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家道訓 / 巻之四・用財上

貧窮なれば、みづから苦しむのみならず、親を養ふことうすく、君に仕ふるにつとめがたく、人に施しめぐまず、禮義を行ひがたし。人に乞ひ借り買ひおぎのりて、おひめをつぐのひがたし。百行かけて行はれず。武士は武備なくして戰陣をつとめがたし。不意なる變にあへば、困苦して如何ともすべからず。貧苦のわざはひ、子孫にいたりてやまず。或は一代にて家をやぶる。悲しむべし。諸の細事雜藝をばさほど知らずともありなん、まづ家を保つ道を早く知りて守るべし。是人生至要のことなり。おろそかなるべからず。

新字:貧窮なれば、みづから苦しむのみならず、親を養ふことうすく、君に仕ふるにつとめがたく、人に施しめぐまず、礼義を行ひがたし。人に乞ひ借り買ひおぎのりて、おひめをつぐのひがたし。百行かけて行はれず。武士は武備なくして戦陣をつとめがたし。不意なる変にあへば、困苦して如何ともすべからず。貧苦のわざはひ、子孫にいたりてやまず。或は一代にて家をやぶる。悲しむべし。諸の細事雑芸をばさほど知らずともありなん、まづ家を保つ道を早く知りて守るべし。是人生至要のことなり。おろそかなるべからず。

書き下し

貧窮なれば、みづから苦しむのみならず、親を養ふことうすく、君に仕ふるにつとめがたく、人に施しめぐまず、礼義を行ひがたし。人に乞ひ借り買ひおぎのりて、おひめをつぐのひがたし。百行かけて行はれず。武士は武備なくして戦陣をつとめがたし。不意なる変にあへば、困苦して如何ともすべからず。貧苦のわざはひ、子孫にいたりてやまず。或は一代にて家をやぶる。悲しむべし。諸の細事雑芸をばさほど知らずともありなん、まづ家を保つ道を早く知りて守るべし。是人生至要のことなり。おろそかなるべからず。

現代語訳

貧窮であれば、自分が苦しむだけでなく、親を養うことも薄く、君に仕えるのにも努めにくく、人に施し恵まず、礼義を行いにくいのです。人に乞い借りたり掛けで買ったりして、負債を返しにくくなります。百の行いが欠けて行われません。武士は武備がなくて戦陣を務めにくいのです。思いがけない変事にあえば、困り苦しんでどうすることもできません。貧苦の災いは子孫に至ってもやみません。あるいは一代で家を破ります。悲しむべきことです。もろもろの細かな事や雑多な芸はそれほど知らなくてもよいでしょうが、まず家を保つ道を早く知って守るべきです。これは人生の至って大事なことです。おろそかにしてはいけません。

解説

貧窮がもたらす害を具体的に挙げています。親を十分に養えず、主君への務めも果たせず、人に施せず、礼義も欠け、借金が返せなくなり、武士は武備も整えられません。貧しさは一人の苦しみにとどまらず、孝や忠や礼といったあらゆる徳の実践を妨げ、子孫にまで及ぶというのです。だから細かな教養より先に、家を保つ道を早く知れと言います。お金の知識を人生の至要とするこの考えは、今の金融教育の意義を説く言葉としてもそのまま通用します。

この章句が説くこと

貧窮家計孝借金財

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