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家道訓 / 巻之二・総論中

一奴婢に罪ありとも、いかりにくむ事を過すべからず。にくみ過せば、必ずうらみそむきて禍となる。愛するも憎むも、よきほどあるべし。一凡、物各職分あり。犬の夜を守り、鷄の晨をつかさどるも、亦職分なり。禽獸猶かくの如し。况や人をや。人各職分あり。家の主となりては其家人をあはれみ、其のひがごとをいましむ、是職分なり。民のつかさとなりては、其民をあはれむを以て職分とす。其の職をつくして其の位に居るべし。其の位に居て其の職分をつとめざるは、名ありて實なしといふべし。

新字:一奴婢に罪ありとも、いかりにくむ事を過すべからず。にくみ過せば、必ずうらみそむきて禍となる。愛するも憎むも、よきほどあるべし。一凡、物各職分あり。犬の夜を守り、鶏の晨をつかさどるも、亦職分なり。禽獣猶かくの如し。況や人をや。人各職分あり。家の主となりては其家人をあはれみ、其のひがごとをいましむ、是職分なり。民のつかさとなりては、其民をあはれむを以て職分とす。其の職をつくして其の位に居るべし。其の位に居て其の職分をつとめざるは、名ありて実なしといふべし。

書き下し

一奴婢に罪ありとも、いかりにくむ事を過すべからず。にくみ過せば、必ずうらみそむきて禍となる。愛するも憎むも、よきほどあるべし。一凡、物各職分あり。犬の夜を守り、鶏の晨をつかさどるも、亦職分なり。禽獣猶かくの如し。況や人をや。人各職分あり。家の主となりては其家人をあはれみ、其のひがごとをいましむ、是職分なり。民のつかさとなりては、其民をあはれむを以て職分とす。其の職をつくして其の位に居るべし。其の位に居て其の職分をつとめざるは、名ありて実なしといふべし。

現代語訳

召使いに罪があっても、怒り憎むことを過ぎてはいけません。憎みすぎれば、必ず恨み背いて災いとなります。愛するのも憎むのも、ほどよくあるべきです。およそ物にはそれぞれ職分があります。犬が夜を守り、鶏が夜明けをつかさどるのも職分です。鳥獣でさえこのようです。まして人はなおさらです。人にはそれぞれ職分があります。家の主となっては、その家の者をあわれみ、そのひがごとを戒めるのが職分です。民の役人となっては、その民をあわれむことを職分とします。その職を尽くして、その位にいるべきです。その位にいてその職分を務めないのは、名があって実がないというべきです。

解説

前半は、使用人に罪があっても憎みすぎるな、愛も憎しみもほどほどにせよという戒めです。後半は職分論で、犬が夜を守り鶏が朝を告げるように、万物にはそれぞれの役割があると言います。家の主の職分は家の者をあわれみ過ちを戒めること、役人の職分は民をあわれむことで、その位にいながら職分を果たさないのは名ばかりで実がないと断じます。肩書きにふさわしい仕事をしているかを問うこの一節は、管理職や公務に就く人にとって厳しい問いかけです。

この章句が説くこと

職分役割家長責任使用人

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