家道訓 / 巻之三・総論下
一園に植うる草木、異なるを好むべからず。又しげきはむづかし。作木すべからず。只ひろき園には、果樹花木葉樹品々植ゑて、四時の推移るを觀るべし。又果を數品うゑて、家祭にそなへ賓客をもてなし、人にあたへて用多し。草は藥草花草を少しうゑて、その名をしり其の花を玩ぶべし。居室の小園には、しげらざる常葉なる小樹を少しばかり植ゑて、石に伴はしむべし。小園の内は草木多ければむづかし。又庭に草木しげれば陰氣ふかく、夏は豹脚多くして人をさす。
新字:一園に植うる草木、異なるを好むべからず。又しげきはむづかし。作木すべからず。只ひろき園には、果樹花木葉樹品々植ゑて、四時の推移るを観るべし。又果を数品うゑて、家祭にそなへ賓客をもてなし、人にあたへて用多し。草は薬草花草を少しうゑて、その名をしり其の花を玩ぶべし。居室の小園には、しげらざる常葉なる小樹を少しばかり植ゑて、石に伴はしむべし。小園の内は草木多ければむづかし。又庭に草木しげれば陰気ふかく、夏は豹脚多くして人をさす。
書き下し
一園に植うる草木、異なるを好むべからず。又しげきはむづかし。作木すべからず。只ひろき園には、果樹花木葉樹品々植ゑて、四時の推移るを観るべし。又果を数品うゑて、家祭にそなへ賓客をもてなし、人にあたへて用多し。草は薬草花草を少しうゑて、その名をしり其の花を玩ぶべし。居室の小園には、しげらざる常葉なる小樹を少しばかり植ゑて、石に伴はしむべし。小園の内は草木多ければむづかし。又庭に草木しげれば陰気ふかく、夏は豹脚多くして人をさす。
現代語訳
庭に植える草木は、珍しいものを好んではいけません。また茂りすぎるのは面倒です。作り木をしてはいけません。ただ広い庭には、果樹・花木・葉樹を品々植えて、四季の移り変わりを見るべきです。また果樹を数種植えて、家の祭りに供え、客をもてなし、人に与えるなど用が多いのです。草は薬草や花の草を少し植えて、その名を知り、その花を愛でるべきです。居室の小さな庭には、茂らない常緑の小さな木を少しばかり植えて、石に添わせるべきです。小さな庭の内は、草木が多いと面倒です。また庭に草木が茂れば陰気が深く、夏はやぶ蚊が多くて人を刺します。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『家道訓』巻之三・総論下一家園ををさめ草木を植うるは、もとより気を養ひ心を楽まんためなるに、心をもちひ過して、心を労し功を費し、家僕を労せしむるは、心を養ふ物を以て、かへつて心を苦め隙を費すは、損ありて益なし。一花草などをうつし植うるは、労なく活きやすし。されども初め植うるに、植うべき所をえらんで植うべし。如此すれば、後日に移し植ゑずしてよし。草も木も、移し植うるは事多くむづかしく、功をつひやす。木を植うること、尤はじめに植うべき所をえらんで、其の上、長じて後までよき所に、他木との間遠く植うべし。はじめに所をえらばずして、みだりに植うれば、後に長じて所を得ず。所を得させんと他所にうつせば、多くは枯る。枯れざるもかじけてさかえず。所を得ずとも年久しくしてさかえ長じたる木をば、やむ事を得ばうつすべからず。所を得させんとして事を好むべからず。もし小木を、初め植ゑて所を得ざるをば、長茂せざる時早く移すべし。小木は移しても活きやすし。
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『家道訓』巻之三・総論下一宅にはじめてうつらば、まづはやく果木を植うべし。次に他木に及ぶべし。十年の計は木を植うるにあり。樹木を植うるには、菓を先とし花を次とし、葉樹を又其の次とす。果は尤人に益あり、多く植うべし。取わき、橘柑柚を多く植うべし。みのりて熟したるは、うるはしき事花におとらず。柿梨栗椒など、好品をもとめ植うべし。花木は梅を先とす。紅梅もよし、桜亦よし。早く散るうらめし。つばき、花久しく咲きて葉うるはし。挿せば活きやすく、花早く開く。海棠、躑躅、杜鵑花もよし。葉樹は、杉、檜、樅金松、羅漢松、冬青樹などよし。竹を北方に多く植うべし。火と風をふせぎ、又伐りて時用に備ふ。前庭には、柳桜松柏など植うべし。しげきを忌む。陰気ふかく、夏は蚊多くしてうるさし。又菜は日用の助となり、宅中に植うるは、新しくして市に買ふにまさり、其の葉さかえてうるはしきは、目をよろこばしむること、花草におとらず。
