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家道訓 / 巻之四・用財上

一凡太平の世の勢は、年々に、萬の事必ず華美におもむきておごり、つひえ多くなりもてゆくものなれば、儉約をむねとして行はずして、只其のまゝにて、世の成行にまかせぬれば、人々困窮して家をたもちがたし。俗にながれ時にうつりゆかば、儉約の道立たずして、後には、必ず家をやぶるにいたるべし。家主となる人は、早く謀り遠くおもんばかるべし。萬の事は、遠き後の事を早くおもんぱからざれば、必ずちかきうれひあり。はじめ憂ひ勤むれば、後は必ず安樂なり。初におこたりて心を用ひざれば、後は必ずうれひくるしみとなる。此の理をよくおもんぱかるべし。

新字:一凡太平の世の勢は、年々に、万の事必ず華美におもむきておごり、つひえ多くなりもてゆくものなれば、倹約をむねとして行はずして、只其のまゝにて、世の成行にまかせぬれば、人々困窮して家をたもちがたし。俗にながれ時にうつりゆかば、倹約の道立たずして、後には、必ず家をやぶるにいたるべし。家主となる人は、早く謀り遠くおもんばかるべし。万の事は、遠き後の事を早くおもんぱからざれば、必ずちかきうれひあり。はじめ憂ひ勤むれば、後は必ず安楽なり。初におこたりて心を用ひざれば、後は必ずうれひくるしみとなる。此の理をよくおもんぱかるべし。

書き下し

一凡太平の世の勢は、年々に、万の事必ず華美におもむきておごり、つひえ多くなりもてゆくものなれば、倹約をむねとして行はずして、只其のままにて、世の成行にまかせぬれば、人々困窮して家をたもちがたし。俗にながれ時にうつりゆかば、倹約の道立たずして、後には、必ず家をやぶるにいたるべし。家主となる人は、早く謀り遠くおもんばかるべし。万の事は、遠き後の事を早くおもんぱからざれば、必ずちかきうれひあり。はじめ憂ひ勤むれば、後は必ず安楽なり。初におこたりて心を用ひざれば、後は必ずうれひくるしみとなる。此の理をよくおもんぱかるべし。

現代語訳

およそ太平の世の勢いは、年々に万事が必ず華美に向かっておごり、費えが多くなっていくものなので、倹約を旨として行わずに、ただそのままで世の成り行きに任せてしまえば、人々は困窮して家を保つことが難しいのです。世俗に流され時勢に移っていけば、倹約の道は立たず、後には必ず家を破るに至るでしょう。家の主となる人は、早くはかり遠く考えるべきです。万事は、遠い後のことを早く考えなければ、必ず近い憂いがあります。初めに憂い努めれば、後は必ず安楽です。初めに怠って心を用いなければ、後は必ず憂い苦しみとなります。この理をよく考えるべきです。

解説

太平の世が続くと、万事が年々華美になり出費がかさむのは自然の勢いだと益軒は見ています。元禄の繁栄を経て、武家も町人も奢侈に流れ、多くの家が借金に苦しんでいた時代の実感でしょう。世の流れに任せていれば家は破れるので、倹約を旨として早く先を見通せと説きます。景気が良いときほど生活水準が上がり、それが当たり前になって、不況や退職後に苦しむという構図は今も同じです。周りに流されず、自分の家の基準を持つことの大切さを教えています。

この章句が説くこと

倹約奢侈太平備え遠慮

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