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家道訓 / 巻之二・総論中

一家の主となりて、初につとめて苦しまざれば、後に樂なし。父の讓りをうけしはじめ、又祿を初めて得たる時より、家ををさむるに約にしておごらず、慾をこらへてほしいまゝならず。家財を用ふるに、儉にして費さず、家業をつとめておこたらざる、是皆初にくるしむなり。如此すれば、財ゆたかにして、一生の間、身ををはるまでともしからず。是後に樂しむなり。此の如く、はじめにつとめて苦しむは、是家をたもつ要道なり。凡の事、はじめにつとめざれば後の樂なし。若き時くるしんでつとめまなべば、一生の間、老後までの樂となる。わかき時いたづらに日を過せば、一生の間愚にして身ををはる。

新字:一家の主となりて、初につとめて苦しまざれば、後に楽なし。父の譲りをうけしはじめ、又禄を初めて得たる時より、家ををさむるに約にしておごらず、慾をこらへてほしいまゝならず。家財を用ふるに、倹にして費さず、家業をつとめておこたらざる、是皆初にくるしむなり。如此すれば、財ゆたかにして、一生の間、身ををはるまでともしからず。是後に楽しむなり。此の如く、はじめにつとめて苦しむは、是家をたもつ要道なり。凡の事、はじめにつとめざれば後の楽なし。若き時くるしんでつとめまなべば、一生の間、老後までの楽となる。わかき時いたづらに日を過せば、一生の間愚にして身ををはる。

書き下し

一家の主となりて、初につとめて苦しまざれば、後に楽なし。父の譲りをうけしはじめ、又禄を初めて得たる時より、家ををさむるに約にしておごらず、慾をこらへてほしいままならず。家財を用ふるに、倹にして費さず、家業をつとめておこたらざる、是皆初にくるしむなり。如此すれば、財ゆたかにして、一生の間、身ををはるまでともしからず。是後に楽しむなり。此の如く、はじめにつとめて苦しむは、是家をたもつ要道なり。凡の事、はじめにつとめざれば後の楽なし。若き時くるしんでつとめまなべば、一生の間、老後までの楽となる。わかき時いたづらに日を過せば、一生の間愚にして身ををはる。

現代語訳

家の主となって、初めに努めて苦しまなければ、後に楽はありません。父の譲りを受けた初めや、また禄を初めて得たときから、家を治めるのに約にしておごらず、欲をこらえてほしいままにしません。家の財を用いるのに倹約して費やさず、家業を努めて怠らない、これは皆初めに苦しむことです。このようにすれば、財は豊かで、一生の間、身を終えるまで乏しくありません。これが後に楽しむことです。このように初めに努めて苦しむのは、家を保つ要道です。およそ何事も、初めに努めなければ後の楽はありません。若いときに苦しんで努め学べば、一生の間、老後までの楽しみとなります。若いときにいたずらに日を過ごせば、一生の間愚かなままで身を終えます。

解説

家を継いだとき、初めて禄を得たときにこそ、おごらず欲をこらえ、倹約して家業に励めと説きます。初めに苦労しておけば、一生、財に困らず楽しめるからです。これを学問にも広げ、若いときに苦労して学べば老後までの楽しみとなり、若いときを無為に過ごせば一生愚かなままだと言います。社会人になった最初の数年の働き方や、若いうちの貯蓄と自己投資が、その後の人生を左右するという話は、今でも多くの人がうなずく内容でしょう。

この章句が説くこと

勤勉倹約若者学問家

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