賞うすければ士卒はげみなく、軍功も立ちがたし。是皆吝嗇のわざはひなり。俗語に、小欲大損と云ふ是なり。

現代語訳

およそ財を惜しんでは、善を行うことは成りがたく、功を立てることも成りがたいのです。また人の心を得られず、人は心服しません。人の和がないので事を成しがたく、することがはかどりません。軍でも、賞を行えば士卒は身を捨てて勇戦に励みます。『三略』にも「香りのよい餌の下には、かかる魚がある」と言っています。賞が薄ければ士卒は励みがなく、軍功も立ちがたいのです。これは皆けちの災いです。俗語に「小欲大損」というのはこのことです。

解説

財を惜しむ者は善も功も成し遂げられず、人の心をつかめないと説きます。兵法書『三略』の「香餌の下に必ず懸魚有り」を引き、十分な賞があってこそ兵は命をかけて戦うと言います。けちが人の和を損ない、結局は大きな損を招くことを、俗語の「小欲大損」でまとめています。倹約を説き続けてきた益軒が、ここでは出し惜しみの害を強調しているのが興味深いところです。働く人への正当な報酬を惜しむ組織が人心を失うのは、今も昔も変わりません。

この章句が説くこと

吝嗇報酬三略人心組織

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