家道訓 / 巻之三・総論下
一人の家居は、貧富によらず、身の分より少しせばきがよし。せばければつひえすくなく、事すくなくして住みよし。富貴なりとも無用の屋作ひろくすべからず。ひろ過ぎては通行なやみあり。掃除に家人のつとめしげく、修理もむづかしく、財の費多し。されど又、無用の用とて、常に用なき所少しありてよし。事ある時のためなり。家居は、只堅くいさぎよくして飾なきが、心を養ひ、目を養ふによし。
書き下し
一人の家居は、貧富によらず、身の分より少しせばきがよし。せばければつひえすくなく、事すくなくして住みよし。富貴なりとも無用の屋作ひろくすべからず。ひろ過ぎては通行なやみあり。掃除に家人のつとめしげく、修理もむづかしく、財の費多し。されど又、無用の用とて、常に用なき所少しありてよし。事ある時のためなり。家居は、只堅くいさぎよくして飾なきが、心を養ひ、目を養ふによし。
現代語訳
人の住まいは、貧富によらず、身の分より少し狭いのがよいのです。狭ければ費用が少なく、事が少なくて住みよいのです。富貴であっても、無用の家屋を広く作ってはいけません。広すぎれば行き来に不便があります。掃除に家の者の手間がかかり、修理も面倒で、財の費えが多いのです。けれどもまた、無用の用といって、常には用のない所が少しあるのはよいのです。事があるときのためです。住まいは、ただ堅く清らかで飾りのないのが、心を養い目を養うのによいのです。
解説
家は身の丈より少し狭いくらいがよいと言います。広すぎる家は掃除や修理の手間がかかり、費用もかさむからです。一方で、普段は使わない余白の空間も、いざというときのために少しあるとよいとする「無用の用」の考えを添えています。これは荘子などに見える考えで、益軒の実用本位の中にもゆとりへの配慮があることがわかります。家は堅く清潔で飾らないのが一番だという結びは、身の丈に合った住まいを選ぶ今の住宅選びにもそのまま当てはまる助言です。
この章句が説くこと
住まい倹約簡素無用の用家
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