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家道訓 / 巻之三・総論下

一園に草木をうゑて愛するも、亦心を養ふ一助なり。いとまあるとき、少し心を用ひて、あるにまかせて求めやすき物を植うべし。得がたき物をしひて得んとし、みだりに人に乞ひもとめ、あたひ多くつひやし、其の品の多きと、花のすぐれたるにほこり、花のよきをあらそひたゝかはしむるは、事多くなり、心のわづらひとなり、心術をそこなふ。是樂みにはあらず、苦みを求むるなり。

新字:一園に草木をうゑて愛するも、亦心を養ふ一助なり。いとまあるとき、少し心を用ひて、あるにまかせて求めやすき物を植うべし。得がたき物をしひて得んとし、みだりに人に乞ひもとめ、あたひ多くつひやし、其の品の多きと、花のすぐれたるにほこり、花のよきをあらそひたゝかはしむるは、事多くなり、心のわづらひとなり、心術をそこなふ。是楽みにはあらず、苦みを求むるなり。

書き下し

一園に草木をうゑて愛するも、亦心を養ふ一助なり。いとまあるとき、少し心を用ひて、あるにまかせて求めやすき物を植うべし。得がたき物をしひて得んとし、みだりに人に乞ひもとめ、あたひ多くつひやし、其の品の多きと、花のすぐれたるにほこり、花のよきをあらそひたたかはしむるは、事多くなり、心のわづらひとなり、心術をそこなふ。是楽みにはあらず、苦みを求むるなり。

現代語訳

庭に草木を植えて愛するのも、また心を養う一助です。暇のあるとき、少し心を用いて、手に入るままに求めやすい物を植えるべきです。得がたい物を無理に得ようとし、むやみに人に乞い求め、多くの代価を費やし、その品数の多さと花のすぐれていることを誇り、花の良さを争い競わせるのは、事が多くなり、心の煩いとなり、心のありようを損ないます。これは楽しみではなく、苦しみを求めることです。

解説

草木を植えて愛でることは心を養う助けになると認めたうえで、手に入りやすいものを気軽に植える程度がよいと言います。珍しい品種を無理に求め、大金を費やし、品数や花の見事さを人と競うようになれば、それは楽しみではなく苦しみを求めることだというのです。益軒の生きた元禄のころには椿や躑躅などの園芸が流行し、珍しい品種がもてはやされました。趣味が競争や見栄に変わった途端に心を疲れさせるのは、今のどんな趣味でも同じです。

この章句が説くこと

園芸趣味楽しみ欲心

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