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『家道訓』巻之三・総論下一園に草木をうゑて愛するも、亦心を養ふ一助なり。いとまあるとき、少し心を用ひて、あるにまかせて求めやすき物を植うべし。得がたき物をしひて得んとし、みだりに人に乞ひもとめ、あたひ多くつひやし、其の品の多きと、花のすぐれたるにほこり、花のよきをあらそひたたかはしむるは、事多くなり、心のわづらひとなり、心術をそこなふ。是楽みにはあらず、苦みを求むるなり。
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徒然草・第139段家にありたき木は、松、桜。松は五葉もよし。花は一重なるよし。八重桜は奈良の都にのみありけるを、この頃ぞ世に多くなり侍るなる。吉野の花、左近の桜、皆一重にてこそあれ。八重桜は異様のものなり。いとこちたくねぢけたり。植ゑずともありなむ。遅桜またすさまじ。虫のつきたるもむつかし。梅は白き、うす紅梅、一重なるが疾く咲きたるも、重なりたる紅梅の、匂ひめでたきも、みなをかし。「おそき梅は、桜に咲きあひて、おぼえ劣り、けおされて、枝に萎みつきたる、心憂し。一重なるがまづ咲きて散りたるは、心疾くをかし。」とて、京極入道中納言は、なほ一重梅をなむ軒近く植ゑられたりける。京極の屋の南むきに、今も二本はべるめり。柳またをかし。卯月ばかりの若楓、すべて万の花紅葉にも優りてめでたきものなり。橘、桂、何れも木は物古り、大きなる、よし。草は山吹、藤、杜若、撫子。池には蓮。秋の草は荻、薄、桔梗、萩、女郎花、藤袴、紫菀、吾木香、刈萱、竜胆、菊、黄菊も、蔦、葛、朝顔、いづれもいと高からず、さゝやかなる垣に、しげからぬよし。この外世にまれなるおの、唐めきたる名の聞きにくく、花も見なれぬなど、いとなつかしからず。大かた何も珍しくありがたきものは、よからぬ人のもて興ずるものなり。さやうの物なくてありなむ。
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『家道訓』巻之三・総論下一常に居る処は、陽に向ひ陰に背くべし。如此なれば、日の光明かに、月に向ひ、夏すずしく冬あたたかにして、身を養ふに宜し。又居室も庭中もつねに掃除していさぎよくすべし。かくの如くすれば、気を養ひ心をいさぎよくす。くらくけがらはしければ、心気の養とならず。又、居る処暗ければ元気をふさぐ。甚明らか過ぐれば精神を破る。居る処かざりを好めば慾を生ず。
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『楽訓』巻之中・節序一夏もやうやう深くなりぬれば、木として繁らざるはなく、草として栄えざるはなく、日々に物を引延ぶるやうに見えて、ひたすらに緑の色深き夏木立こそ、花にもをさをさ劣るまじけれ。春の花は、所々に咲きて稀なり。夏は山も里も、あるとしある草木ごとに打はへて、皆緑の色なれば、春に異なる眺なり。八千草に植集めてなづさひし前栽の草木ども、雨をおびて、各其梢をあらはし、所得顔に、心にまかせて生茂れるも、うれしと見ゆ。昔おほゆる花たち花のかをれる夜は、追風もいとなつかし。早苗とる比、田家は雨を待ち得て、いそがはしく賑はし。此ころ遣水のほとりに飛ぶ蛍の、音もせですだくを見れば、鳴く虫よりいとあはれむべし。夏山のけしき、青みわたりたる高き峯、大空につらなりて、雲の外にそびえたるを、あくまで見るこそ、殊にすぐれて、心を快くする眺なれ。白楽天が、眼を放にして青山を見るといへるが如し。
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