家道訓 / 巻之三・総論下
一もろこしの古き諺に、萬事從寬、其福自厚といへり。寛とは、せはしからず急ならず、心ひろくゆたかにして、人の過をゆるすを云ふ。此の如き人は福あつし。急にしてせはせはしき人は福すくなし。おきてひろき器にはさいはひあり。心ゆるやかになだらかなる人は、福ながきためし多し。
新字:一もろこしの古き諺に、万事従寛、其福自厚といへり。寛とは、せはしからず急ならず、心ひろくゆたかにして、人の過をゆるすを云ふ。此の如き人は福あつし。急にしてせはせはしき人は福すくなし。おきてひろき器にはさいはひあり。心ゆるやかになだらかなる人は、福ながきためし多し。
書き下し
一もろこしの古き諺に、万事寛に従へば、其の福自ら厚しといへり。寛とは、せはしからず急ならず、心ひろくゆたかにして、人の過をゆるすを云ふ。此の如き人は福あつし。急にしてせはせはしき人は福すくなし。おきてひろき器にはさいはひあり。心ゆるやかになだらかなる人は、福ながきためし多し。
現代語訳
中国の古い諺に「万事において寛大であれば、その福はおのずから厚い」とあります。寛とは、せわしくなく急がず、心が広くゆったりとして、人の過ちを許すことをいいます。このような人は福が厚いのです。性急でせわしない人は福が少ないのです。大きく広い器には幸いがあります。心がゆるやかで穏やかな人は、福の長い例が多いのです。
解説
「万事寛に従へば、其の福自ら厚し」という中国の古い諺を引き、寛の徳を勧めています。寛とはせかせかせず、心が広くゆったりとして、人の過ちを許すことです。心の器が大きく穏やかな人には幸いが長く続き、性急でせわしない人は福が少ないと言います。養生訓でも心を和らげることを長寿の要としたように、益軒は心のゆとりを心身の健康と人生の幸福の土台と考えていました。忙しさに追われがちな今、ゆったり構えて人を許すことの価値を思い出させてくれます。
この章句が説くこと
寛容福心ゆとり養生
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