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家道訓 / 巻之三・総論下

一家園ををさめ草木を植うるは、もとより氣を養ひ心を樂まんためなるに、心をもちひ過して、心を勞し功を費し、家僕を勞せしむるは、心を養ふ物を以て、かへつて心を苦め隙を費すは、損ありて益なし。一花草などをうつし植うるは、勞なく活きやすし。されども初め植うるに、植うべき所をえらんで植うべし。如此すれば、後日に移し植ゑずしてよし。草も木も、移し植うるは事多くむづかしく、功をつひやす。木を植うること、尤はじめに植うべき所をえらんで、其の上、長じて後までよき所に、他木との間遠く植うべし。はじめに所をえらばずして、みだりに植うれば、後に長じて所を得ず。所を得させんと他所にうつせば、多くは枯る。枯れざるもかじけてさかえず。所を得ずとも年久しくしてさかえ長じたる木をば、やむ事を得ばうつすべからず。所を得させんとして事を好むべからず。もし小木を、初め植ゑて所を得ざるをば、長茂せざる時早く移すべし。小木は移しても活きやすし。

新字:一家園ををさめ草木を植うるは、もとより気を養ひ心を楽まんためなるに、心をもちひ過して、心を労し功を費し、家僕を労せしむるは、心を養ふ物を以て、かへつて心を苦め隙を費すは、損ありて益なし。一花草などをうつし植うるは、労なく活きやすし。されども初め植うるに、植うべき所をえらんで植うべし。如此すれば、後日に移し植ゑずしてよし。草も木も、移し植うるは事多くむづかしく、功をつひやす。木を植うること、尤はじめに植うべき所をえらんで、其の上、長じて後までよき所に、他木との間遠く植うべし。はじめに所をえらばずして、みだりに植うれば、後に長じて所を得ず。所を得させんと他所にうつせば、多くは枯る。枯れざるもかじけてさかえず。所を得ずとも年久しくしてさかえ長じたる木をば、やむ事を得ばうつすべからず。所を得させんとして事を好むべからず。もし小木を、初め植ゑて所を得ざるをば、長茂せざる時早く移すべし。小木は移しても活きやすし。

書き下し

一家園ををさめ草木を植うるは、もとより気を養ひ心を楽まんためなるに、心をもちひ過して、心を労し功を費し、家僕を労せしむるは、心を養ふ物を以て、かへつて心を苦め隙を費すは、損ありて益なし。一花草などをうつし植うるは、労なく活きやすし。されども初め植うるに、植うべき所をえらんで植うべし。如此すれば、後日に移し植ゑずしてよし。草も木も、移し植うるは事多くむづかしく、功をつひやす。木を植うること、尤はじめに植うべき所をえらんで、其の上、長じて後までよき所に、他木との間遠く植うべし。はじめに所をえらばずして、みだりに植うれば、後に長じて所を得ず。所を得させんと他所にうつせば、多くは枯る。枯れざるもかじけてさかえず。所を得ずとも年久しくしてさかえ長じたる木をば、やむ事を得ばうつすべからず。所を得させんとして事を好むべからず。もし小木を、初め植ゑて所を得ざるをば、長茂せざる時早く移すべし。小木は移しても活きやすし。

現代語訳

家の庭を整え草木を植えるのは、もともと気を養い心を楽しませるためなのに、心を用いすぎて、心を労し手間を費やし、召使いを労させるのは、心を養う物によってかえって心を苦しめ暇を費やすことで、損があって益がありません。花の草などを移し植えるのは、手間がなく根づきやすいものです。けれども初めに植えるときに、植えるべき所を選んで植えるべきです。このようにすれば、後日に移し植えなくてよいのです。草も木も、移し植えるのは事が多くて面倒で、手間を費やします。木を植えるには、とりわけ初めに植えるべき所を選んで、そのうえ成長した後までよい所に、ほかの木との間を遠くして植えるべきです。初めに所を選ばずにむやみに植えれば、後に成長して所を得ません。所を得させようとほかの所に移せば、多くは枯れます。枯れなくても衰えて栄えません。所を得なくても、年久しく栄えて成長した木は、できることなら移してはいけません。所を得させようとして事を好んではいけません。もし小さな木を初めに植えて所を得ないものは、茂らないうちに早く移すべきです。小さな木は移しても根づきやすいのです。

解説

庭は心を養うためのものなのに、凝りすぎて心を労しては本末転倒だと述べたあと、木の植え方を具体的に教えます。木は成長した後の姿を考えて、初めに場所を選び、ほかの木との間を十分にとって植えよ、大きくなった木を移すと多くは枯れる、移すなら小さいうちに、というのです。植物を知り尽くした益軒の実践的な助言ですが、人の配置にも読み替えられます。人材も初めの配置をよく考え、長く根づいた人をむやみに動かさず、動かすなら早いうちに、という教えとしても響きます。

この章句が説くこと

園芸植樹計画本草配置

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