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家道訓 / 巻之三・総論下

一年わかくてはいまだ世變をしらず。又知慮なき人は、老人の言はまはり遠く、今時の風俗にかはりて、時にあはずとおもひて、聞くことをきらひて、父祖をないがしろにし易し。年わかき者は、たとひ才力ありても世變を知らず、知慮熟せざれば、老人のおろかなるにも及ばず。わかき時は其の理をしらず、久しく事になれ、年老いて後、父祖の言理あることを知る。

新字:一年わかくてはいまだ世変をしらず。又知慮なき人は、老人の言はまはり遠く、今時の風俗にかはりて、時にあはずとおもひて、聞くことをきらひて、父祖をないがしろにし易し。年わかき者は、たとひ才力ありても世変を知らず、知慮熟せざれば、老人のおろかなるにも及ばず。わかき時は其の理をしらず、久しく事になれ、年老いて後、父祖の言理あることを知る。

書き下し

一年わかくてはいまだ世変をしらず。又知慮なき人は、老人の言はまはり遠く、今時の風俗にかはりて、時にあはずとおもひて、聞くことをきらひて、父祖をないがしろにし易し。年わかき者は、たとひ才力ありても世変を知らず、知慮熟せざれば、老人のおろかなるにも及ばず。わかき時は其の理をしらず、久しく事になれ、年老いて後、父祖の言理あることを知る。

現代語訳

年が若いうちは、まだ世の移り変わりを知りません。また知恵や思慮のない人は、老人の言葉は回りくどく、今の時代の風俗と違っていて時勢に合わないと思って、聞くことを嫌い、父祖をないがしろにしやすいのです。年若い者は、たとえ才力があっても世の移り変わりを知らず、知恵や思慮が熟していないので、老人の愚かなのにも及びません。若いときはその理を知らず、長く事に慣れて年老いてから、父祖の言葉に理があることを知るのです。

解説

若い人は世の移り変わりを経験していないので、老人の言葉を回りくどく時代遅れだと感じ、父祖を軽んじやすいと益軒は言います。才力があっても経験の浅い若者は、愚かな老人にさえ及ばないという言い方は厳しいですが、年を取ってから父祖の言葉の正しさに気づくという結びには、自身の経験がにじんでいます。技術や情報では若い世代が勝ることも多い今ですが、人や世の中の動きについての年長者の経験則は、今も耳を傾ける価値があります。

この章句が説くこと

若者老人経験父祖知恵

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