家道訓 / 巻之四・用財上
一財を多くたくはへて餘りあらば、人に益あることにつかひ用ふべし。無益のいとなみをなして、財をつひやすはいたづら事なり。をしむべし。君子の財をみだりに用ひずしてをしむは、人に益あることに、財を用ひんがためなり。たとへば百萬錢をつひやして萬燈をともさんよりは、十萬錢を出して、飢ゑたる者萬人を養ふは益多し。又百萬錢を出して、女子を嫁せしむれども、十萬錢を出して子を敎ふる人なしと、古人いへり。又大富の人は、一日の内にも千金をつひやして、無益の驕樂をなせども、百金を出して飢ゑたる人をすくふ人なきは何ぞや。
新字:一財を多くたくはへて余りあらば、人に益あることにつかひ用ふべし。無益のいとなみをなして、財をつひやすはいたづら事なり。をしむべし。君子の財をみだりに用ひずしてをしむは、人に益あることに、財を用ひんがためなり。たとへば百万銭をつひやして万灯をともさんよりは、十万銭を出して、飢ゑたる者万人を養ふは益多し。又百万銭を出して、女子を嫁せしむれども、十万銭を出して子を教ふる人なしと、古人いへり。又大富の人は、一日の内にも千金をつひやして、無益の驕楽をなせども、百金を出して飢ゑたる人をすくふ人なきは何ぞや。
書き下し
一財を多くたくはへて余りあらば、人に益あることにつかひ用ふべし。無益のいとなみをなして、財をつひやすはいたづら事なり。をしむべし。君子の財をみだりに用ひずしてをしむは、人に益あることに、財を用ひんがためなり。たとへば百万銭をつひやして万灯をともさんよりは、十万銭を出して、飢ゑたる者万人を養ふは益多し。又百万銭を出して、女子を嫁せしむれども、十万銭を出して子を教ふる人なしと、古人いへり。又大富の人は、一日の内にも千金をつひやして、無益の驕楽をなせども、百金を出して飢ゑたる人をすくふ人なきは何ぞや。
現代語訳
財を多くたくわえて余りがあれば、人に益のあることに使い用いるべきです。無益な営みをして財を費やすのは、むだごとです。惜しむべきです。君子が財をむやみに用いずに惜しむのは、人に益のあることに財を用いるためです。たとえば百万銭を費やして万の灯をともすよりは、十万銭を出して飢えた者一万人を養うほうが益が多いのです。また「百万銭を出して娘を嫁がせる者はいても、十万銭を出して子を教える人はいない」と古人が言いました。また大富豪は一日のうちにも千金を費やして無益な贅沢な楽しみをしても、百金を出して飢えた人を救う人がいないのはなぜでしょうか。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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論語・顔淵篇司馬牛、君子を問う。子曰く、「君子は憂えず懼れず。」曰く、「憂えず懼れざれば、斯れ之を君子と謂うか。」子曰く、「内に省みて疚しからずんば、夫れ何をか憂え何をか懼れん。」
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論語・憲問篇子曰く、君子にして不仁なる者有るかな。未だ小人にして仁なる者有らざるなり。
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論語・学而篇子曰く、「君子は食らうに飽くことを求めず、居るに安きを求めず、事に敏にして言に慎み、有道に就いて正す。学を好むと謂う可きのみ。」
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論語・為政篇子曰く、「君子は器ならず。」
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論語・学而篇子曰く、「君子重からざれば則ち威あらず、学べば則ち固ならず。忠信を主とし、己に如かざる者を友とすること無かれ、過てば則ち改むるに憚ること勿かれ。」
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荀子・哀公篇哀公曰く、善し。敢えて問う、何如なれば斯ち之を君子と謂うべきか、と。孔子対えて曰く、所謂る君子なる者は、言は忠信にして心に徳とせず、仁義身に在りて色に伐(ほこ)らず、思慮明通にして辞は争わず。故に猶然として将に及ぶべきが如き者は、君子なり、と。
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