家道訓 / 巻之三・総論下
ことさら、酒色のつゝしみをきびしくすべし。又無賴の惡友にまじはる事をかたく禁ずべし。打まかせ置きて放逸をゆるし、姑息の愛を專にすれば、不意なるわざはひ出でくるものなり。惡事出來て後はおさへがたし。きびしく責むればうらみそむく。顏之推が、婦を初來に敎へ、子を嬰孩に敎ふ、と云ひしも此の意なり。はじめに早くふせげば、力を用ひずしてしるし多し。末を救はんとすれば力及ばず。
新字:ことさら、酒色のつゝしみをきびしくすべし。又無頼の悪友にまじはる事をかたく禁ずべし。打まかせ置きて放逸をゆるし、姑息の愛を専にすれば、不意なるわざはひ出でくるものなり。悪事出来て後はおさへがたし。きびしく責むればうらみそむく。顔之推が、婦を初来に教へ、子を嬰孩に教ふ、と云ひしも此の意なり。はじめに早くふせげば、力を用ひずしてしるし多し。末を救はんとすれば力及ばず。
書き下し
ことさら、酒色のつつしみをきびしくすべし。又無頼の悪友にまじはる事をかたく禁ずべし。打まかせ置きて放逸をゆるし、姑息の愛を専にすれば、不意なるわざはひ出でくるものなり。悪事出来て後はおさへがたし。きびしく責むればうらみそむく。顔之推が、婦を初来に教へ、子を嬰孩に教ふ、と云ひしも此の意なり。はじめに早くふせげば、力を用ひずしてしるし多し。末を救はんとすれば力及ばず。
現代語訳
とりわけ酒と色の慎みを厳しくすべきです。また無頼の悪友と交わることを固く禁じるべきです。任せきりにして放逸を許し、その場しのぎの愛ばかりをかけていれば、思いがけない災いが起こるものです。悪事が起きてからでは抑えにくいのです。厳しく責めれば恨み背きます。顔之推が「妻は嫁いで来た初めに教え、子は赤子のうちに教える」と言ったのも、この意味です。初めに早く防げば、力を用いずに効き目が多いのです。末を救おうとすれば、力が及びません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『顔氏家訓』教子凡庶は縦い爾る能わずとも、当に嬰稚に及び、人の顔色を識り、人の喜怒を知るに、便ち教誨を加え、為さしめんとすれば則ち為し、止めしめんとすれば則ち止むべし。数歳に比び及べば、笞罰を省くべし。父母威厳にして慈有れば、則ち子女畏れ慎みて孝を生ず。
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『家道訓』巻之一・総論上一子をそだつるには、おごりとほしいままなるをはやくいましむべし。衣服器用以下、万の俸養、わが身の俸禄よりかろくうすく、ばうぞくなるべし。愛を過して、物ごとにゆたかに華美なるは、是子におごりを教ふるなり。いとけなき時よりおごれば、年長じてますます甚し。はじめゆたかにして、後におさゆるはあしし。始めかがみて、後にやうやくのぶるはよし。いとけなきよりいましめて、偽なくして誠を本とす。よろづの事、質朴にすべし。又おこたりわがままなるをはやくいましめて、へりくだりゆづる事ををしふべし。子をそだつるに、はやくをしふると、左右の人をえらぶとにありといへるは、賈誼が名言なり。此の二に心を用ふべし。はやくをしへざれば悪にうつりやすし。附きしたがふ人あしければ、あしき事を見聞きて、一生のわざはひとなる。幼よりあしき事を見聞しては、先入の言主となり、後に善事を見聞きてもうつらず。あしき癖つきては、後にならひとなりて改りがたし。
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『顔氏家訓』教子吾世間を見るに、教え無くして愛有り、毎に然る能わず。飲食運為、其の欲する所を恣にし、宜しく誡むべきに翻って奨め、応に訶すべきに反って笑う。識知有るに至り、法は当に爾るべしと謂う。驕慢已に習い、方めて復た之を制すれば、捶撻して死に至るとも威無く、忿怒日に隆んにして怨みを増し、成長するに逮んで、終に敗徳と為る。孔子云う「少くして成るは天性の若く、習慣は自然の如し」とは是なり。俗諺に曰く「婦を教うるは初めて来たるとき、児を教うるは嬰孩のとき」と。誠なるかな斯の語や。
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『和俗童子訓』巻之一・総論上一小児の時より、年長ずるに至るまで、父となり、かしづきとなる者、子のすき好む事ごとに心をつけて、えらびて好に任すべからず。好む所に打任せて、善悪をえらばざれば、多くは悪しきすぢに入りて、後はくせとなる。一たび悪しき方にうつりては、取返してよき方にうつらず、いましめても改まらず、一生の間止み難し。故に未だ染まざる内に、早くいましむべし。油断して、其子の好む所に任すべからず。殊に高家の子は、物事豊かに自由なる故に、好む方に心早くうつり易くして、おぼれ易し。早くいましめざれば、後にそみ入りては、諫め難く、立帰り難し。又悪しからざる事も、勝れて深く好む事は、必害となる。故に子を育つるには、油断して其好に任すべからず。早くいましむべし。おろそかにすべからず。予するを先とするは、此故也。
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『慎思録』巻之三人の父兄為る者は、子弟の嗜好する所を択びて、早く其の淫僻を誡むべし。姑息にして其の好む所を縦にすべからず。是れ乃ち閑して家を有ち、悔亡ぶの道なり。蓋し志淫なる者は、必ず僻を好む。苟も陥溺すること久しければ、則ち之を戒むること切なりと雖も、扞格して入り難し。早く戒めざるべからず。
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『家道訓』巻之一・総論上一子弟のいとけなき年より、よき師をえらび求めて、はやく聖賢の書を読ませ、善ををしへ悪をいましめ、孝弟忠信礼義廉恥の道を知らしめ、行はしむべし。かりそめにも、悪しき友に交らしむべからず。是第一にいましむべし。あしき事、見聞かしむべからず。いとけなき時は、殊に悪しき事は早くうつりやすし。よき事もあしき事も、先入の言はやく主となる。よき友を求めてまじはらしめ、よき事を見聞かしむべし。善悪皆習ひ馴るるよりうつりやすし。習ひ馴るる事つつしむべし。
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